2025年、公文教育研究会とりそな銀行は「ソーシャルインパクト預金」を立ち上げました。背景には、子どもの教育格差拡大という社会課題があります。教育格差の現状と、子どもがしっかり学習をして自らの可能性を伸ばすにはどういった要素が必要なのか、公文教育研究会の三好健太郎氏にお話を伺いました。

三好 健太郎
株式会社公文教育研究会 全社戦略推進本部副本部長 ライセンス事業推進部部長
1992年公文教育研究会入社。教室事業として鹿児島、香川で責任者を経験。また、本社スタッフとして情報統括部門、広報部門、新規事業部門などを経験する。社内で新規部署の立ち上げは今部署で4回目。2021年7月より現職にてライセンス事業の新規事業開発業務を担う。2024年7月より全社戦略推進本部副本部長を兼任。
日本でなぜ教育格差が広がっているのか
戦後の日本は高度経済成長を遂げ、「1億総中流」と呼ばれた時代がありましたが、2000年前後を境にその社会構造は大きく変容し、子どもたちを取り巻く環境も激変。教育格差は年々広がっています。
公文がこの問題に強い関心を抱く背景には、創始者・公文公(とおる)の理念があります。公文式学習は彼が我が子のために発案した教材から生まれました。1958年の創業から、今では世界61の国と地域に広がっています。一般の公文式教室にお通いいただく場合は、ご家庭から会費をいただきます。一方、公文が創業から大切にしてきた理念は、「個々の人間に与えられている可能性を発見し その能力を最大限に伸ばすことにより 健全にして有能な人材の育成をはかり 地球社会に貢献する」ことであり、どの子どもにも可能性があり、人材育成を通して世界平和に貢献することであります。より多くの子どもたちにこの学習法を届けたいという思いがある中で、経済的な理由で教室に通えない子どもたちへのアプローチは、長年の経営課題でもありました。
教育格差が拡大した要因はいくつもあります。特に2000年代以降、貧困に関連した様々な問題が顕在化してきた印象です。公文式の教室でも、友達と一緒に学習を受けたいと思っていても、経済的な理由で通うことができない環境にある子がいることを指導者から聞くことがあります。

さらに、社会の多様化とセーフティネットの機能がうまくまわっていないということも大きいと思います。かつては家庭、地域、学校が一体となって子どもを見守る「居場所」が存在しました。しかし、核家族化の進行、共働き世帯の増加、地域のつながりの希薄化により、その機能は以前と比べ低下していると考えられます。
子どもの教育に必要な2つの要素
教育格差の緩和について語るとき、「経済的支援」に目が行きがちですが、現場の実感として、子どもが健全に育つためには「経済力」と「大人の関わり」という2つの要素が重要であり、どちらも欠けてはならないと考えています。
経済力は、学習環境を整えるためにもちろん重要なのですが、それだけでは不十分なのです。特に重要なのが「大人の伴走」です。学校では、1人の先生が多数の生徒を教える授業スタイルが中心となります。授業の進行から遅れてしまった子どもに対し、一人ひとりの理解度や心理状態に合わせて声をかけ、長く見守り続ける大人の存在が非常に重要なのですが、そこは家庭や学習塾など、学校以外の大人の介入が必要な部分と考えます。
「悪いのは子どもではない」。これは弊社が大切にしている考えの一つです。どの子にも可能性があります。しかし、環境要因によって「できない」というレッテルを貼られたり、自分自身で「どうせ無理だ」という思い込みを持ってしまう子どもたちがいます。この連鎖を解くためには、子どもの力を信じて伴走する大人の存在こそが、経済支援と同じくらい重要なのです。
「非認知能力」と「内なる自信」を育むことが子どもの未来をつくる
これからの時代、偏差値などの目に見える学力(認知能力)に加えて重要視されるのが、意欲、忍耐力、自制心、努力を継続する力といった「非認知能力」です。
教育格差が生む最も深刻な弊害は、学力の低下そのものよりも、この非認知能力の低下、そして「自分を信じる力」の喪失にあるのではないでしょうか。公文は少年院での学習支援活動を行っているのですが、多くの子どもたちが「自分が勉強をできなくなった瞬間」を鮮明に記憶しています。その帰結は単にテストで点を取れないということにとどまりません。そこから自信を失い、社会とのつながりから離れてしまうことがあります。
ここで公文式学習の強みが発揮されます。公文では、学年という枠組みにとらわれず、その子ができるところからスタートし、「できた!」という達成感を積み重ねながら、少しずつレベルを上げていきます。 誰とも比較されず、自分のペースで学習を進めるプロセスは、単なる知識の習得にとどまりません。「やればできる」という自己効力感を育み、ひいては困難に直面しても諦めずにやり抜く力を養うのです。
また、公文式の指導者は、子どもの様子をよく観察して、「今日は疲れているから教材の内容を変更しよう」「調子が良さそうだからもう少し進もう」といった微調整を行います。AIを活用した教材が普及する現代においても、こうした子どもたちの状態を見極める、人による温かい関わりはやはり大切です。
公文で学習を継続すれば、当然学力は上がりますし、受験にも有効です。しかし、我々が最も重視するのは子ども一人ひとりが持つ可能性を発見し、最大限に伸ばし、最終的には自分で自分の人生を切り拓く力を身につけていただくことなのです。
さらに、『公文×りそな銀行「ソーシャルインパクト預金」の挑戦』では、子どもの教育格差という社会課題に対する取り組みについてお話しします。
りそなBiz Actionではこれらの資料もご用意しております。ぜひご活用ください。


