【SDGsインタビュー】株式会社ファーベスト 〜中堅・中小企業がSDGsに取り組む意義とは〜

特殊繊維原料の素材メーカーである株式会社ファーベスト。当社が取り扱うセラミック特殊繊維原料:光電子®は保温効果に優れ、スポーツアウトドア等の高機能製品に活用されている。販売先が環境配慮素材を求める中、2019年より本格的にSDGsを経営方針に落とし込み、事業規模でSDGsへの取り組みを開始。SDGsに取り組むきっかけや取り組みの効果、中堅・中小企業がSDGsへ取り組む意義について代表取締役社長、長谷享治氏と若手社員(各チームリーダー)に話を伺った。(取材日2022年5月17日)

SDGsに取り組むきっかけ

SDGsへの取り組みを開始されたきっかけについてお聞かせください。

株式会社ファーベスト:長谷社長(以下、社名省略)私が初めてSDGsをワードとして聞いたのは2017年頃でした。その時はまだ何となく言葉としてフワッと聞いているだけで、実際に私たちの事業にどう落とし込んでいくかは全く考えていませんでした。私たちの素材のほとんどが、アパレル製品やスポーツアウトドア製品等、様々な用途で使っていただいていますが、2019年にアパレル業界が与える環境負荷が大きいことを知ったことがSDGsへの取り組みを始めるきっかけでした。
実はコロナ禍でもアパレル業界が世界で2番目に環境に負荷をかけている産業と言われていて、年間9,000万tの繊維素材が世界で消費されていると聞きました。年間9,000万tと言っても全然ピンとこないのですが、実はこの20年で2倍も消費量が増えています。9,000万tはとてつもなく大きな数字だとは分かるのですが……Tシャツに換算してみたんです。そうすると、なんと4,500億枚。ただ4,500億枚って言われてもなかなかピンとこない。日本に置き換えてみると、日本人が約1億2,000万人いて、毎日10枚Tシャツを買って10枚捨てる、それを365日繰り返すと大体4,500億枚ぐらいになります。
私たちの携わっている繊維がこれだけ多く、世界に負荷をかけているという現状を知りました。私たちのビジネスでは、繊維の機能素材を取り扱っていてお客さまに評価をいただいているのですが、このままいくと私たちのやっているビジネスって世の中に必要とされなくなる。このままどんどん環境に負荷をかけているビジネスは絶対に今後成り立たないと考えた時に、ここでしっかりと環境に配慮した事業に転換していかないと5年後私たちのビジネスは無くなってしまう、という強い危機感を持ちました。
コロナで本当に世の中が大きく変化したと思っていて、世の中の人たちが今まで以上に環境であったり、私たちを取り巻く自然に対してすごく意識が向いているなと感じました。コロナ前までは2030年までに弊社商品の80%を環境配慮素材にするという数値目標だったのですが、コロナのタイミングで5年、10年このスピード感が速くなったということを実際に感じたので、計画を5年早めて2025年に80%という数値目標に切り換えました。

SDGsへの取り組みにおいて外部環境への対応(リスク)や新たなビジネスチャンスという2つの観点についてお考えをお聞かせください。

長谷社長実際に、私たちのお客さまが本当に環境に配慮した素材をどんどん求めているっていうのもありましたし、同時にさっき私が申し上げた「このまま行くと私たちの事業が絶対成り立たない」という強い危機感があったのでその両輪ですね。外部的なリスクと、いち早く私たちが取り組むことによっていろいろなチャンスが生まれてくるという意味で、SDGsを本当にしっかり事業の中に取り込んでいくことがすごく大切だと感じましたし、それをやることによって絶対に自分たちが成長できるという、そこは確固たる自信というか、確信がありました。

SDGsへの取り組み開始方法

当初、どのように取り組みを開始されましたか。

長谷社長2019年あたりからSDGsを本格的に取り組んでいこうと思いました。私たちが毎年出している経営計画書の中にも2019年からSDGsに対する取り組みの方針を経営目標として入れ込みました。でも、その時点で具体的にどういうプロセスで、どのように社内に浸透させていくかは答えが見つかっていませんでした。
そのような中ありがたかったことに、私たちの事業をサポートしてくださるりそな銀行さんを通して、りそな総研さんのコンサルティングを紹介してもらいました。当時はまだ社員10名前後でしたので、正直言ってSDGsに人をかけていろいろなものをゼロから立ち上げるということが難しかったです。そこはりそな総研さんの力をうまく借りて一緒にベースを作り上げていきました。偶然かもしれないですが、非常にありがたいタイミングでご縁があったと思っています。でも、そういう偶然も自分たちがこういうことをやっていきたいという思いがあったからこそ、その時にりそな銀行さん、りそな総研さんとのご縁に繋がったのだろうなと強く感じています。

