中小企業向けガイドラインでSDGsについて学ぼう

佐久間 信哉(サクマ シンヤ)
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授
長年、神奈川県で、さまざまな先進的な政策創りに関わり、ヘルスケア・ニューフロンティア推進局長や保健福祉局長等を経て2017年に早期退職。現在、慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボメンバーとして複数の研究活動に携わる傍ら、鎌倉市行政委員、湘南鎌倉医療大学評議員、医療法人や民間企業等の理事やアドバイザーを務める。
近著に、「SDGsの課題別推進方法」(蟹江憲史、佐久間信哉、高木超、2021.10第一法規)


2018年に蟹江憲史・慶應義塾大学教授らがスタートした「xSDG・ラボ」では2023年7月、第一生命株式会社と共同で「中小企業向けSDGsガイドライン」を発表しました。同ラボに所属する慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の佐久間信哉 特任教授に、ガイドラインの特色と、中小企業がSDGsに取り組む際に知っておきたいことについて、話を伺いました。

中小企業に「これなら」と思ってもらえるように

中小企業においては、SDGsへの関心が高まっているのは間違いないものの、全体的にはまだまだ取り組みが進んでいるとはいえません。「コストがかかるのではないか」「知ってはいるが、何をやればいいのかよくわからない」など、さまざまな面で取り組みにくいと感じている経営者が多いようです。

私たちが2023年7月に第一生命株式会社と共同で発表した「中小企業向けSDGsガイドライン」は、こうした“取り組みにくさ”を少しでも和らげるために、中小企業の実態に即した内容とすることに力を注ぎました。

「xSDG・ラボ」では2020年、SDGsの17のゴールごとに「SDG行動」や「具体的行動の例」を整理した「企業のためのSDG行動リスト」を公表しましたが、大企業を念頭に置いていた面があり、中小企業の方々に活用していただきにくい面もありました。今回は、15,000社以上の中小企業からご回答を頂いたアンケートや個別のヒアリングを活用して、できるだけわかりやすく、かつ効果的なSDGsの取り組みは何かという観点から、「中小企業向けSDGsガイドライン」を取りまとめました。

持続可能な企業経営を目指している中小企業の皆さんに、ぜひ、手に取っていただければと思います。

中小企業の実態に基づいて提案

ガイドラインでは、具体例も豊富に盛り込みました。

たとえば、アンケート結果を踏まえて、実際に多く取り組まれているSDGsの具体策について、「女性活躍推進」「健康経営」「人材育成」「災害対策」「その他」の上位6項目を選定。「女性活躍推進」なら、「事務だけでなく、営業職・技術職などに配置」「職場環境整備(トイレ・更衣室など)」といった、実際に中小企業の経営者が取り組んでいるものを紹介しています。

難しく考えすぎなくても、気軽にチャレンジでき、かつ自社にメリットのある取り組みはたくさんあります。ただ、イメージがわかず、二の足を踏んでいる中小企業が多いのではと思います。アンケート調査結果に基づいて、「実際に中小企業で取り組まれていること」をご紹介することで、「これならやってみようか」と思っていただけるのではないかと考えています。

地に足のついた取り組みのために

SDGsへの取り組みは大企業だけでなく、中小企業にとっても、待ったなしとなっていることは言うまでもありません。SDGsに取り組まないことで、人材が集まりにくくなったり、取引を打ち切られたりするなどのリスクもあります。しかし、だからといって実態に即していない形で「やっています!」とアピールだけをしても意味はありません。

SDGsの検討・取り組みを始める際の最も大きな判断要素

特に中小企業の場合は、経営者の意思決定が重要になりますから、まずは経営者がSDGsに本気で取り組むと決意を固めることです。具体的な行動面のハードルについては、今回我々が発表したガイドラインを読んでいただければ解消される部分も多いのではないかと思います。

SDGsに取り組むことのメリットについても、知っておいていただきたいと思います。ガイドラインにも盛り込みましたが、SDGsに取り組む主なメリットは、「ひろがる(取引先や顧客・採用が広がる)」「もうかる(売り上げが拡大する)」「役に立つ(社会に貢献できる)」の3つです。SDGsはコストばかりかかるとお考えの経営者もいますが、そうではなく、しっかり取り組めば会社の発展に寄与するものです。

中小企業の持続可能な企業経営のために、ぜひ、SDGsの具体的な取り組みについて学んで、最初の一歩を踏み出していただければと思います。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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