台湾富裕層が熱視線を注ぐ、日本の不動産の売れ筋は?

信義房屋王社長

信義房屋不動産株式会社 代表取締役社長 王茂桑
1981年、台湾生まれ。国立政治大学EMBA経営管理修士。2006年信義房屋(台湾)に入社し、08年店長(台湾)、11年エリアマネージャー(台湾)、22年信義房屋不動産(日本)副社長を経て23年信義房屋不動産および信義房屋マネジメント(日本)の代表取締役社長に就任。


円安や台湾有事などの影響で、日本の不動産を購入する台湾人が増えています。台湾の不動産仲介最大手・信義房屋の日本法人である信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)の王茂桑社長に、台湾人に人気の地域や物件タイプなどについて、お話を伺いました。

東京の不動産は台北より4〜5割以上も安い!

台湾人から見ると、日本の不動産は値上がり傾向にあり、かつ割安なので、非常に魅力的です。東京23区と台北市を比べると、平米あたりの単価は同程度です。しかし、専有部分のみを平米数としてカウントする日本のような国は世界では珍しく、多くの国ではバルコニーや階段部分など、共有部分も含めた平米数でカウントします。台湾も後者です。

こうした共有部分の面積を差し引いて専有部分のみで比較すると、台北の方が東京よりも、およそ4〜5割以上も価格が高いのです。

マンション/高級住宅(ハイエンドクラス)の価格水準の国際比較

また、日本の物件を買う方々は、いわゆる富裕層が多いです。私たちは、不動産を購入する際にキャッシュで買える方々、というのを富裕層の一つの目安と考えています。そして、たとえば東京で、7,000万円のマンションをキャッシュで買える方というのは、だいたい3億〜4億円以上の資産をお持ちのケースが多いように思います。

そんな方々が好む不動産というのは、立地でいうと東京23区。中でも都心の5区(港区、千代田区、中央区、渋谷区、新宿区)が人気です。日本人も同じですが、駅から近い物件が好まれますし、やはり新築が人気です。しかし、たとえば新宿区で駅から近くて新築、というと、物件の数も限られてきます。そこで、妥協して「築5〜10年くらいまでなら」と、条件を緩和して物件を探すお客さまが多いです。

購入物件の平均単価は?

物件の単価は6,000万〜1億円程度、平均で7,000万〜8,000万円といったところでしょうか。ちなみに、この2年は億ションを買われる方が増えて、当社では台湾の方々の取引全体の15%を占めるまでになりました。

これは、前回記事「台湾などアジア各国・地域から日本の不動産が注目を集めるのはなぜか」でお話ししたように、台湾有事を見据えた、セカンドハウス需要が伸びたからです。投資目的ですと50〜70平米の2LDKあたりが人気ですが、セカンドハウスとなると富裕層が自分たちで住むための物件ですから、3LDK、120平米は欲しいところです。今、六本木や麻布十番あたりのタワーマンションは、台湾人のお客さまに大人気です。

また、最近は、大阪など地方都市の人気が上がっていますね。本当は東京で新築を買いたいけれど、物件がない。そこで、大阪で探そう、となるわけです。現在、当社では約3割が大阪の物件で、うち8割が新築です。一方、東京の新築比率は3割にとどまります。それほど、東京では新築物件が少ないのです。また、大阪は利回りも東京より1〜2%高いですから、投資目線で考えたときには、魅力的に見えます。

TSMC進出で熊本も人気

現在、台湾の半導体メーカー・TSMCが熊本県菊陽町で工場建設を進めています。さらに、日本で第二工場を建設する可能性も出てきており、熊本、さらには九州への注目度が高まっています。

TSMCは世界最大手の巨大半導体メーカーです。そのサプライチェーンを担っている中小企業も当然、日本に進出してくるでしょう。そうした企業の関係者たちが今、熊本近辺で2,000万〜3,000万円ほどで新築の一軒家を建てるなどの動きが出てきています。台湾人は本当に、家を買うのが大好きなのです(笑)。

また、日本で工場を造りたい、社員寮を造りたい、といった問い合わせも頂戴しています。今後、こうした大型案件が増えていくだろうと思います。

当社としても、TSMCの進出は、さらなるビジネス拡大のチャンスです。福岡や熊本などへの支店展開のご要望もいただいています。支店を出すのは簡単な決断ではなく、慎重に考えなければならないことも多いのですが、前向きに検討していきたいと思っています。

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年8月25日時点の内容となります。
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