当初から社員のみなさまを巻き込んでいかれたと伺いました。みなさまを巻き込んでいくことの意義についてお聞かせください。

長谷社長まずSDGsに関する方針を経営目標の中に文言として盛り込み、そこにしっかりと数値目標を入れました。最初は『2030年までに80%以上の素材を環境配慮型のものに切り替える』という大きな目標をあえて立てました。その時点で本当に目標を達成できるか正直言うと分からないところもあったのですが、それでもまずは数値目標で分かりやすく明確に伝える、丁寧に伝えていくことが重要だなと感じていました。
私たちの事業としてSDGsへの取り組みを持続させる為に、一番重要だなと感じたことは全社員でこの活動をやっていくこと。でも、どうやって全社員を巻き込んでいくかがすごく課題だと思いましたし、悩みました。そこでありがたかったのが、りそな総研さんのコンサルティングでした。最初に全社員に対してヒアリングというかアンケートしてくださったりして、そのアンケート結果やヒアリング内容をもとにどのようにチーム構成を考えていくのか、どういう分野に私たちとして取り組んでいくかを一緒に相談・ディスカッションできたというのが一番よかったのかなと思います。それで今のSDGsへの取り組みの形が出来たかと思います。
でも、その時点で私がトップダウンで推進している中で、実際に社員がどう感じていたのかは後ほど社員に直接聞いてみてください。

社長からSDGsへの取り組みを開始するぞと言われた際の率直な感想をお聞かせください。

営業部:大島さん当初はやっぱり右も左も分からない状況の中で、どのように進めていけば良いのかという点が、自分の中で難しかった部分です。そういった中でも、りそな総研さんにSDGsとは何かという基礎的な部分から教えていただいて、自分の中である程度内容が分かって、SDGsを弊社の事業に落とし込んだとして、どこが国連の定めた項目とリンクしてくるのか、ということからディスカッションを進めていきました。検討が進み、今のプロジェクトへ落とし込みができたところで、「分からないが分かる」という段階になると、自然と達成感に繋がり、実施する為のモチベーション、原動力になってきたと思います。最初はどちらかというと、ネガティブな印象だったのですが、理解が進むにつれてモチベーションや前向きな取り組みに繋がっていきました。また社長から最初に「こういった思いでSDGsをやっていくぞ」というところを明確にしていただいたので、実行しやすかったところがあったと思います。

SDGsへの具体的な取り組み内容

SDGsへの取り組みについて、3つのプロジェクトチーム(以下PT)を組成されたと伺いました。それぞれのPTの取り組み内容についてお聞かせください。

営業部:鈴木さん私のチームは『チームRONDO(ロンド)』という名前で、SDGs目標の12番と17番『つくる責任とつかう責任』と『パートナーシップで目標を達成しよう』について活動を行っています。具体的な活動の1つとしてJEPLAN(旧:日本環境設計)さんの「BRING(ブリング)」という衣類製品の回収活動がありまして、そちらのプロジェクトに参加しています。今、社内にもあるのですが、衣類回収ボックスを設置し、そこにお洋服を入れていただく、そのお洋服を工場に送って分別をし、ポリエステル製品は再生ポリエステルに戻し、その他のお洋服はJEPLANさんのサプライチェーンで素材に応じてリユースやリサイクルをしています。その新たに再生されたポリエステルでJEPLANさんがお洋服を作っています。また、私たちは素材を販売している会社なのですが、環境配慮型素材の開発もどんどん進めています。5月には環境配慮素材で作成した光電子®のアウター用中綿の展示会を開催しました。今後は回収だけではなく、私たちの素材も2025年までに80%以上を環境に配慮したものを目標に向かって推進してまいります。

提案活動をする中で、働きかけていかれた外部企業の反応はいかがでしたか。

営業部:鈴木さん皆さんの反応はネガティブというより、そういう活動ってしていかなきゃいけないよねとポジティブに捉えてはいただいています。提案する上では、SDGsに前向きに取り組んでいる会社さんを中心に提案させていただきました。そうすると、目線が近い為、すんなり受け入れてくださって会社全体で取り組んでいただいたという印象があります。

