【SDGsインタビュー】株式会社フォレストコーポレーション~地域密着建設会社が取り組むSDGsとは~

長野県伊那市に本社を構える建設会社の株式会社フォレストコーポレーション。『工房信州の家』ブランドにて、長野県産材を使った家づくりや土地活用事業を手掛ける。近年では、企業向けへ信州・軽井沢に企業別荘兼オフィスを提案する『サードオフィス事業』を開始。外国産木材ではなく、国産木材・長野県産木材を使用した家づくりへの思いや「働く環境の自由な選択」を提案するサードオフィス事業の社会的意義について代表取締役社長小澤仁氏、サードオフィス推進本部マネージャー柄沢忠祐氏に話を伺った。(取材日2022年6月22日)

*SDGsメモ:外国産木材は化石燃料を消費し主に船舶で輸送されてきます。その為、国産木材と比較して外国産木材は環境負荷が大きいと言われています。国産木材の使用は、環境面に加え、地域活性化にも繋がっていくと考えられています。

国産木材を使った家づくりへの思い

国産木材、長野県産木材を使っての家づくりに至るきっかけや思いをお聞かせいただけますでしょうか。

小澤社長
本格的に住宅事業を始めるにあたって、全国に住宅の視察に行きました。すると、ほとんどの住宅会社さんが外国産木材を使って家を作っていました。長野県に戻って県内の住宅会社の話を聞いても同じような状況でした。長野県は山に囲まれたところで、県の全体面積の約8割が山なんですよね。こんなに山がいっぱいあるのに、どうして信州の木を使って家を作らないんだろうという疑問が生じました。そんな時に、新しく展示場を作るという計画があり、設計をお願いする際に素晴らしい先生に出会いました。その先生が「地元の木を使って家をつくろうよ」とおっしゃってくださったのが長野県産材を使用した家づくりに取り組むきっかけでした。
実は当時長野県産住宅材の流通ルートが全く無くて、木材市場から個別で買って製材所で木を引くようなところから始めなければならないスタートでした。当初は年間10棟くらいだったので個別対応で良かったのですが、年間30棟、40棟になっていくうちに長野県産材のサプライチェーンの確立が必要になってきました。長野産木材を使用した住宅をどんどん作っていきたいという思いに共感いただいて、規模の大きな材木屋さんと一緒に天然乾燥のストックヤードを建てたり、人工乾燥機を買ったりして長野県産の住宅材を供給していく取り組みを始めました。20年近い取り組みの甲斐あって、現在、年間100棟以上の住宅を着工し完工出来ています。住宅1棟あたりに占める信州の木の割合が大体85%で、残りの15%も国産木材です。ですから、外国産木材は一切使わない家づくりをしています。

天然乾燥ストックヤード
天然乾燥ストックヤード

国産材を使用する取り組みをしていたものですから、昨年来のウッドショックが全国の住宅業界を襲いましたが、当社ではウッドショックによる着工ストップは全くありませんでした。20年前から取り組んできた結果、サプライチェーンが崩れず今日に至っていることは非常に良かったと思っています。今回ウッドショックによって木材の価格が上がってきていることは少し事業には痛いですけども、それよりも木についての関心が高まって、やっぱり地元の木で家をつくろうという機運が高まってくることが大事なことだと思っています。私としては、そういう付加価値の高い住宅をもっと作っていきたいなと思います。

国産木材、長野県産木材を使っての家づくりをお客さまに実感いただく取り組みをされていると伺いました。

小澤社長
私たちの家づくりの第一歩目に、自分の家の柱になる木を選びに山に出かけるという「選木ツアー」を行っています。月2回ほど「選木ツアー」が開催されていまして、県内外各地から1回あたり6組くらいのお客さまが集まります。家族勢揃いで来られたら山に出かけて、自分の家の柱になる木を選んでその場で伐採をします。樹齢が60年や70年の木をその場で切るわけなので、そんなものを見るのは初めてですし非常に迫力もあります。信州の自然だとか木の命をいただくので、木に対する感謝の気持ちが芽生える瞬間で、中には感激して涙を流される方もいらっしゃいます。ピクニック気分で山に出かける感じでお見えになるのですが、すごく神聖な気持ちになってお帰りいただくことが多いです。信州の自然の恵みから、自分たちの家ができてその家に守られているんだということを、それぞれ皆さん感じ取られて家づくりをスタートします。私たちのお客さまが、信州の自然や自然の恵みにちゃんと意識を向けていただいて、なおかつそれに感謝をしていただきながら、一緒に家づくりができることは非常に素晴らしいことだと思っています。

