事業承継のカギを握る「後継者」。どう育成する?

業種や地域を問わず、大きな課題になっている事業承継。さまざまな公的機関や事業者がサポートに乗り出していますが、その実行に至るまでには多くのステップがあり、時間を要します。事業承継が危ぶまれる事態に陥る前に、早くから備えることが大切です。計画的に後継者を育成するコツを考えます。

後継者問題が事業継続を占う。早めの着手がカギ

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」(※1)で紹介された日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、廃業予定の企業の29%が、「後継者難」を理由に挙げています。たとえ経営や事業に大きな問題がなくても、後継者を見つけ、育てる準備が不十分だと廃業につながりかねません。

最も意識すべきは、早め早めの準備です。無事に後継者が決まっても、事業承継が完了するまでの移行期間は長いものです。同ガイドラインで示された帝国データバンクの調査によると、移行期間を「3年以上」とした企業は51.9%でした。

実行までは多くのプロセスを経ますが、事業承継を後回しできない喫緊の問題だと認識することが第一歩。次に経営の状況や課題を可視化し、承継する上での課題も洗い出しましょう。また後継者が意欲を持ってバトンを受け取れるよう、事業の磨き上げや経営改善を進めておきたいものです。そして承継計画を策定できれば、ようやく実行に移すことができます。これらにかかる期間を見積もり、準備を始めましょう。

社内外のさまざまな教育手段を組み合わせる

後継者の教育には社内だけで対応できるものもあれば、社外でしか身につかないものもあります。代表的な教育方法をご紹介します。

社内でのローテーション、重要ポスト登用、企業理念の共有

経営者になれば、会社全体を見渡して的確に判断する必要があります。そのため早めに各部門をローテーションさせ、経験や知識を身に付けてもらいましょう。例えば、営業部門を経験させた後に経理・財務などバックオフィスに配属すると、業務を横断的・立体的に捉えることができるでしょう。

また「ポストが人をつくる」とはよく言ったもので、責任ある立場になってこそ成長できることがあります。役員などのポジションに就かせ権限を与え、意思決定を下したりリーダーシップを発揮したりする経験を積んでもらうことも有効です。

業界の動向や経営に関するイロハはもちろんですが、自社を引き継いでもらうには、現経営者が企業理念を直接伝え、真に理解してもらうことも欠かせません。それが後継者のモチベーションになり、困難な局面を乗り越える土台となります。

社外での学びと出会いで、視野と人脈を広げる

異業種や同業他社など社外の経営者らと交流することも効果的です。視野と人脈を広げることで、新しいチャレンジや自社変革への原動力になるかもしれません。

同じ組織に長くいると、考え方や手法が硬直化し、成長や改善の芽を摘んでしまう恐れがあります。そこで意識したいのが外部の知見や視点です。経営者として自社に迎える前に他社で勤務させ、自社にない新しい経営手法や人脈を獲得したいものです。

後継者にある程度の力が備わった段階で、子会社や関連会社の経営を任せるのも1つです。一足飛びに親会社などの経営を委ねるよりも、着実に資質を高め、責任感を醸成することができます。

また、外部機関が開く学びの場に足を運び、幅広い視野を育んでもらうのも良いでしょう。商工会議所や商工会、中小企業大学校などは「経営者塾」のようなセミナーを多く開いており、経営者が交流する会合でも人脈と知見を広げられます。りそなグループでも、「りそなマネジメントスクール」をはじめとするセミナーや研修を実施しています。

後継者には実務的なスキルや知識だけでなく、幅広い人脈と視野、マインドなど多くのものが求められます。社内外の多様な教育方法をうまく組み合わせることで着実に後継者を育成し、企業価値の向上に寄与する承継を実現しましょう。

(※1)中小企業庁「事業承継ガイドライン第3版」(2022年3月改訂)

事業承継について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点の内容となります。
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