悩める二代目社長。「年上の部下」との接し方は?

社長と一口に言っても、二代目の悩みは、創業者のそれと違います。比べられ、「先代の方が良かった」「苦労を知らない」と心ない言葉を浴びることがあるかもしれません。多くの二代目社長が、古株社員との接し方に心を砕いています。いわゆる「年上の部下」問題に悩む社会人は少なくありませんが、先代から人的資産も受け継いだ社長という重責であれば、なおさら神経を使います。腫れ物に触るようでは、他の多くの社員からの信頼に響くリスクもはらみます。「年上の部下」である、古株社員とのコミュニケーションのコツをご紹介します。

「支持や理解」に苦労する二代目社長

中規模法人において、二代目以降の社長が事業を引き継いだ際に、問題になったことは―? 中小企業庁が東京商工リサーチに委託した「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月)(※1)によると、最も多いのは「右腕となる人材が不在」で、親族内継承の社長のうち21.7%が、親族外だと24.6%に上ります。相談相手がいないことで、支持や理解に苦労していることが垣間見えそうです。「役員・従業員からの支持や理解」も、親族内の9.8%、親族外の11.4%が挙げています。

20歳以上も…。「親族内承継」は若返りゆえの悩みも

同じアンケートによると、「後継者が決まっている」と回答した中規模法人のうち66.6%が、小規模法人・個人事業主のうち90%以上が、その対象に「親族内」を挙げています。注目すべきは、新旧の社長の年齢差です。

親族内への承継では、中小企業全体だと交代前の平均年齢は69.3歳ですが、交代後は46.8歳。20歳以上の引き下げとなっています。一気に若返っており、それだけ、ベテランの古株社員との年齢差に悩むと言えます。これに対し、親族外への承継は63.7歳から55.6歳とわずかな差。世代間ギャップもそれほどないでしょう。

改革のチャンス、でも心配な「世代間ギャップ」

社長と古株社員との世代間ギャップが大きくなると、どんな課題があるのでしょうか。まず、社会や顧客の志向といった変化を共有しにくく、意思統一が難しくなる恐れがあります。働き方やビジネス慣習、コミュニケーションがどんどん変わる現代、二世代も違うと同じ感覚でいることは簡単ではありません。また、古株社員が創業社長を慕い、親族内承継なら「二代目は子どもの時から知っている」という関係性などもあり、大なたを振るいづらくなることも。畑違いの業界からの承継では「業界を知らないくせに」とネガティブに見られかねません。

一方で、社長の交代は組織が変わる大きなチャンスです。例えば創業社長がトップダウン型で急成長を果たしたけれど、現場の意見や感覚を重視し、変化に柔軟に対応するボトムアップ型に転じるなど、刷新できる可能性があります。先代の時、身内意識で踏み込みにくかった改革を断行できるかもしれません。また「二代目」は引き継ぐ前、他社や異業種で経験を積んでいるケースもあるため、新たな視座で商機や課題を見つけることができそうです

承継は創業以来の節目。一筋縄ではいかない

それでは、具体的にどんなマインドで行動すれば良いのでしょうか?

まず、承継には時間がかかります。社長が交代してすぐに社員の意識まで変わるものではありません。「第二創業」と捉えれば、創業以来の一大事。二代目と古株社員は、立場も視座も違って当たり前です。できるだけお互いを理解できるように、丁寧なコミュニケーションを根気よく続けるのが大前提です。

古株社員は、豊富な経験があるからこそ「守り」の意識が強くなってしまうこともあるでしょう。そのため、二代目社長が「改革」を振りかざしても、拒否反応を示されかねません。その時に意識したいのは、力任せに指示するのではなく、その経験値をどう活かすかを正面から考えることです。人は上から押さえつけても、「否定された」と感じて反発が強まってしまいます。

丁寧にコミュニケーションしているつもりなのに、うまくいかない…という時は、社業の発展や社員の幸せといった「共通の目標」を、時間をかけて伝えていくことが役立ちそうです。立場や考え方が違ったとしても、「同じ仲間」だと思ってもらえたら、話し合いは未来志向になるのではないでしょうか。

また、発言力や影響力が強大な古株社員がいて明らかにリスクになる場合は、あらかじめ先代社長に相談し、処遇を検討することも一つの方法かもしれません。

ただでさえ孤独な社長。若くして二代目になった時は、どうしても経験が不足しています。そんな時は、社内をしっかり観察して「右腕」を発掘できれば効果的です。新しいプロジェクトを任せる、経営感覚を身につけるトレーニングをするなど、将来を見据えた育成までできると理想です。

現場にやや距離があるなら、現場を知ってその間に入ってくれる番頭役は心強い存在です。もし、そのような人物が社内にいない場合は、外部からの登用を考えてみてもよいでしょう。

同じゴールを目指している「仲間」

できるだけ軋轢を生まずに刷新を図る上では、現場に飛び込み、社員の声に耳を傾ける姿勢を示したいものです。警戒心を解き、「同じ仲間」という意識をもってもらうために声をかけ、時にはアンケートやSNSなどで意見を吸い上げる工夫も考えられます。

創業が「産みの苦しみ」とすれば、承継に「成長痛」があって当然。古株社員との関係を前向きなものに変え、新たな成長へギアチェンジしていきましょう。

※1 中小企業庁「企業経営の継続に関するアンケート調査(2016年11月)」

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年5月25日時点の内容となります。
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