不動産レポート2025年夏(首都圏版)

3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2025年夏に発行された、首都圏向けの内容となります。

【Market REVIEW】米国は9月利下げ再開へ、日銀は年内追加利上げ観測再浮上

  • りそなアセットマネジメントチーフストラテジスト 下出 衛
    トランプ大統領は、任期途中で辞任したクーグラーFRB理事の後任にスティーブン・ミラン大統領経済諮問委員長を指名しました。ホワイトハウスの経済ブレーンをFRBに送り込むことで、早期利下げを確実なものにする意図があるとみられます。8月初めに発表された雇用統計が予想以上に弱い内容となったことから市場でも早期利下げ観測が高まっており、先物市場では9月FOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利下げが実施される確率を9割超と予想しています。
  • 一方、米国との通商交渉で関税率が15%で決着したことを受け、日銀の年内利上げ観測が再浮上しています。短期金融市場(OIS)では、12月会合で0.75%への追加利上げが実施される確率を約7割程度と織り込んでいます。7月30〜31日の日銀金融政策決定会合の主な意見でも、「早ければ年内にも現状の様子見モードを解除できるかもしれない」など年内利上げに前向きな発言がみられます。ただ、米国関税の影響については駆け込み輸出の増加などプラス面が今後剥落する一方、輸出数量の減少などのマイナス面が顕在化すると見られ、日本経済の下振れリスクについては引き続き注意が必要です。8月央に発表された4-6月期GDP速報値は前期比年率+1.0%と予想(+0.4%程度)を上回りましたが、輸出の前倒し効果などで純輸出が同+1.3%の寄与となる一方、GDPの半分強を占める個人消費の寄与度は同+0.3%にとどまりました。日銀は米国関税が国内景気や企業収益に及ぼす影響を精査しながら慎重に追加利上げの時期を摸索するとみられます。
  • 米国の利下げ再開と日銀の追加利上げ観測で日米金利差の縮小が見込まれますが、貿易赤字の定着や対外直接・証券投資拡大などによる実需の円売り圧力が構造的に増大していることから、ドル円相場は25年度年末に向けて140円台前半までの小幅円高・ドル安にとどまると予想されます。       

(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)

世界経済は成長の見通しも、不確実性は高止まり

  • 世界的に不確実性が高止まりしている中で、IMFが7月に公表した世界経済成長率は2025年では3.0%、2026年は3.1%とわずかに成長する見通しとしました。関税引上げ前の経済活動の前倒しや米国の実行関税率の低下などを背景に、4月時点から上方修正されました。また、見通しのリスク要因としても関税があげられています。実行関税率は低下していますが、再び上昇すると成長の鈍化につながる恐れがあるとしている一方、貿易交渉によって関税が下がれば経済成長の押し上げ要因となる可能性も示唆しています。

訪日外客数は増加が継続、2024年国内宿泊者も増加

  • 訪日外国人旅行者数は増加が継続しており、2025年6月では前年同月比+7.6%となる約338万人であり、上半期の累計でも2,152万人と過去最速で2,000万人を突破しています。
  • 2024年の年間国内延べ宿泊者数は前年比+6.7%と増加傾向が継続しました。月別でみると足元6月では前年同月比▲2.8%(第一次速報)と減少しています。日本人宿泊者数では、6か月連続で前年同月比マイナスとなっており、引続き停滞感がみられています。

新築マンション価格は高水準、契約率では停滞感も

  • 不動産経済研究所によると、首都圏の新築分譲マンション価格は、2025年上半期(1~6月)では8,958万円(前年同期比+16.7%)と上半期として過去最高値を更新しました。一方、初月契約率は66.6%と2年連続で60%台となり、停滞感もみられています。6月でも平均価格は9,165万円(前年同月比+11.8%)と高水準の価格となっていますが、契約率は61%と3か月連続で目安となる70%を下回っています。
  • 東京カンテイによると、6月の首都圏における70㎡あたり中古マンション価格は11か月連続での上昇となる5,851万円(前年同月比+26.4%)となりました。東京都に限らず周辺3県でも前年同月比での上昇率の拡大傾向がみられています。

引続きオフィス空室率は改善、賃料も上昇傾向に

  • 三鬼商事によると、2025年7月の東京ビジネス地区における平均空室率は3.16%(前年同月比▲1.84ポイント)となっており、依然として改善傾向が継続しています。平均賃料も20,907円/坪(同+4.36%)と上昇トレンドが継続しており、引続き好調感がみられる市況となっています。
  • 令和6年度テレワーク人口実態調査によると、首都圏を勤務地とする雇用型テレワーカーの割合は37.5%(前年比▲0.6ポイント)と、前年よりわずかに低下したものの3割を超える水準が継続しています。平均実施日数は2.1日/週と減少傾向にありますが、一定数のハイブリッドワークの定着がうかがえます。

【Market TOPICS】不動産鑑定問合せ件数の推移(東京)

  • 東京都の不動産鑑定問合せ件数は、2025年1Qでは経済の不透明感などから大きく減少したものの、2Qでは前月比+42%の増加となりました。
  • インバンドの増加などによりホテルに対する問合せは、2020年の年間平均を上回って推移しています。

  • 本文書に含まれる全ての情報は、当社(りそなグループ)が信頼し得ると考える情報源から取得したものですが、当社はその真実性を担保するものではありません。
  • 将来予測は、当社が専門業者として技術および経験において行っているものの、当該予測に影響を及ぼしうる多くの要因があるため、当社はその正確性を保証しません。
  • 本文書及び本文書に含まれる情報に基づく投資等のご判断についてはご自身の責任で行っていただくものとし、そのご判断の結果、お客様または第三者に損害または損失等が生じたとしても、当社はこれらに関して一切の責任を負いません。

りそな銀行不動産ビジネス部
住所:東京都江東区木場1丁目5番25号 深川ギャザリア タワーS棟
TEL:03-6704-2376

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年9月5日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。