「自分のボーナスを同僚に配る」? 日本レーザーの独創的な評価と報酬制度

中小企業にとって、優秀な人材の獲得と定着は喫緊の課題です。過去9年間、離職率がほぼゼロという実績を誇る株式会社日本レーザーは、独創的な評価と報酬の仕組みを構築しています。また、コミュニケーションを促すユニークな仕組みも取り入れています。同社の別府雅道専務にお話を伺いました。


別府 雅道
日本レーザー専務取締役
1980年慶應義塾大学卒業、日本電子入社、経理部長を経て、2003年デンツプライ三金経理部長、2008年ライカマイクロシステムズ執行役員経理部長を経て2016年、日本レーザー入社、2021年日本レーザー専務取締役就任

ハラスメントや不正が起きない理由

かつて、日本レーザーが経営不振だった時代には、カラ出張をする社員がいるなど、モラルに大きな問題があったようです。パワハラやセクハラもあったかもしれません。それらを一掃できたのは、やはりMEBO(マネジメント・アンド・エンプロイー・バイアウト)を行い、社員が株主になったことは大きかったと思います。(詳しくは『離職率ほぼゼロ、日本レーザー「人を大切にする経営」の神髄』記事を参照)

自分が株主の会社なのに、不正を働いて会社に損害を与えようなどとは思わないものだからです。それに、しっかり頑張って成果を上げれば、正当に評価もされ、ボーナスも上がりますから。

自分で自分のボーナスを決める!?

営業職の場合ですと、定性的なボーナスのほかに、売上総利益の3%を定量的なボーナスとして支給します。しかし、仕事はすべて1人で完結するとは限らず、他の人の協力を得ることもあるでしょう。そこで、この定量部分のボーナスに関しては、社員が自分の裁量で、協力してくれた人に配分することができる仕組みとしています。たとえば、定量部分のボーナスが30万円の人がいるとします。この人は全額自分でもらっても構いませんが、案件を手伝ってくれた同僚に5万円、10万円と配分することも可能なのです。

この仕組みは、社員間の相互協力を促す上で極めて合理的に機能しています。たくさん分配してもらえれば「また一緒にやりたい」と感じるでしょうし、分配する側も、協力を得やすくするためにしっかり分配しようと思うものです。

孤独を防ぐコミュニケーション

社員同士の協力は、やはりとても大切なのです。日本レーザーは自主性を重んじる自由度の高い会社ですが、ともすると個人商店の集まりのようになりがちです。特にテレワーク時代では、つながりが希薄になるリスクもあります。そこで、社員間のコミュニケーションを図る仕組みも導入しています。

たとえば、「今週の気づきとありがとう」というテーマで上司と役員、さらに所属部署の全員にメールを送るという取り組みを何十年も続けています。内容はなんでもいいんです。仕事の話でもいいし、プライベートのことでも、電車に乗っていて気づいたことでもいい。毎週これを読んでいれば、「ペットを飼っているんだな」とか「会社では難しい顔ばかりしているけれど、お母さん思いなんだな」とか、色々わかるわけです。そうすると、ちょっとすれ違った時に共通の趣味の話題で盛り上がったりね。とてもいい仕組みだと思います。

顔と名前が認識されている度合いと離職意向の関係

役員である私のところには全社員のメールが届きます。現在の社員数は68人ですから、全員のメールを読もうと思えば読める。近藤宣之前会長は「200人までの規模なら、ポリシーを全社に浸透させやすい」と言っていました。中小企業ならではの利点だと思います。

中小企業が生き残るための「トップの覚悟」

昨今の人手不足は非常にシビアで、「中小企業なんだから仕方ない」と諦めたくなるかもしれません。しかし、絶望的な状況の日本レーザーの大変革に成功した近藤は「トップがまず変わらないと、会社は変わらない」と言っていました。

日本レーザーはエレベーターのところに大きな鏡を設置しています。部長など上の立場の人間は、鏡を見て笑顔を作ってから入室しろということです。上の人間がいつも不機嫌だったら、下は萎縮して当たり前です。そして、業務上で何か不都合なことが起きても隠そうとするかもしれない。

だから、上に立つ人間は、いつも笑顔でいることが一番です。優れた制度より何より、笑顔がまずは大切ではないかと思います。古い世代の方なら「挨拶はまず下の人間からするものだ」というような価値観をお持ちかもしれませんが、そこを敢えて自分から、笑顔で挨拶してみてはどうでしょうか。

また、怒られるよりもさらに辛いのは、ほったらかしにされたり、無視されたりすることでしょうね。やはりコミュニケーションは非常に重要です。

上の人間が笑顔で、「社員を大切にしている」という姿勢を示し続ければ、それだけで離職率は多少下がるんじゃないかと思います。中小企業であれば、給料や福利厚生については大企業にはなかなか敵わないかもしれない。だけど、「大切にしてもらっているな」と社員が感じられれば、頑張ろうって思ってくれるものです。

人材戦略について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年11月21日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。