経営層が管理職に求める役割とは

管理職というと、部長や課長など、いくつかの部署を横断的に管理し責任を負う役職のこと。これまで現場一筋で活躍してきた人も「予算の管理」や「人事査定」など、新しい業務が一気に増えると同時に、「重要な会議へ出席」など企業全体に関わる重要な役割を担うことで、自身の成長ややりがいを得られるポジションでもあります。
この時、上司(経営層)は管理職に一体何を求めているのかをきちんと理解できていれば、管理職の働き方次第で企業全体のベクトルが揃い、会社全体を大きく成長させることもできるのです。

経営層が管理職に求めていること

管理職の仕事は多岐にわたります。また当然ながら、同じ管理職でも部長と課長の違いなど、立場によってやるべきことや見るべき範疇、責任の範囲も異なります。しかし、共通してやらなければいけないこと、求められる役割もあります。その中から経営者が管理職に求めている重要なものをご紹介します。

◆その1:経営情報・現場情報を相手に合わせて適切に伝える

管理職は「上司と部下の板挟み」と同情されることもありますが、実際のところその役割はとても重要です。
上司である経営層は、世界の動向やマクロ経済的な視点から壮大なビジョンを描き、進むべき道や目的地などを示しますが、具体的な方法まで示しているわけではありません。経営者の決断には当然ながら理由がありますが、時には目標が高すぎたり、昨日までの重要事項が今日から重要でなくなってしまったり、部下にとってはモチベーションが下がるような決定がなされることもあります。また、経営層は現場の社員と比較すると親子以上の年齢差があることも珍しくないため、世代的な価値観も異なります。
そのような状況の中で、管理職は経営層からの『指標』を現場の社員に伝わるように、適切な粒度と納得感のある『指示』として翻訳する役割を担っています。そして同時に、現場社員から『報告・連絡・相談』を引き出し、経営層まで伝えるべき内容かどうかを見極め、必要に応じて『報告』することが求められています

◆その2:例外的な事案にクリエイティブな視点を持って柔軟に対応する

経営者は、日々変化している市場を観察し、新たな事業やサービス・商品を模索する役割を担っているため、その他多くの通常業務に深く関わっているわけにはいきません。
多くの企業で社員の主な役割は、通常業務を処理し、そこから外れた事案が発生した場合にすぐ上司に報告することです。
つまり、ここでの管理職に求められる役割は、その『報告された事案に適切に対応すること』になります。
報告の内容は、お客様からのクレームや社内のトラブルなど、ネガティブな要因を処理するだけではなく、新たな事業のヒントとなるようなポジティブな発見も含まれていると認識することが重要です。
そのような報告は、基本的に過去に前例がないものですので、常にクリエイティブな思考が求められます。すぐに経営層まで報告するような大きな問題かどうか、そうでない場合は自ら想像力を最大限に働かせ対応できるかどうか、この見極めの判断力と柔軟性が管理職の必須スキルとなります。その対応の中で見つけた新たな発見を、組織にとっての改善につなげることが、管理職の力量を左右することになります。

◆その3:社内外にネットワークを構築し成果を出す

管理職は、当然ながら自分の担当部門で成果を出すことを求められますが、経営層は常に会社全体を見ています。自分の部門で成果が出ていればそれで良い、というわけではなく、他部門の目標を理解し、ともに成果を出すにはどうしたらいいかを考えましょう。特に、組織を横断するようなプロジェクトのリーダーには、得意分野ではない領域のマネジメントでも成果を出すことは必須の能力となります。
社外に対しても同様です。企業の持続的な発展には、多くの関係組織との連携が不可欠ですが、それにはリーダーである経営者だけでは限界があります。管理職であれば、利害関係者間の双方の利益を探っていかなければいけません。時には、利害が対立する交渉の場に立つこともありますが、毅然とした態度で交渉するスキルも求められます。

管理職のミドルアップダウンな働き

このように管理職が経営者から求められていることを知るためには、経営者の視点に立って考えてみるとよいでしょう。また、経営者の要望を実践するだけではなく、部下から必要な情報を引き出したり、トラブル対応やチームワークを作り出すことも必要になります。これは、管理職の立場が経営者が見ている企業の『理想』と現場の第一線で直面している『現実』が交錯する、極めて重要な情報・知識の集積ポイントであることを意味しています。この異なる種類の情報をより分かりやすくつなぎ、トップからボトムまでの情報格差をなるべく少なくするとともに、新たなネットワークや事業コンセプトを創造するという、トップダウンでもボトムアップでもないミドルアップダウンな働きが求められているのです。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年4月4日時点の内容となります。
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