事業化を支える脱炭素特化型官民ファンド

脱炭素に資するビジネスへの支援を目的とする「株式会社脱炭素化支援機構(JICN)」という官民ファンドが設立されていることをご存じでしょうか。
2050年カーボンニュートラルの実現が求められる中、企業の脱炭素経営だけでなく、クライメートテック(気候テックとも呼ばれ、CO2排出量の削減や地球温暖化の影響への対策技術のこと)に代表されるような脱炭素を起点とした新たな事業も広がりを見せています。一方で、研究開発や新たな設備・技術の導入などには、相応の時間と投資が必要となるケースも多くあります。
こうした背景のもと、脱炭素ビジネス・ファイナンスを支える仕組みとして創設されたのが「脱炭素化支援機構(JICN)」です。
その概要と企業が活用できるポイントについてご紹介します。

脱炭素化支援機構(JICN)とは

JICNは、地球温暖化の推進に関する法律(温対法)に基づき設立された株式会社(いわゆる「官民ファンド」のひとつ)で、活動期限は2050年度までとされています。環境省が所管し、前身組織である「一般社団法人グリーンファイナンス推進機構」の機能を継承・発展させる形で発足しました。国の財政投融資に加え、民間企業84社の出資で構成され、脱炭素に資する多様な事業を対象に複数の「投融資」手法を駆使して資金を供給しています。

JICNでは事業性だけでなく「温室効果ガス排出量の削減等や社会経済の発展・地方創生への貢献等」も評価対象となります。難しい投資判断も求められるこの新たな領域に補助金や利子補給ではなく、返済が必要な出資や融資等を通して資金供給を行うことで、脱炭素ビジネスの社会実装・事業化を後押しする役割を担っています。
また、金融機関を含む民間からの資金供給の呼び水としての機能も期待されています。

支援対象となる事業領域は?

JICNが投融資の対象とするのは、「温室効果ガスの削減・吸収に寄与する事業」、または「それらを支援する事業」です。対象領域は幅広く、エネルギー転換では太陽光・風力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギー、水素・アンモニア燃料や蓄電池などが含まれます。ものづくり・産業領域では、例えばバイオ素材の開発や製造工程の効率化、建物の省エネ改修やZEB/ZEH、垂直農法や陸上養殖なども対象です。

サービス・運用・データ領域では、エネルギーマネジメントやGHG排出量算定・可視化サービスなどが挙げられます。資源循環・リサイクル領域では、再資源化やリユース・リサイクル、アップサイクルなどの事業も対象となります。吸収量増大・炭素回収利用貯留領域としては、森林や沿岸・海洋の保全なども支援範囲に含まれますが、これは農作物や樹木などの植物、海藻などの藻類に、CO2を吸収して炭素(有機物)として固定する働きがあるためです。さらには、新技術や新たな事業モデルに挑戦するスタートアップなども支援範囲に含まれます。

投融資対象領域の例

なお、こちらの「投融資対象領域の例」はあくまで一例であり、表に記載のない新しい技術・領域であっても対象となる可能性があります。投融資案件の一覧はこちらをご覧ください。

また、JICNの投融資は環境大臣の「支援基準告示」に基づき、次の4つすべてを満たす必要があります。

  • 政策的意義(温室効果ガス削減への寄与、地域貢献など)
  • 民間主導性(JICN出資額以上の民間資金の確保)
  • 収益性の確保(事業としての持続性・成長性)
  • 環境保全・地域合意の確保(安全性や地域との調和)

投融資判断は、環境大臣および事業所管大臣の意見聴取を経て行われます。

企業にとっての「官民ファンド」の意義

JICNは、脱炭素ビジネスを手がける企業への資金提供だけでなく、脱炭素化に寄与するプロジェクトへのファイナンスにも対応できる点が特徴です。脱炭素領域は技術的・事業的に新しい分野であるため、民間金融機関だけでは十分な資金調達が難しいケースもあります。そのような場面で、JICNの劣後ローンやエクイティ投資などのリスクマネーを活用することで、調達手段が広がり、事業化に向けたハードルを下げることができます。

また、JICNの支援決定は温対法に基づき、環境大臣および関連する事業所管大臣の意見聴取を経て行われるため、企業の取り組みの信頼性向上にもつながります。支援決定案件は原則公表されるため、取引先や投資家をはじめとするステークホルダーへのPR効果も期待できます。

脱炭素を経営戦略として捉え、新たな事業機会へと発展させるには、資金面でのハードルが生じることは否めません。しかし、国と民間が力を合わせて設立された「脱炭素化支援機構(JICN)」は、こうしたチャレンジを資金面から支える有力な選択肢となります。脱炭素の取り組みを、規制対応にとどめず、競争力強化や企業価値向上につながるビジネス機会として捉えることが重要です。

りそなグループでは、脱炭素化支援機構(JICN)を活用した資金調達や取り組み計画に関するご相談も承っています。自社のGX推進を次のステージへ進める一つの手段として、ぜひご検討ください。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2026年1月30日時点の内容となります。
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