選木ツアー風景
選木ツアー風景

SDGsへの具体的な取り組み

国産木材、長野県産木材を使用した家づくり中心の事業展開の中でSDGsへの貢献はありますか。

柄沢マネージャー
樹木は大気中のCO2を吸収して肥大成長していく特徴を持っています。木材として建築物に利用することで炭素を長期間ストックしておくことが出来ます。また工房信州の家では「薪ストーブで炎を眺める暮らし」を提案おりまして、静かに炎を眺める事で癒しを感じることが出来たり、暮らしに豊かさをもたらしてくれます。このように木材を建築材料やエネルギーとして利用することは、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性をもっております。
カーボンニュートラルの話だけではなく、SDGsの観点では女性活躍と伝統技術継承にも前々から注力しています。建設会社というと一般的には男性が多いイメージかと思いますが、当社は女性社員が半数以上在籍しており、社内の様々な部署で活躍しております。また大工の高齢化の問題がありますが、大工職として若手の人材を積極的に採用しております。入社後1ヶ月は「フォレスト職人学校」へ入学し、職人としての心得、道具の名前や扱い方など、基礎知識を身に着けます。その後、出向という形で社外の大工親方に出向し、段階的に技能習得を目指します。直接弟子入りするのではなく、社員大工として出向となるので、指導する親方自身のコスト負担が無い分、じっくり丁寧に指導を受けられ成長が早いのが特長です。若手のうちから棟梁として自立できる育成制度です。大工も女性社員が4人おり各々の現場で力を発揮しております。

サードオフィス推進本部マネージャー柄沢忠祐氏
サードオフィス推進本部マネージャー柄沢忠祐氏

新たなビジネスモデル「サードオフィス」

リモートワーク等働き方が多様化していく中での、新たな事業「サードオフィス事業」についてお聞かせください。

小澤社長
コロナ禍になってリモートワークや在宅勤務が当たり前になってくると、多くの企業が本社オフィスを縮小する動きをしています。オフィスの縮小は仕方ないと思うのですが、みんなで面と向かってリアルで会うことの大事さがリモートワークとか在宅勤務で分かったのではないかなと思います。

サードオフィスコンセプト 二つの環境をいつでも自由に行き来する 東京からたった64分で「新・生産性向上」を実現

軽井沢であれば東京駅から64分で軽井沢駅に到着しますので、例えば午前中それぞれリモートでミーティングしても、上手く活発化していない時に、「じゃあちょっと午後軽井沢行くか」と言えば、みんな行けるんです。例えば北海道とか沖縄だと、航空券を取ってどうのこうのってもう1週間、2週間、1ケ月後になっちゃいますよね。ファーストオフィスが東京の本社、セカンドオフィスが在宅勤務時の各自の自宅、みんながリアルで会うときは軽井沢のサードオフィスと、そのようなコンセプトでサードオフィスという名前を作りました。都内の自宅、都内の本社と軽井沢のサードオフィスを簡単に行き来できることがサービスの考え方です。

サードオフィスについて紹介動画がございますので、そちらも是非ご覧ください。
・コンセプト編(https://www.youtube.com/watch?v=WGZXj1RUFP8
・ストーリー編(https://www.youtube.com/watch?v=-YB17EDp02w
※株式会社フォレストコーポレーションが運営するYoutubeへ遷移します。

