確定給付企業年金の一般勘定利率引き下げ!その影響は?

日銀の大規模な金融緩和による超低金利の影響で、国債などの利回りが低い状態が長期化しています。そのような中、大手生命保険会社の数社が一般勘定の利回り引き下げを発表したニュースは大きな話題となりました。

生命保険会社の一般勘定は大企業から中堅・中小企業まで多くの企業年金で採用されていますが、中堅企業・中小企業では特に一般勘定を中心とするケースが多いと言われています。自社の経営に関わるため、今後の動向に注目している経営者もいるでしょう。

一般勘定について紐解きながら、利回りの引き下げが企業に与える影響と対策を考えてみましょう。

一般勘定とは?

生命保険会社が契約者から預かった保険料の管理・運用を行う勘定の分類のひとつが一般勘定です。
確定給付企業年金(DB)の資産を企業が運用する際に、生命保険会社の一般勘定信託銀行等の実績配当型商品の大きく2つが運用先として挙げられます。

生命保険会社の一般勘定は、あらかじめ生命保険会社が定めた予定利率が保証され、運用リスクは保険会社が負います。また、運用の結果次第では配当もあります。

一方、信託銀行等の実績配当型商品は運用の結果がすべて資産に反映されるもので、運用がうまくいった場合には資産が増加する反面、運用結果によっては資産が目減りするリスクを負います。

一般勘定は運用実績が確実に見込めることから、企業がDBの資産を運用する際の重要な選択肢です。DBの資産構成を見ると国内外の債券や株式と並んで一般勘定は16.7%(2020年)となっています。(※1)

利回り引き下げがDBに与える影響

DBは企業が「拠出〜運用〜給付」の責任を負う性質のため、掛金は一定の利回りで運用されることが前提です。

企業年金の原資はDBの掛金と予定運用収益のバランスで成り立っており、そのバランスが崩れた場合には原資が足りなくなる=追加拠出につながります。

具体的には、DBの予定運用収益は目標運用利回り(予定利率※)に基づいて計算しており、予定利率と同等もしくは予定利率を上回る運用収益率を達成できない場合は積立不足となりますので、将来的に掛金が増大する可能性があります。

  • 予定利率…一般勘定の保証利回りは「予定利率(保証利回り)」と言われます。企業年金制度での「予定利率」は制度運営上の前提となる目標運用利回りを指します。

見直しの方法 

年金資産の積立不足を回避するためにはいくつかの方法が考えられます。

1.期待運用収益率を上げる

現在の資産運用を見直すことで、期待運用収益率を引き上げる方法です。
現行の予定利率に見合うよう、積極的な運用ポートフォリオに変更します。期待運用収益率を上げれば運用リスクが大きくなることに留意が必要です。

2.予定利率を下げる

現行の運用ポートフォリオに見合うよう、予定利率の引き下げを行う方法です。予定利率の引き下げは掛金が増えることになるため、企業のキャッシュフローに余裕がある場合の解決策になるでしょう。

3.年金制度全体の見直し

運用リスクを取りたくない、掛金も増やしたくない場合は、これを機に年金制度や給付設計を見直すという方法もあります。DB制度の見直しとしては、まずは総幹事会社に相談してみるのがよいでしょう。また、DBから企業型確定拠出年金(企業型DC)へ移行することも選択肢のひとつです。
制度の見直しには従業員の給与水準が変わる可能性が伴います。これまで大切に運用してきたDB資産を守るため、新たに事業主と従業員が納得のいくように進めることが重要です。


一般勘定の利回り引き下げによりDBの積立不足という事態が起こり得ます。そのままにしておくと追加拠出が必要になるなど、年金財政への悪影響も考えられます。企業年金制度は福利厚生策として導入したら完了ではなく、導入後も経営の観点を含めて定期的な見直しが不可欠です。

りそな銀行ではお客さまの運用目標(予定利率)に見合った期待運用収益を達成できるよう、多様な年金運用商品をご用意しております。また、DB制度の見直し、総幹事会社の交代や企業型DCへの移行などにつきましても、りそな銀行にご相談ください。

※1 企業年金連合会「企業年金実態調査結果(2020年)」

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年9月9日時点の内容となります。
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