3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2025年春に発行された、首都圏向けの内容となります。
【Market REVIEW】米国関税政策の帰趨次第で日銀の金融政策見通しは修正含み
日銀は5月1日に公表した「展望レポート」で、米国の関税政策の影響を主因に、2025年度・26年度の経済・物価見通しを大幅に下方修正しました。新たに示された見通しでは、実質GDP成長率は25年度+0.5%(1月時点+1.1%)、26年度は+0.7%(同+1.0%)、消費者物価(生鮮食品除く)の伸び率は、25年度+2.2%(同+2.4%)、26年度+1.7%(同+2.0%)にそれぞれ引き下げられました。この下方修正に伴い、2%物価目標の達成時期は、26年度後半〜27年度に後ズレすることが示唆されました。市場の利上げ観測は大きく後退し、短期金融市場が織り込む「年内追加利上げが実施される確率」は、3月末時点の100%から一時30%台に低下しました。- ただ、展望レポートの脚注には、各国間の関税交渉や影響の度合い次第で、見通しが大きく変化しうる点には注意が必要、と記載されています。植田日銀総裁も決定会合後の会見で、“関税政策で大きな動きがある場合は、見通し自体も変わり得る”旨を繰り返し述べられています。自然災害や戦争などの外的ショックが発生した場合は別として、中央銀行が公表する経済・物価見通しが短期間に大きく変更されることは極めて稀ですが、今回の場合は、トランプ関税という全世界に影響を及ぼし得る不確実要素が存在することから、日銀の見通しも“仮置き”色の強いものにならざるを得ないようです。
- 米中両国が、双方の追加関税率を115%引き下げることで合意するなど、関税交渉で具体的に大きな動きが出ています。来年秋の中間選挙を良い経済状態で迎えたいトランプ政権としては、関税策を巡る不透明感で景気停滞が長期化する事態を回避するため、相互関税停止期限の7月上旬までには主要国(中国除く)との個別協議の最終決着を目指すとみられます。早ければ次回7月、或いは、次々回10月の展望レポートで、日銀の経済・物価見通し、及び、2%物価目標の達成時期が再修正される可能性があることに留意が必要と考えます。
(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)
GDP成長率はマイナスに、個人消費も振るわず
- 2025年第一四半期の国内実質GDP成長率は▲0.7%(前期比年率換算、季節調整値)と4期ぶりにマイナスとなりました。物価上昇により個人消費は同+0.04%とわずかな上昇にとどまっています。今後はアメリカの関税政策による影響が表れるのか注目されます。
- ESPフォーキャスト(5月調査)によると、2025年第二四半期では0.26%とプラスに転じ、以降は0%台で推移する予測となっています。

インバンド人気が高いエリアの店舗賃料は高水準に
- 日本不動産研究所、ビーエーシー・アーバンプロジェクトによると、ラグジュアリーブランドの出店対象エリアやインバンド需要が高いエリアでの店舗賃料は高水準を維持しています。引き続き銀座が最も高くなっていますが、表参道や新宿なども出店需要が高く、賃料の差が縮小しています。
- 商業動態統計調査によると、2025年3月の小売販売額は食料品の値上げ等を受けて42か月連続で前年同月比プラスとなっています。業態別での百貨店では、円高傾向や景気後退への懸念等を受けてインバンドによる高額商品の買い控えがみられたことなどから、2か月連続で同マイナスとなっています。

マンション価格は上昇が継続
- 東京カンテイによると、首都圏の70㎡あたり中古マンションの平均価格は、2025年4月では5,535万円(前年同月比+20.2%)と上昇が継続しており、2024年夏頃より上昇傾向が強くなっています。引き続き、都心部で上昇率の拡大傾向がみられており、東京都区部では同35.3%、さらに都心6区では同38.6%とエリア全体をけん引しています。
- 不動産経済研究所によると、2024年度の首都圏の新築分譲マンション平均価格は前期比+7.5%となる8,135万円と資材価格や用地取得費の高騰などの影響もあり、4年連続で最高値を更新しています。一方、初月契約率は66.8%と2年連続で目安となる70%を下回りました。

オフィス市況は好調が継続
- 三幸エステートによると、東京都区部の2025年4月の平均空室率は3.28%(前年同月比▲1.36ポイント)と改善が進んでいます。また、募集賃料も上昇傾向が継続しており、足元では前年同月比で22か月連続での上昇となっています。
- 引き続き人材確保等を目的とした需要を背景に、どの規模帯のビルにおいても空室率は低下しており、二次空室も大きくはみられていません。また、今年に予定されている新規供給の大部分は竣工済みであり、今後も引き締まった需給環境が継続することが考えられます。

【Market TOPICS】東京圏の地価公示

(出所)国土交通省

(出所)国土交通省
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