子どもの教育格差という社会課題に対して、学習塾と金融機関がどのように力を合わせて成果を出していけるのでしょうか。公文とりそな銀行がタッグを組んだ「ソーシャルインパクト預金」の特徴と目指すところについて、公文教育研究会の三好健太郎氏にお話を伺いました。

三好 健太郎
株式会社公文教育研究会 全社戦略推進本部副本部長 ライセンス事業推進部部長
1992年公文教育研究会入社。教室事業として鹿児島、香川で責任者を経験。また、本社スタッフとして情報統括部門、広報部門、新規事業部門などを経験する。社内で新規部署の立ち上げは今部署で4回目。2021年7月より現職にてライセンス事業の新規事業開発業務を担う。2024年7月より全社戦略推進本部副本部長を兼任。
教育無償化の効果と限界
国が進める教育無償化は、家庭の経済状況にかかわらず学びの機会を保障する上で、極めて重要な施策です。しかし、教育現場の視点から見ると、これだけでは救いきれない方々が存在することも事実です。
高校や大学の無償化は、「進学したい」「学びたい」という意欲がある子どもたちにとっては非常に有効なサポートです。しかし、その手前の段階、つまり小・中学校期において、すでに学習への意欲を失い、「どうせ自分なんて勉強しても意味がない」「高校なんて行っても仕方がない」と諦めてしまっている子どもたちも少なくありません。 このような状態に陥っている子どもたちは、いくら無償化で門戸が開かれても、そこに飛び込もうという気持ちにはならないということもありえます。
上記の状況に対し、私たちが大切にするスタンスは、「悪いのは子どもではない」というものです。どの子にも可能性があり、私たち社会や大人が関わることで自分の可能性を発見し、自分で未来を切り拓いてくれるような子どもたちを増やしていきたいと考えています。
高校や大学の教育無償化の効果を最大化するためには、小学校期や、さらにその下の幼児期において、「学ぶ楽しさ」や「自己肯定感」を育む土壌づくりが不可欠です。公文式では毎日学習する中で、やり続けると計算力や読解力、英語力がついていきます。しかし、このプロセスの効果はそこにとどまらず、習慣となり努力を継続する力がつく。すると、たとえばクラブ活動にも打ち込めて良い成果を出せるというように、その子の人生に良い循環が生まれるのです。
我々は更生支援として、少年院で半年間の学習プログラムを提供しています。プログラムを通じて、「継続できた」という事実がその子の心に与えるものは大きく、「半年間、逃げずにやれた」と誇りを持つようになります。また、「こんな自分にも向き合ってくれる大人がいた」という感想もよく聞かれます。大人が子どもにしっかり向き合って伴走することのインパクトは非常に大きいのです。
「ソーシャルインパクト預金」の特徴とメリット
教育格差という社会課題に対し、りそな銀行さんと連携して開始したのが「ソーシャルインパクト預金(愛称:教育プラス預金)」です。

この取り組みの最大の特徴は、単発の寄付やCSR活動ではなく、「ビジネスとして持続可能な仕組み」である点、そして「小学校期への長期的なコミット」である点にあります。
りそな銀行さんは、このプロジェクトにおいて、最大で小学校1年生から6年生までの「6年間」という長期視点での支援を設計しました。通常、こうしたプロジェクトは単年度で終わったりするものなので、画期的な判断だと思います。子どもたちの変化には時間がかかりますから、可能ならば長い期間での支援を提供できる方がより良いのです。子どもたちが安心して学び続けられる環境を、金融の力で下支えするという、非常に本気度の高い意識をお持ちだと思いました。
ソーシャルインパクト預金がリリースされてから早速、「この制度を使って公文に行きたい」という子どもたちからのお問い合わせもいただいています。そうした子どもたちに対して、我々大人の事情で「1年間だけ」というような支援にならないよう、この制度を両社で力をあわせ拡大させていきたいと考えています。
預金者へのフィードバックの重要性
「ソーシャルインパクト預金」において、もう一つ重要な要素が「成果の可視化」と「預金者へのフィードバック」です。 単にお金を預けて終わりではなく、その資金がどのように活用され、子どもたちにどのような変化をもたらしたのか。これを預金者に対して定期的に報告することで、支援の透明性を高めるとともに、預金者の方々にも「社会貢献への実感」を持っていただけるようにしたいと考えています。
教育の効果測定は難易度が高いものですが、本プロジェクトでは、学力の「定量的なデータ」に加え、子どもたちの心の変化や成長の物語といった「定性的なエピソード」の両方を考えています。こうした支援を受け、自らの人生に自信と可能性を取り戻した子どもたちは、将来、「次は自分が誰かを支える側になりたい」と願うようになるかもしれません。このように目の前の子どもから社会へ大きく広がっていくインパクトもあると考えています。これは、公文の理念が目指すところでもあります。
成果をしっかりとフィードバックしていくことはとても大切です。預金をした企業が、こうしたレポートを自社の株主やステークホルダーに発信することで、企業のブランド価値も向上する。そのような仕組みを構築していきたいと考えております。そうすることでさらに多くの共感を集め、「誰もが未来に希望をもって踏み出せる社会」の実現を目指していきます。
りそなBiz Actionではこれらの資料もご用意しております。ぜひご活用ください。


