不動産ESGへの効率的な取り組み方、カギは事前調査・事前評価にあり

不動産ESGや社会的インパクト不動産など「名称は聞いたことがあるけれど、実際にどう取り組めばいいかわからない」という企業も多いでしょう。何をどう取り組めばいいのか、また、取り組みのコツはあるのでしょうか? 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課にお話を伺いました。

プロの手も借りて事前調査をしておこう

不動産ESGは、不動産会社にとって取り組むべき課題であることは言うまでもありませんが、その他の業種であっても、自社で物件を持っている会社は意識すべきです。しかし、不動産のプロではないため「どこから、どう取り組めばいいかわからない」という声もあるようです。

最近は、環境性能向上についての可能性調査を実施して、対策を決めていく企業も増えていると聞いています。ひとくちに環境性能と言っても、どこから手をつけるのが効率的なのか、やはりプロの目で見てもらう方が安心です。また、物件の状態によっては、思い切って建替えした方が、コスト的にメリットが大きいというケースもあるでしょう。

事前調査にあたっては、過去の改修履歴や図面のほか、過去1年分の電気使用量などのデータがあると良いでしょう。調査を依頼するのはゼネコンや設計会社のほか、環境認証を取得する前提で信託銀行などの金融機関やコンサルタントにアドバイスを求めるケースもあるようです。

物件の改修には相応の費用がかかりますから、事前調査などにより実態把握をしっかり行い、生み出したい効果を意識して取り組み内容の取捨選択をすると良いと思います。

E(Environment:環境)、S(Social:社会)の具体事例

社会的インパクト不動産では、ESGのうち、主にE(省エネや再エネ対応、生物多様性保全の取り組みなど)と、S(人的資本経営、人材育成、ダイバーシティへの取り組みなど)が典型例としてあげられると思います。

不動産を通じた社会課題解決

※国土交通省『「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス』(2023年3月)より

これらの取り組みは物件の価値を上げるだけでなく、テナントや利用者にも喜んでもらえるものです。環境性能向上(E)は光熱費などのコスト削減に直結しますし、建物利用者の健康性・快適性の維持・増進を目指すウェルネスオフィス(S)は、対応前後でテナントや利用者の満足度はアップすると思います。

こうした満足度はあらかじめ指標を関係者で議論して定め、評価していくことで、次の物件の改修に繋げやすいと思います。すでにテナントが入っている物件でも「こんなに満足度が上がる」ということを数字で示せば、改修に理解を示してもらいやすいなどのメリットがあります。

また、Sについては、建物の利用者にとどまらず、地域社会にまで視野を広げた取り組みをすることもできます。地域の自然や食、文化の魅力を活かしたレストランをつくったり、地域の子どもたちに良質な遊び場を提供する取り組みなど、ユニークな実例も出てきています。『「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス』参考資料では、さまざまな事例での評価指標も含めた取り組み内容を紹介していますので、参考にしていただければと思います。

不動産会社だけでなく、不動産を持つ一般事業会社も意識を

現段階では、大手企業の取り組みが先行していますし、不動産会社の方が環境不動産などへの意識は高いという傾向はあると思います。不動産業がメイン事業ではないものの、物件を持っているという中堅・中小企業の場合、投資家や金融機関と対話する機会もあまりなく、不動産ESGや社会的インパクト不動産にはまだまだピンとこないということもあるのかもしれません。

しかし、これからはESGへの取り組みがあまりにも希薄な物件は、テナントに選んでもらいにくくなる時代だと思います。競争力を強化して収益性を高めるためには、ESGを意識した取り組みは必須です。

テナントは数ある選択肢の中で比較をしますから、どういった不動産が選ばれるのか、ESGの視点も踏まえて取り組みをご検討いただくのが良いと思います。『「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス』も、不動産が対応することができる社会課題などの情報を充実させていますし、前述したように、専門家に事前調査してもらうのも良いでしょう。

不動産に関わる関係者がどのようなことを求めているのか、把握して対応を進めれば自ずと物件の価値に反映されていくと思いますので、ぜひ参考にして取り組んでいただけたらと思います。

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年2月22日時点の内容となります。
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