「公的年金だけでは老後資金をまかなえない」という考えは、多くの国民の間で定着しつつあります。創業社長の時代から、従業員の高齢化や退職金の給付設計見直し、福利厚生をどう行っていくかという課題はありつつも、なかなか取り組めていなかったのが実情かもしれません。二代目に代わった今こそ課題に取り組むタイミングです。昨今、多くの企業で導入が進み、加入者数も増えているのが企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)です。企業側、従業員側ともに税制面で優遇されるメリットが大きい年金制度で、少子高齢化の中、人材確保につながる福利厚生としても注目されています。特にベテランの従業員にも長く働いてほしい、これから若い人材を積極的に採用したいと望む二代目経営者なら知っておきたい制度です。
人手不足対応へ企業の魅力度アップは不可欠
近年、中小企業を中心に人手不足は深刻化しています。背景に少子高齢化と人口減少があることは言うまでもありません。日本は世界の中でも急速に少子高齢化が進行している国の一つです。内閣府が発行する「令和2年版高齢社会白書」(※1)によると、国内における15歳未満の人口比率は1970年には24%ほどでしたが、2019年には約12%にまで落ち込み、2030年に約11%、2060年には約10%まで低下すると予想されています。
少子化は、将来労働を担う人材の減少を意味します。実際、15歳~64歳のいわゆる生産年齢人口は1995年をピークに減少の一途です。
必然的に人材獲得競争は激しくなり、人気に陰りが見える業種や同業他社と比べ魅力が下がる企業は取り残されていきます。経営者にとって「選ばれる企業」になるべく、職場環境や福利厚生を整備し、企業の魅力を高める努力は必要不可欠。従業員の将来を資産形成の面からサポートする企業型DCは意義ある選択肢となり得ます。
資産形成を後押しする企業型DC制度
企業型DCは、従業員の専用口座に毎月掛金を積み立て、加入者である従業員自らが運用して資産形成を行う制度です。この口座は年金専用口座なので、資産は原則60歳まで引き出すことができませんが、掛金に所得税・住民税が課税されず、運用で得た利益が全額非課税になるなど税制上の優遇措置があります。老後に向けた資産形成に有効な制度と言われるゆえんです。
運用成績によって従業員が将来受け取れる年金額が増減します。このため、企業型DCを導入した企業は、従業員向けの投資教育を実施し、安定的に資産形成するための投資のノウハウや運用知識を学習する場を提供することが求められています。
企業型DCに加入できる従業員は原則60歳未満(厚生年金加入者)で、これまでは企業が規約で定め同じ企業で引き続き働く場合に限り65歳未満まで加入できました。しかし企業の高齢者雇用に対応するため、2022年5月から70歳未満(同)まで加入が可能になります。高齢の従業員が多い企業でも導入検討の余地があり、従業員同士の不公平感が軽減されるでしょう。
通常、掛金は会社負担で拠出しますが、新たな負担が難しいという企業もあるでしょう。この場合、現在実施中の退職金制度から一部を移行する方法や、給与の一部を掛金に充当することを従業員に選択してもらう方法があります。これらは、支払いを約束している退職金や給与から移行するため、企業の負担が増えないように実施することも可能です。さらに給与から移行する場合には、従業員は掛金に持ち込んだ分だけ給与は下がりますが、その分毎月の社会保険料負担(会社負担・本人負担等も)が軽減されます(※)。(※)社会保険料負担が減少する分、将来の社会保険給付額(老齢厚生年金・雇用保険給付等)も減少する可能性があります。
多くの企業型DC導入メリット
企業型DCのメリットを導入する企業側から見てみると、資金繰りの安定や節税効果など、経営面でのメリットや企業イメージの向上により採用活動に好影響となることがあげられます。企業側のメリットのほかにも、導入までの流れやよくある質問をこちらの資料にてご紹介しています。ぜひご覧ください。
従業員を大切に考えている証
もちろん、創業社長は創業社長で従業員を大切にしていたでしょう。しかし、時代は変化しています。二代目社長として、制度という目に見える形で従業員を大切にしていることを示すことも必要です。高齢化が進む従業員も今はまだ若い従業員も、不安なく老後を過ごせるよう資産形成を後押しする企業型DC制度は、企業が従業員の暮らしを大切に考えている証と言えます。
資産運用は従業員の自己責任です。しかし、制度を活用することで従業員の金融リテラシーを高めることは豊かな生き方の実践につながり、さらには優秀な人材の確保、定着、生産性の向上にも結び付くのではないでしょうか。人材が流動的な現代だからこそ、働き手の未来に寄与する企業型DCは導入する利点が大きいと言えるでしょう。
企業型DC制度の導入をご検討の場合は、りそな銀行にご相談ください。
※1 内閣府 「令和2年版高齢社会白書」第1章 高齢化の状況(第1節)
企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。