選び方で結果が変わる!輸出入決済通貨の重要性と選定ポイント

海外との取引において、「どの通貨で決済するか」は事業の採算に直結する要素です。決済通貨によっては為替変動の影響を受けることになります。考え方はひとつではありませんが、それぞれにメリットやデメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

カギとなるのは「為替リスク」

輸出入取引においては日本側と相手側それぞれの国の通貨が異なります。必ずどちらかまたは双方が通貨の交換をする必要が生じます。

日本円は日本企業にとって自国通貨であり交換は不要ですが、相手にとっては外貨であり自国通貨への交換が必要です。逆に相手の国の通貨で取引するなら日本企業は日本円との交換をすることになります。
通貨の交換比率である外国為替相場は常に変動しているため、決済する通貨によっては契約から代金決済(支払い・受け取り)までの間の変動の結果、想定していた採算確保が難しくなることがあります。

そのため貿易取引の当事者は、どの通貨を使用して決済することがより適切かを検討します。なるべく自社にとって都合のよい通貨での決済ができるよう交渉していくことが重要です。


では、日本企業が外貨である米ドル建で決済する場合を例に「為替リスク」について説明します。
下の図を見ると、契約交渉時は1ドル150円ですが、決済時に円高・円安のいずれになっているかは分かりません。もし円高で1ドル140円であれば決済代金は1,400万円となり、円建での支払い額が減少するため輸入企業にとってはメリットですが、受け取り円貨額が減少する輸出企業にはデメリットと言えます。一方、円安で1ドル160円になると決済代金は1,600万円に跳ね上がるため、支払い額が増加する輸入企業にとってはデメリットとなり、受け取り円貨額が増加する輸出企業にとってはメリットとなります。

輸出入契約10万米ドルのケース

このように為替変動によって利益が確定しないことを為替リスクと呼び、いかに差額を減少させるかが、海外との決済方法の基本的な考え方です。

なおその方法には、決済に使用する銀行との間であらかじめ外貨の受け渡しレート・金額・受け取り時期を決めておく「為替予約」が挙げられます。為替予約の詳しい内容や為替リスクについては、こちらのコラムも参考にしてください。
海外との取引の為替リスクと賢い対応策

海外との取引における2つの決済方法

1. 当事者どちらかの国の通貨で決済する

①日本円を使用する
日本の通貨ですので、直接為替リスクの影響を受けることがないのがメリットです。ただし、海外の取引相手にとって日本円は為替リスクのある外貨です。
例えば中国と日本での取引で、中国側が「中国国内でモノを作り日本に輸出する」状況では、現地で人民元が必要となるため、受け取った円を人民元に両替することになります。このとき為替リスクを負うのは中国側であり、為替リスク応分のコストを商品価格に上乗せされることも想定されるので留意が必要です。
また、円安の進行時には、現地通貨への両替額が減ることになるため日本円の受け取り自体を嫌う傾向も見られています。

②相手国の通貨を使用する
例えば中国との取引において、人民元を使用して決済することです。取引相手にとっては自国通貨であり為替リスクがなく歓迎されるため、価格などの条件交渉がしやすくなればメリットと言えるでしょう。ただし、日本の企業にとって相手国通貨は外貨ですので、基本的に為替リスクが生じるため対策を検討する必要があります。

2. 米ドル(またはユーロ)建で決済する

当事者いずれの国の通貨も使用しないケースもあります。その場合、主要通貨である米ドルやユーロがよく使用されています。
例えば、輸出企業が製品の原材料を別の国から調達していたり、相手国以外の国へも輸出しているなど複数の国々との取引がある場合は、決済通貨を一種類に設定すると管理がしやすくなるわけです。輸入側も同一通貨での債権・債務をマリーさせる(※1)ことで、為替リスクを回避できるだけでなく、為替手数料の軽減が期待できます。

(※1)マリー…外国為替取引において、同一外貨の債権と債務の決済を組み合せ、為替持ち高を相殺することで為替リスクをなくしたり減らしたりすること。

世界各国に生産・販売拠点を置いている企業では、為替リスクを本社などで一括して管理する目的で米ドルに統一することもあります。

なお、世界で最も決済に用いられているのは米ドルです。決済コストが他通貨より安いこともメリット。財務省の統計(※2)によると、日本からの輸出では約5割、日本への輸入では約7割の利用率を占めています。

外貨建で決済する場合、考慮するべき点とは

受け取りでも支払いでも、外貨建で決済をする場合は為替変動の影響を受けますので、必要に応じて為替リスク対策を講じることになります。
韓国ウォンやインドルピーなどは通貨規制があり、為替予約や外貨預金などが利用できないため、日本円や米ドルを使用するのが一般的です。ただし、取引額が少額であったり、価格などの条件交渉がしやすいといったケースでは通貨規制があっても相手国通貨を使用することがあります。
また、海外現地法人との貿易取引や経費などの親子間決済については、海外の子会社側での為替リスクを回避するため現地通貨建で取引することもあります。

海外と取引をする場合の決済通貨の選び方について、ご参考になったでしょうか。
海外との取引においては為替リスクだけでなく、商取引の習慣や各種法規制などさまざまな面の検討が欠かせません。必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが有効です。
りそなグループでもご相談を承っております。ぜひお問い合わせください。

(※2)財務省 貿易統計「貿易取引通貨別比率」

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年2月7日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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