不動産のオフバランス化で考えるべきポイント

コロナ禍でも堅調だった企業の不動産取引

CRE戦略を考える上で、しばしば話題に上るのがオフバランス化。オフバランス化とは、資産や負債などをバランスシートから切り離すことで、CRE戦略においては、減損(値下がり)リスク回避や保有資産の効率的な活用を目的として、不動産をバランスシートから外すことによる財務改善を指します。

製造業を筆頭に、日本企業のバランスシートに占める不動産の比率は総じて高く、上場企業であればROA(総資産利益率)やROIC(投下資本利益率)などの経営指標向上が株主などのステークホルダーから強く求められています。非上場企業であっても自己資本比率向上による企業評価改善など「持たざる経営」がもたらすメリットは大きなものです。

主要不動産取引は堅調(投資主体別取引額)

こうした経済情勢から、コロナ禍にあっても日本の不動産取引は堅調です。上のグラフのように、リーマンショック(2008年)後の10年で日本の大型不動産取引は2倍の規模にまで拡大しています。また昨今では、単に売り切りではなく、拠点の移転を伴わずオフバランス化を実現するセール&リースバックという手法を採る企業も増えています。

オフバランス化の際に検討すべきことは?

よく誤解されがちなのですが、オフバランス化は、ただ単に「持たざる経営」を目指すということではありません。CRE戦略は、企業はどの不動産を保有し、どの不動産を処分するのかを精査し、不動産の最大限の有効活用を目指すものなのです。

その際には、不動産の使用価値=その不動産を活用することで生み出される収益やキャッシュフローはどの程度あるのか、そして、売却した場合の市場価値はいくらなのか、などを検討しつつ、戦略を立てていく必要があります。

A:企業が使用することによる価値も、市場価値も、ともに高い資産→使用価値と市場売却価格を精査し、保有するかどうかを検討 B:企業が使用することによる価値は高いが、市場価値が低い資産→保有し継続使用するべき資産 C:企業が使用することによる価値も、市場価値も、ともに低い資産→保有リスクを考えた場合には対処を検討すべき資産(ただし売却は時間を要す) D:企業が使用することによる価値は低いが、市場価値が高い資産→Aへの引き上げや売却等、優先的に対応を検討すべき資産

製造業を例に挙げると、地方にある製造拠点は事業活動における重要度は高いものの、市場価値は低いため、従来通りの活用を継続すべき資産といえます。一方で、創業の地というだけで売却することなく、駐車場などで暫定利用している都心部にある不動産は、企業活動における重要度は低いが、市場価値が高い資産といえます。これを上のマトリックス図で説明すると、地方の製造拠点はB、創業の地の駐車場はDに該当します。この駐車場物件は、CRE戦略の策定がより必要となる対象不動産となります。

使用価値の低い不動産(マトリックス:D)への対応

自社の所有不動産すべてを前述のマトリックスに当てはめたとき、「市場価値は高いが、使用価値は低い」(マトリックスにおけるDエリア)に該当する不動産はどうすればよいのでしょうか。

大きな方向としては、「使用価値を上げる」(マトリックスにおけるAエリアに引き上げる)と「売却する」の2つの選択肢が考えられます。

本業で使用する不動産の使用価値が低い場合、その物件がポテンシャルを十分に発揮できていないことが理由として考えられます。例えば、躯体や設備が老朽化して業務上の非効率が発生している、事業の変化やリモートワークの浸透などの理由により空きスペースや空きフロアが多い、などといった状況です。

このような不動産について「使用価値を上げる」ということは、建替えにより建物を刷新したり、空きフロアを賃貸できるように改修する、などといった施策が考えられます。

一方、必ずしも自社で所有する必要がない不動産である場合、「売却する」という選択肢も採り得ます。その不動産を売却し、自社は外部の賃貸物件にテナントとして入居したり、売却した物件そのものにテナントとして居続ける(セール&リースバック)などの選択があります。そして何よりも、不動産を売却した資金を、今投資すべき分野へ投下することで、業容の拡大や収益力の強化を狙うことができます。

「使用価値を上げる」のか「売却する」(他へ投資を振り向ける)のかは、それぞれ実施した場合の資本効率を比較して決定していく必要があります。なお、不動産の売却によりテナントとしての賃料負担が生じる場合、それも加味した比較となることに注意が必要です。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年2月17日時点の内容となります。
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