効率化に便利な生成AI、「誰でも使えるコツ」とは?

AI技術の普及は目覚ましく、ビジネスにおいての新しい道具としての地位を確立しつつあることは、誰もが肌で感じているのではないでしょうか。特定の目的専用にカスタムされた生成AI搭載チャットbotを導入した企業も増えていますし、ChatGPTのように汎用的な大規模言語モデル(LLM)の生成AIを手軽にブラウザで使用できるなど、もはや珍しい存在でもなくなりました。
そんな中、「生成AIをうまく使えない」「なかなか思った出力結果を得られない」「なんとなく苦手で手をつけられない」というお悩みの言葉もよく耳にします。これは一体なぜなのでしょうか。
その理由と、生成AIを使うコツについてお届けいたします。

AIは特別なツールだという先入観

AIは日本語で人工知能と訳されますが、この呼び名のせいで「何か特別なものではないだろうか」と先入観を持たれがちです。生成AIは柔軟な回答を出力するものの、人間の「意図」や「考え」などを汲み取ってくれるわけではなく、「入力内容に応じて処理の結果を出力するもの」という点では従来のアプリと変わりません。
これを知らずにとりあえず触ってみたものの想定した回答が返されず、苦手意識がついて敬遠している方も多いようです。

AIを上手に利用するために

企業で導入している生成AIを使用したツールは、設計などの用途を除けば、カスタマーサービス用や社内用サポートなどのカスタムチャットbotが多くを占めています。こちらは出力される回答の情報ソースが各社で最適化されているため、比較的ハルシネーション(不正確な情報や誤った回答を出力する現象)のリスクを気にせず使えます。
ところが、こういったカスタムチャットbotでもうまく使えない場合、質問の仕方などの使い方に問題があることが多いのです。実は使う際のコツさえ知れば、誰でもある程度使いこなせるようになります。

AIを使うコツは「具体的に指示する」こと

生成AIをうまく活用するには、「何をどうしてほしいか」をできるだけ具体的に伝えることがポイントです。これは、Web検索で検索ワードを絞り込んで精度を上げるのに似ています。
実際の業務シーンを例に、指示の具体性によってAIの出力回答がどのように変化するかを見てみましょう。今回の目標は、「営業対象一覧のリストから、温度感が高そうな営業対象を抽出したリストを、AIに作成させる」ですが、どうなるでしょうか。

曖昧な指示の例

「この営業リストから、温度感が高い顧客を教えてください。」

このような曖昧なプロンプト(指示)では、AIは判断基準を理解できず、当たり障りのない一般的な回答になってしまいます。

出力例:
「○○、△△、■■さんなどは温度感が高いと思われます。
他に、判断する条件や絞り込み条件などがあれば、さらにサポートできますので教えてください。」

元の顧客リストから抽出したリストを作成させたい、という意図はすっかり外されてしまいました。記事冒頭でお話ししたとおり、AIは質問者の意図や考えを汲み取ってはくれないので、「言わなくてもこのくらい分かるだろう」が通用しないのです。
では次に、具体的な入力をした場合の例を見てみましょう。

具体的な指示の例

  • 以下の営業リストの中から、最近のやり取りで前向きな反応があった顧客を抽出してください。
  • 前向きな反応とは、最近のメールや通話で「導入を検討している」「見積もりがほしい」といった内容でのやり取りを行っていることを指します。
  • 判断材料として、営業リスト内の「最新のやり取り」を参照してださい。
  • 出力は、「顧客名・連絡先・最新のやり取り内容」の3列にして、以下の[出力例]に従い、表形式で出力してください。
  • 出力形式に対応する情報が存在しない場合は、「なし」と回答してください。

[出力例]
顧客名: (社名)
連絡先: (メールアドレス or 電話番号 or 両方)
最新のやり取り内容: (「最新のやり取り」列に入っているテキスト)

少し面倒に感じるかもしれませんが、ここまで具体的な指示を与えると、以下のような回答が得られるはずです。

画像は実際に生成AIが出力した画面

先ほどとは違い、おおむね期待どおりの回答が出てきました。
このように、「何をしてほしいかを具体的に、的確に入力する」ことで、出力される結果の精度は格段に上がります。

良い指示を出すための4つのポイント

AIに指示を入力するときは、以下の4点を意識することで精度の高い結果を引き出せます。

  1. 目的を明確にする(何をしてほしいのか)
  2. 判断基準や前提条件を伝える(どの情報をもとに判断するか)
  3. 出力形式を指定する(どのような形で答えてほしいか)
  4. 必要に応じて例を提示する(アウトプット例を見せる)

これはまさに、部下に仕事を頼むときと同じ。丁寧に指示を出せば、その分だけ的確に応えてくれるのです。また、安定した結果を得るためには、出力形式を指定することが特に重要です。
また、「なし」のケースも指定していますが、これは参照すべき情報がない場合でも出力形式を満たすために、存在しない情報をAIが無理やり入れてしまうことを避けるためです。こういった例外処理を指定することが、ハルシネーションを抑制するコツでもあります。

AIへの指示作成に困ったら

とはいえ、AIが理解しやすい具体的な指示を考えることには慣れが必要です。そんなときは、次のような方法を活用すると良いでしょう。

①プロンプトテンプレートを活用する
生成AIの利用を手軽にする目的で、テンプレート例文を紹介しているWebサイトがあります。目的に沿うよう少し改修するだけで簡単に使えます。

②導入済みチャットbotの質問テンプレートを使う
あらかじめ用意された質問項目を選ぶだけで使えるものも増えています。自分でゼロから指示を構築するよりも手軽に利用できます。

③「どう指示すればいいか」をAIに聞いてしまう
「この作業を頼みたいが、どのように指示すればいい?」と尋ねれば、AI自身が指示の書き方を提案してくれます。

目的に合わせて、すぐに利用できるものを使うことが時短と正確さにつながるケースも多くあります。どうしていいか迷ったら、ひとりで考え込まずに外部から探すことも大事です。

今回ご紹介したものは、チャットbotなど企業によく導入される、テキスト生成AIの効率的な利用方法です。
どの生成AIツールでも「正確を期すために、的確に条件を定めて指示を与える」という点では同じ。うまく使えば業務効率アップにつながりますので、ご利用のコツとしてお役立ていただければ幸いです。

DXでの課題解決について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年8月15日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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