なぜ今、初任給はここまで上がっているのか?

2025年春入社の新卒に対し、初任給の改定状況を調査した結果、初任給を引き上げた企業は7割を超え、同じ問いを設けた1997年度調査以降、2番目の高水準となりました。特に大企業では引き上げが顕著です。その背景には人材確保への危機感や、既存社員とのバランスを意識した昇給判断が見て取れます。本記事では、調査結果に基づいて、いま企業が初任給や待遇をどう見直しているのかを読み解きます。

広がる「初任給アップ」の波

株式会社産労総合研究所の調査によると、2025年春に入社する新卒社員の初任給を「引き上げた」と回答した企業は全体の72.0%に上りました。前回2024年度調査と比べると3.6ポイント減となったものの、調査開始以来、2番目に高い水準です。一方、「据え置いた」とする企業は23.8%、「引き下げた」とする企業は3年連続でゼロでした。

初任給引き上げ状況の推移(1997年度以降)

給与水準そのものも上昇傾向にあります。大学卒(一律に初任給を決定している企業)の初任給は平均239,280円(前年度比5%増)と、引き続き高水準を維持しています。加えて、高専卒や高校卒といった他の学歴区分でも、広く初任給の見直しが進んでいます。

こうした背景には、人材確保競争の激化や慢性的な人手不足の影響があると考えられます。初任給の底上げは特定の業種や企業に限らず、幅広い企業群で進行しており、今後もこの傾向が続く可能性があります。

企業規模で初任給はここまで違う?

では、企業規模別・学歴別の平均初任給データをもとに、2025年度の傾向を詳しく見ていきましょう。

たとえば大学卒では、「1,000人以上」の企業が259,285円(前年比6.52%増)と最も高く、「300~999人」の企業は239,624円(同4.63%増)、「299人以下」の企業は231,657円(同4.63%増)。高校卒でも同様に、「1,000人以上」の企業が208,505円(同7.52%増)、「300~999人」の企業が200,923円(同5.44%増)、「299人以下」の企業は190,450円(同4.08%増)となっています。

このように、企業規模による差はあるものの、初任給の引き上げは特定の業種や一部の企業に限らない動きであり、物価上昇や最低賃金の引き上げ、さらには人材投資の観点から新卒採用に力を入れる企業の姿勢がうかがえます。こうした変化は、今後の賃金動向を見通すうえでも重要な兆候といえるでしょう。

「上げる/上げない」の分かれ道に垣間見える企業の思惑

初任給を引き上げた企業の多くは、明確な目的をもってその判断を下しています。今回の調査では引き上げの理由として、「人材を確保するため」が71.1%と最多。依然として新卒採用市場における競争の激しさがうかがえます。次いで多かったのは「在籍者のベースアップがあったため」で48.3%と、既存社員とのバランスを考慮して昇給を決める企業も少なくないようです。

一方で、初任給を据え置いた企業にも、それぞれの事情があることがうかがえます。据え置いた理由で最も多かったのは、「在籍者のベースアップがなかったため」で31.3%。組織全体の賃金改定状況が、そのまま新卒にも反映されていることが見て取れます。「現在の水準でも十分採用できるため」(30.0%)という回答も多く、すべての企業にとって引き上げが最適解とは限らないことも浮き彫りになりました。

さらに、「新卒を採用しなかった」と回答した企業は15.0%に上り、採用自体を見送るケースも一定数存在しています。人手不足が続く中でも、各社がそれぞれの戦略や制約の中で、慎重な判断を下していることがわかります。

8割超が新卒に夏季賞与を支給する時代に

2025年度の新卒入社者に対する夏季賞与の支給状況では、企業側の“還元姿勢”がより明確になっています。この調査によれば、「何らかの夏季賞与を支給する」と回答した企業は81.8%に上り、前年の77.5%から4.3ポイントの増加。一方で「支給しない」は8.0%にとどまり、新卒採用直後から賞与を出す企業が大多数であることがわかります。

支給方法として最も多かったのは、「一定額(寸志等)を支給」で67.6%。次いで「在籍期間の日割計算で支給」が19.3%、「日割以外の一定割合で支給」が5.8%となりました。支給額の平均は、大学卒で100,107円、高校卒で79,983円でした。

金額分布では「5万~10万円未満」が最多で、大学卒で41.0%、高校卒では49.6%となっています。企業規模別に見ると、「1,000人以上」の企業が支給率・支給額ともに高く、待遇格差が初期段階から表れている点も注目されます。

いまや初任給だけでなく、賞与による「早期還元」も、新卒採用における戦略の一環です。単なる報酬ではなく、人材の定着やエンゲージメントを意識した設計が求められており、処遇のあり方そのものが、企業の姿勢や競争力を映し出す指標となりつつあります。

※ 産労総合研究所「2025年度 決定初任給調査」(2025年7月7日発表)

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2026年3月27日時点の内容となります。
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