「サードオフィス事業」の社会的意義についてお聞かせください。

柄沢マネージャー
私は「働き方が変わることで、その人の生き方が変わる」と思っています。そのきっかけの一つがサードオフィス事業です。自然豊かな信州にサードオフィスをリアルに設けることによって、社員同士の関係性を高められると思っています。理想ではあるのですが、サードオフィス事業の社会的意義は、働き方を変える一つのきっかけ、ひいては、より良い生き方やウェルビーイングにも繋がるきっかけになるのではないかなと思っています。
また、行政も話していることですが、やはり関係人口を作っていくことが重要だと思っています。観光止まりではなくて、そこに滞在をして地域の歴史、人々との関係性を築いていく中で「ああやっぱり良いよね」となった人が次に移住を考えられると思います。サードオフィスは軽井沢・信州に滞在するきっかけになるのでそこから関係人口を作っていけたらと考えています。

※関係人口:移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉 総務省HP/関係人口とは|『関係人口』ポータルサイト (soumu.go.jp)

BCPの観点でも「サードオフィス」の引き合いはございますか。

柄沢マネージャー
実際にサードオフィスを建てられた企業さまに選定いただいた理由の1つとしてBCPの観点がございました。軽井沢とか東信エリア(長野県東部)は、活断層が少ないので地震災害が少ないです。また、長野県はぽっかりと山に囲われているので、台風災害が比較的少ないです。そのような立地の特性を含めて事業継続が出来るということで選んでいただいています。

これからの事業展開

今後の事業展開についてお聞かせください。

小澤社長
私どもは長野県内各地で住宅事業を展開しています。住宅会社は大体一つの県を網羅すると、次のエリアを広げていくっていうことで隣の県に拠点を作ったり、或いは東京に拠点を作ったりしていく企業さんがすごく多いです。私もそんなふうに感じたこともあったのですが、何年か前から長野県内へ移住する方々も増えてきましたし、コロナ禍になって移住の方が軽井沢だけじゃなく県内各地に増えていきました。サードオフィス事業で都会の企業さんを信州にお連れする、拠点を作ってもらう事業を始めていますので、私どもは県外に出ていくのではなくて、長野県の良さを都会の皆さん或いは長野県外の皆さんにお伝えして住宅を作っていただいたり、サードオフィスのようにオフィスを作っていただいたりすることを目標にしていきたいと思っています。今まで培ったことを県外に持ってくのではなくて、県内でさらに磨きをかけて、都会のみなさんをお迎えすることに徹していこうと考えています。

りそなホールディングスサステナビリティ推進室から一言

「SDGsと自社の事業・ビジネスモデルをどう結び付けていくか」に悩む企業にとって、同社の事業は様々な示唆に富んでいます。
今求められているのは、「経済的な価値」と「持続可能な社会に向けた付加価値」とを融合させていくことです。この視点で同社の事業を見てみると、「経済的な価値」以外に以下のような価値を様々なステークホルダーに提供していることが分かります。

  • 環境→国産木材の活用によるカーボンニュートラルへの貢献、地産地消による木材運搬で排出されるCO2の削減。
  • 地域→地元で眠っていた国産木材という資源の活用、「信州ブランド」の向上による地域経済の活性化(地元の木材という資源、都市部の人という資源を組み合わせた「地域循環共生圏」の確立)
  • 企業→イノベーティブ・クリエイティブな人材の育成(人材強化)、社内の人と人との「新たな繋がり」の提供(組織力強化)

株式会社フォレストコーポレーション https://www.forestcorp.jp/
1960年創業。住宅建設・販売事業、土地活用事業、サードオフィス事業の3つの事業を手掛ける建設会社。地産地消を前提に長野県産木材を使用した家づくり『工房信州の家』ブランドを展開しており、年間100棟以上の住宅を建設している。近年では、企業向けへ信州・軽井沢に企業別荘兼オフィスの建設を提案する『サードオフィス事業』を展開しており、新たな働き方を提案している。

過去のインタビュー記事一覧」はこちらよりご覧ください。

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

【該当するSDGs目標】

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年8月22日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。