製造業がDXを導入した場合、社内のさまざまな業務で効率化が期待できます。しかし、成功に導くには、いくつかの要素も必要となります。実際の導入事例を見ながら、DXで得られる効果と成功のカギについて考えてみましょう。
DXで得られる4つの成果
製造業がDXで得られる成果は多岐にわたります(下図参照)。

その中でも特に以下の4つの成果が重要だと考えています。
(1)人材育成の時短化、質向上
(2)情報共有の促進
(3)コストの削減
(4)意思決定の迅速化
それぞれについて見ていきましょう。
まず「(1)人材育成の時短化、質向上」。これは商談プロセスの情報を一元管理することによって得られる成果です。成績の良い営業スタッフの客先訪問頻度や、どんな資料を持参しているのか、などが可視化されますから、データを見るだけで若手営業の育成にもつながります。また、顧客の規模や業態など属性も整理できますから、分析も可能です。「この規模の顧客には、この商品が売れやすい」といった営業のヒントを得られるのです。
「(2)情報共有の促進」は、全社内で情報が共有されるようになることで得られる成果です。
具体的な事例をご紹介しましょう。釣り糸やテグスなどを製造している某メーカーでは、工場が数ヶ所に点在しており、本社と工場間の距離も遠いという状況でした。製造ラインでは、生産する商品を変える際には一度、ラインを止めて清掃作業などを行う必要があったのですが、営業はそうした事情を知らず、顧客からどんどん商品を受注してしまう、ということが常態化しており、生産と営業の不仲が続いていました。しかし、DXに取り組んだことでリアルタイムで生産計画が全社に共有されるようになり、こうした理解不足による軋轢が激減したのです。
「(3)コストの削減」は、さまざまな部署で効果が期待できます。紙やエクセルで管理していたものを自動化すれば、手間も削減できますし、ミスも減らすことができます。また、書類をOCRで読み取れば、発注書などの作成も自動化できます。実際に、ある企業では貿易関連の発注書類作成作業の業務を80%も削減できたという例もあります。
(1)から(3)を通じて、会社の状況をリアルタイムで可視化できるわけですから、「(4)意思決定の迅速化」につながるのはお分かりいただけるかと思います。無駄な在庫なども積み上がる前に素早く対処できるようになりますし、売り上げが減ったという局面でも、どの得意先からの発注が減ったのか、どの商品がダウントレンドになっているのか、などをすぐに把握でき、手を打つことができます。
DXがうまくいく会社の特徴とは
ただし、DXはベンダーやコンサルティング会社などに任せて費用だけ出せば成功するというものではありません。まずは現状を洗い出し、どんな効果を得たいのか、どの課題を解決したいのかを選定します。3ヶ月から半年かけてヒアリングや工場視察などを実施し、システム開発の要件定義を行います。全体方針の策定については経営層、可能であれば代表者の方にヒアリングしますし、システム開発要件の具体化については、営業や製造など各現場のキーパーソンにお話を伺います。また、トップ人材のナレッジ平準化であれば、トップセールスの方や生産性の高い工員の方がヒアリングの対象になります。
さらにシステム開発、定着までの伴走支援の期間も入れると、年単位でのプロジェクトとなります。
その際に各部署の人たちの協力も欠かせません。したがって、ひとたびDXに取り掛かったのなら、トップが従業員たちに断固たる決意を示し、協力してもらう体制づくりが必要となります。実際、過去の導入事例を考えてみても、現場が非協力的姿勢を示した際に、トップがしっかり介入して協力を説得できる会社で、DXが成功しやすいという傾向があります。
PCゼロでも諦めない
中には、パソコンやタブレットはほとんど導入していない、という会社もあると思います。もちろん、パソコンなどの使い方に精通している従業員が多い方がスムーズにDXを進められるのは言うまでもありませんが、「パソコンもない会社だから」といって諦める必要はありません。
ある大阪の製造業は、パソコンもタブレットも導入しておらず、従業員からは「ダウンロードってなんですか?」という質問が出てくるような状態でしたが、DXをやり遂げました。
なぜやり遂げることができたのかというと、トップや役員のコミット度合いが非常に高く、困惑顔の従業員たちを強いリーダーシップで引っ張ったからです。導入後も、システムにログインしていない従業員については、ベンダーから情報を提供してもらって個別に指導する、というような粘り強い取り組みを行い、デジタル化を定着させることに成功しました。
ここまで見てきたように、強いリーダーシップはDX成功の第一の条件です。「パソコンなどの利用に慣れている従業員が多い」というのは、望ましい条件ではありますが、絶対に必要な条件ではありません。
「このままアナログな経営を続けても、成長する未来が見出せない」とお考えなら、ぜひご相談いただければと思います。
DXでの課題解決について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

