あなたの会社では、従業員一人ひとりが自社のデータにアクセスし、日々の業務判断に生かせているでしょうか。環境の変化が激しく、スピードが勝負となる今、経験や勘に頼った意思決定では成長のチャンスを逃すリスクがあります。これからの組織に求められるのは、全社でデータを扱える「データの民主化」です。
データの民主化が進むことで、経営判断に必要となるデータの精度が上がり、データに基づく意思決定、いわゆる「データドリブン」な経営スタイルが実現しやすくなります。
経営と現場で「見ている数字」が違う——経営判断のズレが生むリスク
多くの企業で経営層が意思決定に使う数字の元データは、数か月前の実績であることが少なくありません。経営層はその数字をもとに方向性を定めますが、古いデータによる偏った情報では的確な判断が難しくなることもあります。
一方、現場は顧客や市場の動きを肌で感じており、課題をいち早く察知できます。しかしデータにアクセスできないがゆえに、課題を定量化できず、経営層に「筋の良い」仮説や提案が届かないことも多いのです。
現場は「感覚」や「定性的な表現」でしか説明できず、経営層は「数字の裏付けがない」と判断し、動けない。こうして経営と現場の間に溝が生まれ、意思決定のスピードが鈍化し、ビジネスチャンスを逃すおそれがあります。
これからの時代、経営と現場が「同じ数字」をリアルタイムに共有し、データを共通言語として意思決定を行う体制の構築が不可欠です。
「データの民主化」が企業の持続的成長を支える理由
組織内の誰もが必要なときに必要なデータへアクセスし、それを意思決定や改善行動に生かせる状態をつくることを「データの民主化」といいます。
全従業員がデータを扱えるようになれば、現場からも課題提起や仮説提案が可能になり、経営層はスピード感をもって意思決定ができます。データは「使って考えるもの」へと進化し、組織全体のPDCAサイクルが加速。その結果、顧客理解や商品改善も進み、企業の持続的成長に大きく寄与すると考えられます。

冒頭で触れた「データドリブン」とは、データに基づいて意思決定や行動を行う業務スタイルを指します。経済産業省「DXレポート2」(2020年)でも、「データとデジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること」がDXの本質であるとされており(※1)、その基盤がまさに「データの民主化」です。
さらにデジタル経済レポート(2025年)でも「企業はソフトウェア企業、そしてデータカンパニーでなければ生き残れない」と明言されており、データ活用が経営の根幹であることが強調されています(※2)。つまり、「データの民主化」が進むほど、企業は変化に強くなり、迅速な経営判断が可能になるというわけです。
データの民主化が進まないことによるリスク
一方で、データの民主化が進まない企業は、機会損失、競争力低下、効率の悪化、誤った意思決定など、さまざまなリスクに直面する可能性があります。
例えば、データに基づかない意思決定により戦略を誤ってしまった。
経験や勘に頼り過ぎたことで、無駄なコストが発生した。
組織が硬直化し、顧客の潜在的なニーズや市場の変化を捉えられず、新たなビジネスチャンスを失ってしまった。
こうしたミスが積み重なると、結果的に利益が減少する可能性もあるでしょう。
データの民主化を推進することは、これらのリスクを軽減し、企業の競争力強化や持続的な成長に繋がると期待できるのです。
いきなり全社導入は不要。まずは小さく始めてみよう
組織全体で情報を共有し合い、意思決定に生かせる企業こそが、変化の時代を勝ち抜きます。データの民主化は単なるツールの導入ではなく、人と文化を変える取り組みです。
とはいえ、「全社員がデータを扱える組織」をいきなり目指すのは現実的ではありません。まずは関心の高い部署や人材を中心にスモールスタートを切ることが成功への近道です。
たとえば、旗振り役となる部署を定め、興味のある社員を集めた勉強会を実施するのも一案です。実際の業務データを使いながら、「データをどう読むか」「どんな示唆を得られるか」を体験することで、数字へのハードルを下げられます。
また、BIツール(Business Intelligenceツール)の導入や、データ分析のトレーニングも効果的です。
さらに、専門的な知見を持つ外部パートナーと連携するのも有効です。ツールの選定から運用方法のアドバイス、社員向けの教育支援まで、外部の力を借りることでスムーズな導入が可能になります。
りそなグループでも企業のデータ活用支援を行っていますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
まずはできるところから小さな実践を始めてみませんか。「データでつながる組織」への一歩が、企業成長を大きく加速させるきっかけになるはずです。
※1 経済産業省「DXレポート2」(2020年)
※2 経済産業省「デジタル経済レポート」(2025年)
DXでの課題解決について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