各PTのリーダー 左から 比嘉さん 舩木さん 鈴木さん

舩木さん私のチームは、『チームゆるり』という名前で、『働き方改革』と『社員と会社がより豊かに』をテーマに活動しています。活動内容は、主に弊社の社員がより働きやすくなることを考えています。現在行っていることは7項目ありまして、感染予防対策、災害消防計画を作ったり、業務改善やマニュアル化を行っています。新入社員が多くなってきているので、社内教育にも力を入れています。資格取得支援であったり、講習受講にも力を入れていて若い人が学びやすい環境をつくれるように活動しています。

比嘉さん私のチームは『光電子®のある生活』という直球な名前でして、SDGsの項目は3番『すべての人に健康と福祉を』です。活動内容はGDVという人の心身の状態を可視化し物性も調べられる機械を用いて、光電子®の「付加価値を追求すること」と皆さまに「健康ソリューションとしての新たな価値提供」の検討を行っています。

SDGsへの取り組みによる効果・コスト

SDGsへの取り組みを実施していく中で、社員のみなさまの変化や成長についてお聞かせください。

長谷社長今説明してくれた3人のチームリーダーがちょうど同期の2020年卒で、実は入社2年目の時にリーダーをお願いしています。あえて若い社員にチームリーダーをお願いして、こういうプロジェクトを1つやることでとても成長に繋がると思っています。そこでしっかりPDCAの回し方を学んで、それを業務にも活かしていくことが出来る。入社2年目でチームリーダーですので、チームメンバーは全員先輩です。ですので、うまくSDGsを若い社員とベテランの社員とのコミュニケーションの潤滑油にしています。若いチームリーダーを、やっぱりベテランメンバーは支えなきゃいけないってことで、そこでコミュニケーションが生まれてきました。大きな変化としては、SDGsの活動を通して、若い社員がよりイキイキと働きやすい環境づくりに繋がっているのかなと思います。

私たちとして、新しい素材開発もしていかなきゃいけないとも思っています。しっかりと情報発信をしていくことによって、先ほどJEPLANさんといった具体的なパートナーのお名前が出ましたけど、それも私たちがSDGsに取り組んでいなかったら絶対にご縁が生まれなかった会社ばかりですよね。私たちとしてこういう風に2025年までに80%以上の素材を環境配慮型のものに切り換えていこうと言っていますが、1社では絶対にできないのでどう周りを巻き込んでいくかが重要。こういうことって不思議なことに、発信していくと自ずとそういう会社が集まってくるというか、ご縁が繋がっていく。やっぱり世の中で必要とされるものに対して取り組んでいこうという思いは、必ずそこからいろいろなご縁に繋がってくると思います。もちろんJEPLANさんだけではなくて、昨年私たちは、Bioworks株式会社という新しい繊維素材を開発したベンチャー企業に出資をさせていただいて、一緒に取り組みをさせていただいています。
環境配慮型とかリサイクル素材って、日本もそうですけど世界中で多くのものが生まれ始めています。5年後、何が始まるかというとリサイクル素材の価格破壊、今度はもっと安いものがどんどん世界から入ってくる。そうなると、また日本の繊維産業が、過去衰退していったように価格でどんどん疲弊してしまう。そうならないよう私たちが得意とする機能素材と環境配慮型素材を上手くブレンドすることによって、他にないものを提供していく。それによって世界に今後発信出来る可能性もありますし、そういう意味でこのSDGsや環境配慮型っていう言葉は私たちを成長させるキーワードになってくるなということを感じています。

SDGsへの取り組みを開始されて、事業への影響はありましたか。

長谷社長とても良い影響があったと思います。新しい機能素材を開発して、その展示会をちょうど今この場所でやっているんです。そういったことにも繋がってきましたし、やっぱりこれから環境配慮型素材にどんどん置き変えていかなきゃならないということを社員が意識として持ってくれているので、新しい素材ブランドを作っていこうとなりました。こういった展示会は、去年まで私たちの会社独自で1回もやったことがなかったのですが、新しくチャレンジしていこうと思いました。やっぱり私だけじゃなくて、社員1人1人に意識づけが出来ているというのは大きいのかなと感じています。

また、去年12月に、女性メンバーが中心になって新しくブランドを立ち上げました。フェムテック市場で、私たちの機能素材、あとは環境配慮型素材をしっかりと提案していこうというものです。こういったチームが生まれたというのは、やっぱり良い影響、良い効果が出ているなということを感じています。

