不動産にもSDGsの波到来、「CASBEE」とは?

脱炭素・省エネへ動く世界

2022年11月6日から20日まで、エジプトのシャルム・エル・シェイクでCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)が開催されました。環境問題でよく耳にする「パリ協定」は15年にパリで開催されたCOP21で策定されたものです。このパリ協定を実施するために必要なルールが完成したのが、21年に英国のグラスゴーで開催されたCOP26でした。

パリ協定で提唱され、世界中が注目した「1.5℃目標」とは、今世紀末の平均気温を、産業革命前と比べて1.5℃程度の上昇に抑える目標のこと。COP26では、あくまで努力目標だった「1.5℃目標」をより重視することに合意し、これに続くCOP27は途上国が気候変動で受けた被害や経済損失を、富裕国が補償する仕組みづくりで合意する成果を上げました。

このパリ協定の合意に向けて、参加各国は事前に削減目標を国連気候変動枠組条約事務局に提出しており、日本は30年度に「温室効果ガスの13年度比26.0%削減」を表明、さらに21年には、これを同46%削減に引き上げることを掲げました。この削減目標達成のために行う施策のうち、建築物の省エネ化・低炭素化を促進する一つの手段とされるのがCASBEEです。

CASBEEとは何か?

そもそもCASBEEとは、「Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency」の略称で、「建築環境総合性能評価システム」が正式名称です。01年に国土交通省の支援のもと産官学共同プロジェクトとして設立された「建築物の総合的環境評価研究委員会」が開発した、建物の環境品質を総合的に評価するシステムです。簡単に言えば、建築物を環境性能で評価し、格付けする手法のことです。

CASBEEには、既存建築物を対象とする「CASBEE‐不動産」や、新築や改修を対象とする「CASBEE‐建築」、オフィスビルを対象とする「CASBEE‐ウェルネスオフィス」などの建築系(住宅・一般建築)があり、さらに街区系の「CASBEE‐街区」や都市系の「CASBEE‐都市」があります。

建築系で特に近年、伸びているのは、オフィス、店舗、物流施設、共同住宅など竣工後1年以上経過した既存建築物を対象にするCASBEE‐不動産です。不動産の省エネや省資源、リサイクル性能といった環境負荷削減はもちろん、室内快適性や景観配慮といった環境品質向上の側面も含めた、建築物の環境性能が総合的に評価されます。

CASBEE‐不動産評価認証を取得するメリットは、物件が環境性能や快適性に優れたものであることを株主や従業員などのステークホルダーにアピールできること。高ランクの評価を得られれば、テナント賃料の引き上げ、ひいては物件の利回りや物件価格の上昇も期待できます。

CASBEEの評価認証取得件数 評価認証取得件数は6年で6倍超に急増

環境問題への取り組みは義務化の段階へ

前述したパリ協定をはじめ、企業の環境問題への取り組みは、もはや理念や努力目標の段階から、実践、必達目標(義務化)の段階に進みつつあります。今や企業経営において、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(Environment・環境/Social・社会/Governance・企業統治)への取り組みは不可欠なものとなっています。また投資家の不動産におけるESG投資も浸透しています。CASBEEは不動産領域における、SDGsやESGへの取り組みのための手段の一つといえるでしょう。

しかも、CASBEEでは不動産に関してどれだけ環境問題に対する配慮や対応を行っているかが数値化されており、企業は内外に対して具体的な取り組み状況を容易に示せます。実際、CASBEEの認証件数は17年から急激に増加しました。その理由としては、15年9月の国連サミットで採択されたSDGsの「13.気候変動に具体的な対策を」があるといわれています。

すでに日本では、「パリ協定」の目標達成に向けた温室効果ガス排出量の削減目標である「SBT(科学と整合した目標設定)」の認定を受ける企業が増え続けており、いずれCASBEEがそれに続く存在となる可能性もあります。というのも、企業活動において、土地や建物などの不動産が不可欠の存在であることを考えれば、不動産の環境対応や省エネ化などの環境性能向上は重要な経営課題であるといえるからです。グローバル化したサプライチェーンが温室効果ガス削減に向けて動く中、不動産においても、CASBEEなどの環境問題への取り組み状況の開示が求められる時代が近い将来にやってくるでしょう。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

【該当するSDGs目標】

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年1月27日時点の内容となります。
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