多様な従業員に安心して長く働いてもらうための年金制度とは?

日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少傾向にあるため人手不足に困っている企業も多いでしょう。また、新興企業においては、優秀な人材が自社に興味を持ってくれたものの、企業規模がまだ小さく、将来に不安を感じられて入社を敬遠されてしまうという悩みを抱えている人事担当者もいるのではないでしょうか?

これからの時代は、どのような企業であっても、性別を問わず、さまざまな年代の従業員が働きやすい環境や制度を整え、従業員の将来も考えることが、企業としてのアピールポイントとなり、長期的な人材確保につながるでしょう。そこで検討したいのは、企業年金制度です。

多様化する働き方

日本型雇用システムである終身雇用は右肩上がりの経済成長を前提としており、現在は年功序列制度の廃止などを伴いながら、そのシステムが崩壊しつつあると言われています。キャリア教育支援NPOエンカレッジとRECCOOが共同で行った2021年卒業予定の大学生・大学院生対象のアンケート(※1)によると、「就職活動で大企業とベンチャー企業のどちらを志望するか」という問いに対し、「大手企業のみ志望」と「主に大手企業志望」が合わせて55.8%ですが、「主にベンチャー企業志望」は35.9%にのぼりました。しかし、ベンチャー企業でやりたい仕事ができるからといっても、安心して働ける制度や環境を提供しない企業は選ばれない可能性は十分あります。

また、女性や高齢者の働く割合が増えています。厚生労働省が発行している「令和2年版厚生労働白書」(※2)によると、共働きを選ぶ夫婦は1989年が42.3%だったのに対し、2019年は66.2%と、20%以上増加しています。高齢者も再雇用や定年延長により、従来の定年である60歳を過ぎても希望すれば働き続ける事が可能となっています。また、1990年半ばから始まった労働市場の規制緩和の影響も引き続きみられ、総務省の「労働力調査」(※3)では、15歳以上人口に占める就業者の割合は増加傾向にあります。つまり、老若男女さまざまな人が働く社会状況となっています。

あなたの会社のタイプは?従業員に報いる年金制度設計

従業員を雇うということは、従業員の今の生活だけでなく、将来も引き受けなければなりません。従業員に合った年金制度を整備することは、幅広い世代へのアピールポイントにもなります。ここでは従業員の声に合わせた設計例を見ていきましょう。

設計例1:人材流動性が高い業界〜ゲーム会社A

社長の声「優秀な人材を他社に奪われたくない。福利厚生を充実させて定着を図りたい」

ベンチャー企業であるゲーム開発業者A社では中小企業退職金共済制度を利用していましたが、掛金が画一的で、早期退職者の掛金が掛け捨てになる点などを踏まえて見直しを行い、給与テーブルに沿った掛金拠出ができる企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入。ゲーム業界は人材の流動性が高く、優秀な人材は奪い合いでもあるため、役職に応じた手当も充実させました。給与の体系の見直しや企業型DC導入を行った結果、他社に比べて従業員の定着率も高まっています。

設計例2:非正規従業員が多い企業〜サービス産業B社

パート従業員の声「非正規でも年金に入れると聞いた。老後が不安なので入れると嬉しい」

B社では子育てを終えた女性パート従業員が長く勤めていますが、近年では新たな人材確保が難しくなってきていました。人材確保の一環として、企業年金導入の検討を開始したB社。「同一労働同一賃金」という世の中の動向もあり、正規従業員・非正規従業員という雇用形態に関わらず企業型DCを利用できるようにしました。これにより従業員の定着率も上がる結果になりました。

設計例3:従業員が高齢化している企業〜昔ながらの中小企業C社

50代従業員の声「定年まで辞めるつもりはないし、60歳を過ぎても元気な限り働き続けたい」

C社は高年齢の従業員が多く、定年延長や再雇用の制度改定が検討されました。それに伴い、退職金制度を改定。給付水準が低い退職一時金制度に企業型DCを上乗せする形で導入(退職給付制度増額)することにしました。50歳以上の従業員は退職一時金との選択制とすることで、高齢従業員のニーズも担保しました。

年金制度の改革により、年金には多様な選択肢が生まれています。会社によって従業員の年齢構成や正規・非正規比率は異なりますが、それぞれの会社に合った年金を設計することが可能です。中小企業ではいまだ退職一時金のみの制度が多く見られ、企業型DCの導入は人材獲得のアドバンテージにもなり得ます。選ばれる会社になるため、独自の年金設計を検討してみてはいかがでしょうか。

企業年金の導入・設計事例は、こちらの資料でも多数ご紹介しています。

※1 RECCOO「21卒574名就活状況アンケート速報」
※2 厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」
※3 総務省「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果」

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

【該当するSDGs目標】

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年7月28日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。