データで見る「女性活躍」の現状

少子高齢化で人手不足が深刻化する日本。帝国データバンクの2024年調査では女性管理職比率が平均10.9%、女性役員比率は平均13.5%と過去最高水準ですが、依然として家庭と仕事の両立や昇進意欲の不足が壁となっています。本記事では、企業の意識調査結果と具体的な打開策を踏まえ、企業内の多様性がいかに組織の成長を生み出すかを解説します。

「平均10.9%」が示す壁——進まぬ女性管理職の登用

加速度的に進む少子高齢化による生産年齢人口の減少にともない、さらなる人手不足の深刻化が懸念されています。そんな中、女性活躍は待ったなしといえます。帝国データバンクの調査(有効回答企業1万1,282社)によると、2024年時点の女性管理職比率は平均10.9%でした。調査開始12年目で初めて1割台に達したものの、政府目標「30%」を達成した企業は11.4%にとどまっています。女性の管理職がいない企業は依然43.0%、10%未満(0%を含む)が68.5%と多数派です。役員の女性比率も平均13.5%で過去最高ではありますが、半数超の企業(52.4%)で役員が全員男性という実情が続いているのです。

女性管理職の割合

規模別に見ると、大企業の女性管理職比率は平均7.6%、女性役員は平均6.7%と最も低い水準でした。一方、中小企業では女性管理職比率が平均11.5%、女性役員比率は平均14.8%。さらに小規模企業では女性管理職比率が平均14.4%、女性役員比率が平均19.1%と、規模が小さい企業ほど女性管理職・役員割合の平均は高いという結果が出ています。

女性管理職について業界別で見ると、「小売」19.4%、「不動産」16.7%、「サービス」15.3%が先行する半面、「運輸・倉庫」7.4%や「建設」7.2%など、女性従業員数が比較的少ない業界は低水準にとどまっています。

今後、女性管理職の増加を見込む大企業

今後「女性管理職が増加する」と見込む企業は全体で32.7%ですが、従業員301人以上の企業では65%、上場企業では67.1%と全体を大きく上回っています。役員についても全体13%に対し、大企業27.5%、上場企業35.6%と意欲が高い傾向にあります。背景には、2023 年3月期決算の有価証券報告書から「女性管理職比率」や「男女間賃金格差」などの開示が義務化されたことや、プライム企業に課された「2025年までに女性役員比率19%」という目標があると考えられます。

女性登用推進策のトップは「性別に関わらず成果で評価」(61.2%)ですが、「女性の育児・介護休業の取り組み促進」(32.8%)や「就業時間の柔軟化」(27.5%)は3割前後にとどまり、キャリア支援プログラムは1割未満になっています。制度を整えても、利用を後押しする風土づくりとロールモデルの育成がともなわなければ、女性の昇進意欲は高まらないという企業の声が多数あるのが事実です。

女性登用を阻む課題

女性登用を阻む最大の要因は「家庭と仕事の両立がしにくい」(54.4%)、「日本社会の性別役割分担意識の存在」(38.5%)、「女性従業員が昇進を望まない」(36.2%)などがあります。会社の規模別で見ると、「その他」を除く13項目中「性別に関わらず成果で評価している」以外の12項目で「大企業」が「中小企業」を上回りました。とりわけ大企業では「女性従業員が昇進を望まない」が45.7%と中小企業より11.3ポイント高く、家庭との両立の困難さや、重責をともなう役割への心理的ハードルがあると考えられます。

そのほか、家事や子育てにより、他の従業員と経験に差が出てしまうこと、女性従業員自身の昇進を望まないなどといった考え方、さらに企業側の事情として、管理職の登用に向けた教育が行われてきていないことなどの声が多数あがりました。

帝国データバンクの調査では、女性活躍推進を「経営戦略の柱」と位置付ける企業は前年より3.4ポイント増えています。

生産年齢人口の減少に拍車がかかり、人手不足が深刻化することで、女性の潜在的な労働力を掘り起こし、女性活躍の推進をする重要性が年々高まっています。企業は女性活躍の支援に取り組むことが求められますが、それと同時に政府に対しては、日本社会に根付いている性別役割分担意識を変えるために、女性への昇進や求める役割に対する働きかけを積極的に行い、女性の意識改革を進めることが求められています。また、性別を問わない育児の分担など、女性が安心して社会進出できる環境づくりが不可欠といえるでしょう。

参照元:株式会社帝国データバンク情報統括部

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年7月11日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。