SDGsへの取り組みに対して発生するコストに対してのお考えをお聞かせください。

長谷社長特にこの数年間、コロナでものすごく厳しい環境下で、コストを出すことはリーダーとして躊躇するところで判断にとても迷いました。コストを使う以上売上・利益へどう繋げていくかということは重要です。でもSDGsってコストを掛けて、それが今年来年売上・利益に繋がるかというと、そんな甘いものではない。やっぱりリーダーとして持たなきゃいけないのは、どの尺度でそのコストを考えるか。もちろん、今年使ったコストを今年回収するんだっていうとなかなか判断に迷うところもありますけど、5年10年っていうスパンで見て、私自身はSDGsをコストではなく、投資だと思っています。今SDGsをやることによって必ず、私たちの5年後10年後に繋がっていく。別に売上・利益だけじゃなくて、今回こうやって若い社員達が生き生きと働いてくれている、これもすごく大きな投資効果だと感じています。だから、コストは何を対価として見るかっていうところと、尺度をどういう風に持つかってすごく大切なことかなと思います。

SDGsへ取り組む意義

上場企業や大企業だけではなく、中堅・中小企業がSDGsへの取り組みを行う意義についてのお考えをお聞かせください。

長谷社長正直言うと、中小企業だからこそ、私たちのような社員数10数名の会社だからこそ、この活動に取り組む意義ってものすごく大きい、むしろ、大企業以上に大きいと感じています。同時に活動内容をいかに発信するかが、これから本当に重要になってくると思っています。もし中小企業がSDGsの取り組みをやっていなくて発信もしていなければ、一生知りえずに終わる会社がたくさんあると思います。こういうことを私たちとして真剣に取り組んでいる、こういうことをしっかりと外に向けて発信する。そうすることによって日本国内だけではなくて、もしかしたら世界の今まで絶対出会えなかったような会社と出会えてくるかもしれないという、大きなチャンスに繋がると思っています。1社で何か良いことって出来ないので、いかに横の連携というか、みんなを巻き込んでいろいろな良いことを進めていくかが重要。私たちの事業も、絶対私たちだけ、私たちのグループ会社だけでは大きな効果・影響を出すことは難しいですが、それを知っていただくことによって、いろいろな人たちを巻き込んでいく。すごく小さな1歩でも大きな1歩に繋がっていくと思っています。

これからSDGsへの取り組みをどのように発展させていきたいかお聞かせください。

長谷社長今は「SDGsをやるぞ」とか「SDGs!SDGs!」って言ってやっているのですが、これが将来当たり前というか、別に意識しなくてもすべての事業に落とし込まれていたら良いなと思っています。SDGsとか国連の定める目標数値などいろいろなことが、自然体でさらっと出来ていたら1番美しいなと感じますね。それが私の最終的なゴールであり、しっかりと事業活動にも繋がっている、数字にも繋がっていて私たちの会社が永続できるようになっている、ということが一番の理想の姿だと感じています。

銀行に期待すること

SDGsへの取り組みに対して銀行への期待や求めるサービスはございますか。

長谷社長私たちに無いものは何かというと、やっぱり中小企業であるが故のネットワーク。銀行のBANKってこれから1番重要なのは、マネーのBANKではなく情報だと思います。会社と会社をつなぐことが大きな意味を持つと思っていて、会社のいろいろな情報や会社の繋がりといった情報は銀行が持つ有意義な資産だと思っています。今まで私たちが直接知ることが出来なかった、直接取引が出来なかったところへ私たちの取り組みを知っていただく機会をどんどん作っていただければと思います。我々の思いとか良いことを、是非一緒にりそな銀行さんの力を借りて進めていければと感じています。

株式会社ファーベスト https://firbest.co.jp/1989年創業。特殊繊維原料の素材メーカー。当社が取り扱うセラミック特殊繊維原料:光電子®は優れた保温効果に加えて、コンディショニング機能、リラクセーション作用等の機能を有する。光電子®は世界10ヶ国で特許を取得しており、スポーツアウトドアアパレルを中心に、寝具や女性ケア商品等、幅広い分野で利用されている。『素材で世界を変える』をスローガンに、“2025年までに80%以上の素材・製品を環境に配慮したものに置き換える”という目標を掲げる。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

【該当するSDGs目標】

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年7月1日時点の内容となります。
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