企業不動産をBCP対策に活用しよう

大規模な地震や水害などの自然災害、コロナ禍のような感染症のまん延などを経て、「万が一のときに自社が社会に与える影響を最小限にする」ことが注目されています。そこで推進されているのがBCPの策定です。今回はBCPの観点から、企業不動産の活用法を考えてみます。

BCPとは?

BCPとはBusiness Continuity Planの略で、「事業継続計画」と訳されます。自然災害等の緊急時を想定し、事業を可能な限り途切れさせないように策定するものです。
従業員や訪問者の人命の安全確保をすることに始まり、生産ライン等の緊急停止の方法、対策室の設置ルール、事業復旧までのプロセスといったことをあらかじめ決めておくことで、中核事業をできる限り停止せず、経済社会への影響を最小限にすることを目的にしています。

政府でも、首都圏で災害が発生した場合に事業が完全麻痺しないよう、一部機能を避難させる場を設けておくことなどを推奨。本部機能の移転先として支社を活用する企業や、本社を地方に移転するケースも増えています。
万一の際に業務内容のバックアップを復元できるよう、手始めに業務のデジタル化・クラウド化を図ることはすでに広まっており、大企業でなくとも取り組めることは少なくありません。

ただ、BCPの策定はハードルが高いと感じる企業も多いことから、簡易版BCPとも呼ばれる「事業継続力強化計画」の検討から始めることも勧められています。
中小企業庁中小機構のホームページに、詳細や策定の手順が記載されていますので参考にしてください。

BCP対策の考え方を不動産に生かすには?

企業不動産はCRE(Corporate Real Estate)と訳され、社屋、倉庫、工場、研修施設などがそれにあたります。単に保有するだけでなく、戦略的に活用(購入・売買・投資)し企業全体の価値を高める動きがあります。
ここにBCP対策を合わせると、さらなる相乗効果を得られます。

たとえば社屋と工場、倉庫が1箇所に集中していると、利便性は高いですが万が一のときに一斉に事業が停止してしまうおそれがあります。製造工場の停電等による機能麻痺、運送業や土木業では重機の避難先がない、といったこまりごとが実際に発生しています。
BCP対策として、首都圏から離れた場所に事業の主要機能を分散しておく、トラックヤードを用意しておくといった対策をとっておけば、業務が完全麻痺に陥ることはありません。さらに遊休不動産を活用できるというメリットもあります。

このような戦略的な機能分散により、業態を問わず不動産活用とBCP対策を両立できるのです。

BCP対策に不動産を活用した事例(※)

災害リスクが少ない地域にBCP拠点設置

静岡県の株式会社大川原製作所は、東日本大震災(2011年)を受けて地震等のリスクが少ない地域への拠点分散を検討。主要事業である医薬品・化学薬品等の生産機械器具製造は高度な技術が必要であり、信頼できる企業との連携が欠かせませんでした。最終的に九州長崎の地元企業と協力体制を構築し、2018年にBCPを策定した上で、長崎県諫早市に「オーカワラテック株式会社」を立ち上げています。

被災時の避難所・防災拠点も兼ねた倉庫の新設

熊本県の株式会社ヒサノは、精密機械や産業用機械などの運送業です。熊本地震(2016 年)や熊本豪雨(2020年)を受けてBCP対策に乗り出しました。被災時の生活再建に必要な機器を迅速に輸送できる体制を整え、熊本県と福岡県にある3拠点のいずれでも本社機能を担えるよう、情報をクラウド上で共有しました。さらに新倉庫には自社の従業員だけでなく、近隣住民の避難所としての機能を持たせています。

ハザードマップを確認し食品工場を移転新設

宮崎県の精米業者である株式会社宮崎アグリライス販売は、大地震による津波被害を想定し、工場を移転。合わせて浸水時に被害を最小限に食い止めるため、主要な機械設備を2階に、1階には復旧が容易な集塵機のみを設置しました。新工場はHACCP認証も取得しています。これにより従業員の安全確保と、緊急支援物資で重要な無洗米を安定供給できる体制が整備でき、住民の安心安全にもつながりました。


BCP対策とCRE戦略は、上記事例のようにSDGsやESG経営にも効果をもたらします。近隣住民への安心感や、新たな雇用を地域に生み出す可能性もあり、企業イメージの向上にも役立つでしょう。
このように企業価値の向上も期待できる一方で、専門的な知識が求められる難しい面もあります。専門家に相談し取り組むことが必要です。

りそなグループでもBCP対策に不動産を活用したい企業のお手伝いをしています。ぜひお問い合わせください。

(※)経済産業省 九州経済産業局「大切なビジネスを守るBCP事例集」

不動産の活用事例及び課題解決の考え方について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年4月5日時点の内容となります。
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