不動産レポート2025年秋(首都圏版)

3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2025年秋に発行された、首都圏向けの内容となります。

【Market REVIEW】新政権下で日銀の利上げペースはややスローダウン含み

  • りそなアセットマネジメントチーフストラテジスト 下出 衛
    植田日銀総裁は10月末に行われた金融政策決定会合後の会見で、1)経済・物価見通しが実現する確度が高まってきている、2)米国景気の下振れリスクが従来想定に比べやや低下した、と評価した上で、利上げを判断する材料として、春闘の初動モメンタムに注目していると述べました。年末から来年はじめにかけて、労組・経営側の春闘方針がある程度明らかになることを念頭に置いた発言とみられます。次回12月、もしくは、来年1月の金融政策会合で0.25%の利上げが決定される可能性が高いと考えられます。短期金融市場(OIS)が織り込む0.25%の利上げ(0.5%→0.75%)確率も、12月会合が約4割、来年1月会合は8割程度と、来年1月会合までの利上げを有力視しています。
  • ただ、その後の利上げについては、政府との連携が焦点となりそうです。高市政権では、緩和的な金融環境と財政刺激を続けることで需要超過の状態を維持する“高圧経済”を目指していると言われています。また、高市首相は現在の2%超の物価上昇を「コストプッシュ型」であるとし、需要主導(ディマンドプル型)の物価上昇への移行が望ましい旨を繰り返し発言されています。
  • 日銀公表の10月決定会合の「主な意見」では、会合に参加された内閣府代表者(おそらく2日目の会合に出席された城内経済財政政策担当大臣)の発言として、日銀には「日銀法、政府・日銀の共同声明主旨」に沿って、政府との連携を求める旨が記載されています。従来、0.75%の利上げが実施された場合、その次の利上げはその半年後、との見方が一般的でした。しかし、大きく円安が進行する場合は別として、1.0%への追加利上げについては、ややハードルが上がったと考えられます。

(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)

経済成長率はプラスが継続、インフレ率も低下傾向

  • 2025年第二四半期の国内実質GDP成長率は、2.2%(前期比年率換算・季節調整値)と5期連続でのプラス成長となりました。ESPフォーキャスト10月調査によると、2025年第三四半期では▲1.35%とマイナスに転じ、その後は概ね0%台で推移する見通しです。
  • 国内の消費者物価指数は、第一四半期の3.5%(前年同期比・生鮮食品を除く総合)から低下が進み、第三四半期では2.9%となりました。同調査によると、今後は食料品価格上昇の影響が鈍化することなどから、2026年第二四半期には2%を下回る見込みです。

食料品の値上げなどを受け、小売販売額は増加

  • 商業動態統計調査によると、2025年8月の小売販売額は、ガソリン価格の低下や自動車販売、無店舗小売業が振るわなかったことを受け、42か月ぶりに前年比でマイナスとなりました。しかし、9月にはコメの値上げなどにより前年比+0.5%(速報値)と上昇に転じています。引き続き、価格要因が販売額の押し上げ要因となっています。
  • 日本百貨店協会によると、百貨店売上高も国内消費の好調さを背景に、2か月連続で前年比プラスとなりました。インバウンド売上高は7か月連続で前年割れとなった一方、購買客数は9月として過去最高となり、単価低下もみられることから消費行動の変化もうかがえます。

中古マンション価格は上昇が継続

  • 東京カンテイによると、首都圏の70㎡あたり中古マンションの平均価格は、2025年9月では、6,018万円(前年同月比+25.1%)と上昇が継続しています。都心部での高騰も続いており、都区部では17か月連続、都心6区でも足元で17,550万円(同+30.9%)と32か月連続での上昇となっています。都心部での価格上昇が周辺にも波及しています。
  • 不動産経済研究所によると、2025年度上半期(4〜9月期)の新築分譲マンション平均価格は9,489万円と過去最高価格を更新しました。一方、契約率は61.9%と2年連続で70%を下回っています。価格高騰などを受け、定期借地権付きマンションへの関心も高まっており、同期の供給戸数は680戸(前年同期140戸)と大幅に増加しています。

オフィス空室率は改善が進み、好調が継続

  • 三幸エステートによると、東京都区部の2025年9月の平均空室率は2.52%(前年同月差▲1.89ポイント)となり、改善傾向が継続しています。大規模ビルを中心に改善が進んでおり、都心部の空室が少ないことから、周辺部に立地するビルへの需要の高まりもみられます。
  • 引き続き、企業の人手不足感もみられます。日本銀行によると、全産業の雇用人員判断DIは、2025年9月に-36となっており、オフィス需要の中心である非製造業では-44と、不足感が一段と強まっています。今後も人材獲得に対する関心は続くとみられ、高グレードビルへの選好の高まりや、増床・拡張移転のニーズが見込まれます。

【Market TOPICS】2025年都道府県地価調査(東京圏・全国)

  • 都道府県地価調査によると、東京圏の上昇率は住宅地+3.9%、商業地+8.7%となり、上昇が継続するとともに上昇幅も拡大しました。
  • 全国の住宅地で上昇率が高かったのは、インバウンド需要が旺盛で半導体メーカーが進出する北海道の地点や、都心へのアクセス性が良く人口が増加傾向にあるつくば市の地点でした。商業地でも同様に、半導体メーカー進出地域やインバウンド人気の高いエリアで高い上昇率となっています。

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りそな銀行不動産ビジネス部
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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年12月5日時点の内容となります。
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