近年、多くの中小企業が「事業承継」という大きな課題に直面しています。帝国データバンクの調査によれば、2023年時点で全国の企業の約6割が後継者不在の状態にあり、その数は年々増加傾向にあります。こうした中、規制緩和により、銀行が事業承継ファンドに参入する動きが広がっています。今回はりそな企業投資の市橋謙一社長に、その背景や銀行が果たすべき役割についてお話を伺いました。

市橋 謙一
りそな企業投資株式会社 社長
1993年あさひ銀行入行(神谷町支店)。浅草支店、大宮支店にて法人渉外業務を経験後、2000年にあさひ銀事業投資(現 りそなキャピタル)に出向し、IPO投資や投資ファンド運営業務に従事。2010年りそな銀行東京営業部を経て、2012年りそな銀行法人ソリューション営業部企業ファイナンス室(現ソリューションビジネス部)新設メンバー。2015年から同室グループリーダーとしてりそなグループのM&Aファイナンス並びに投資ファンド対応業務を牽引。2021年1月にりそな企業投資設立に際し社長就任(現職)。
事業承継に悩む企業が増えている
近年、事業承継をめぐる課題は深刻さを増し、社会的な問題として注目されています。背景には、経営者の高齢化と少子化、そして価値観の多様化があります。戦後の高度経済成長期に創業した経営者たちが引退の時期を迎える一方、子どもがいない、あるいは別の道を歩むケースが増え、事業を引き継ぐ担い手が不足しています。
かつては「家業を継ぐのが当たり前」という風潮がありましたが、現代は職業選択の自由が尊重され、親の事業を継ぐことが必ずしも唯一の選択ではなくなりました。実際、親族外による事業承継やM&Aを活用した承継が増加しています。(図参照)
こうした社会の変化は、事業承継を一層難しくしています。十分な後継体制が整わないまま経営者が引退すれば、中小企業において長年培われた技術やノウハウ、そして雇用が失われる恐れがあります。これは企業個別の問題にとどまらず、日本経済全体の活力低下にも直結する喫緊の課題です。
国や自治体も税制優遇措置や「事業承継・引継ぎ支援センター」の設置などを進め、M&A件数も増加傾向にありますが、後継者不在企業の数を考えれば、依然として十分とは言えません。こうした中、企業に最も身近な存在である銀行に対して、新たな役割が求められるようになっています。

銀行が事業承継ファンドに参入する理由
これまで銀行は、銀行法によって事業会社の株式を一定比率以上保有することが制限されていました。しかし、深刻化する事業承継問題という社会課題に対応するため、2019年秋に規制が緩和され、事業承継の支援が必要な企業については、銀行が100%株式を保有することも可能になりました。この規制緩和が、銀行が事業承継ファンドに本格参入する契機となっています。事業承継に悩む経営者・オーナーの株式を譲り受ける形で、ダイレクトに資本面でのご支援が可能となったのです。
背景には、銀行のビジネスモデル転換という側面もあります。2024年、日本銀行が17年ぶりに利上げを実施するまで続いた長期の低金利環境の中で、従来型の銀行サービスはコモディティ化が進んでいます。りそな銀行も、「いかにお客さまの役に立ち、選んでいただけるか」という視点で新しい機能を模索してきました。メインターゲットを中堅・中小企業とするりそな銀行にとって、事業承継は長年のお付き合いの中で常に寄り添ってきた重要なテーマですが、規制緩和をきっかけとして、資本の提供という、より踏み込んだ形で企業の存続と発展を支援することは、銀行にとって自然な流れであり、対応すべき分野であるとの考えに至りました。
さらに、SDGsやサステナビリティ(持続可能性)といった考え方が社会に浸透する中で、中小企業の承継を支援することは、地域社会の持続的な発展に貢献する社会的意義の高い活動でもあり、りそなグループの理念とも合致します。企業の事業承継を円滑に進めるという「社会的ニーズ」と、銀行が顧客との関係を深化させるという「ビジネスニーズ」の両方に応える取り組みなのです。
りそな企業投資の特徴
ファンドである以上、バックには出資者がいるわけで、一般的には複数の投資家から資金を募っています。このため、どうしても株式売却による利益の確保を優先せざるを得ないという事情があると思います。一方、りそな企業投資は外部の出資者はおらず、りそなグループの資金のみで運用しています。われわれのコンセプトとして、ファンド事業で大きく稼ぐというよりは、ご支援を通じて承継課題を解決したお客さまと長いお付き合いをし、銀行グループ全体でさまざまなソリューションをご提供していこうという思いがあります。短期的なファンドのリターンだけを考えるのではなく、銀行グループとして、お客さまと共に持続的に成長・発展していくことこそが本質的なリターンと捉えたビジネスモデルを実現するため、このような設計としました。
りそなグループは「メガバンクでもなく、地銀でもない」という独特の立ち位置です。国内の金融グループとして4〜5番手の規模を持ち、全国にネットワークを広げています。その顧客層は上場企業から中小企業までと幅広いですが、特に中堅・中小企業の顧客基盤に厚みがあるのが特徴です。長年にわたる取引を通じ、銀行として築き上げてきたお客さまとの深いリレーションは、事業承継というデリケートな問題を扱ううえで、信頼をいただく源泉となっている実感があります。
また、ソリューションの幅広さもりそなの特徴です。りそなは銀行機能だけでなく、信託や不動産といった多様なサービスを自社で提供しており、これらを組み合わせた総合的な提案が可能です。承継に関する論点は、複雑かつ多岐にわたりますが、日常的な営業活動の中で自然にご相談いただいています。こうした「リレーション×ソリューション」がりそなの強みであると考えています。
りそな企業投資も、この強みの延長線上にある「りそなグループの機能」として、コンセプトに正直な活動を徹底していることが、お客さまの評価=ご支援実績につながっていると考えています。
りそなBiz Actionではこれらの資料もご用意しております。ぜひご活用ください。


