2030年の目標達成に向け、すでに活動している企業が増加しているSDGs。もはや普及した概念とも言えますが、「ある程度大きい企業だからできることだ」と、検討することなく避けてしまっている中小企業もまた多くあります。実は、これはとてももったいないこと。新しいビジネスチャンスや企業の持続可能性向上の機会をも、みすみす逃してしまっている可能性もあるのです。
今から始めるSDGs、どうやって?
「環境配慮のため、大企業が外国の生産現場で新規事業を立ち上げた」などの大々的な取り組みは目立ちますが、実はその取り組みもSDGs全体の一部でしかありません。
現在では中小企業の事例も多く、既存事業と地続きの新事業や新規顧客の開拓など、新しい価値創出にもつながっています。また、温室効果ガス削減目標であるSBTの認証取得など、SDGs関連の対応をしていない企業では、新規の取引を断られるといったケースも発生しています。
このように、環境や社会はもちろん、自社事業の持続可能性にも貢献するのがSDGsの取り組みですが、普及度が高まったことで対応していない場合のデメリットも出てきています。そうであっても対応は難しい、というイメージがあるならば、「小さく始める」ことで最初の一歩を踏み出しやすくなるかもしれません。
SDGsを「小さく始める」とは?
ここでいう「小さく始める」とは、SDGsのためだけに規模の大きいことをするのではなく、社会も自社もより持続可能なように、自社が今やっていることで手元に近いところから取り組むことを指します。
1. きっかけを見つめ直す
まずは、自社設立の理念や事業を始めたきっかけを、あらためて見返してみることが大切です。
SDGsをはじめとするサステナブルの取り組みは、事業を通じて何かに貢献するという立志に通じる部分が多いはずです。たとえば、地元のお客様に喜んでもらいたいという思いは、自社の事業があることで生活環境をより良くする、地元社会への貢献につながるものです。社会への貢献、人への貢献、自然環境への貢献など、「自社事業の中で、何かの役に立ちたい」と思えるものが、自社に合ったSDGsの取り組みを見つけるきっかけになります。
そういったきっかけを原動力に、まずは手の届くところから始めてみる、そしてさまざまな知見を取り入れながら徐々に進めていく、という「小さく始める」ことを検討してみましょう。
2. 現在の事業の見直しなどから始める
既存事業の内容を見直すこともはじめの一歩となり得ます。
- 原料調達の見直し:より自然環境に良い材料または調達法はないか、調達の現場は人権に配慮された職場で将来まで安定した調達を継続できそうか、など
- 工程の見直し:周辺環境や、従事する従業員により優しくできる工程か、工数やエネルギーの観点で効率化につながる手段はあるか、など
- 環境の見直し:働きやすい職場環境か、現在の職場環境が原因で非効率が発生していないか、など
こういった見直しができると、既存事業の現状について改めて理解が深まり、改善の余地が見えてきます。コストや改善効果についての計算がしやすくなる点も見逃せません。
3. プラスアルファを取り入れる
また、どうしても事業に必要なことでありつつ、同時にSDGsにも効果的な要素を取り入れることも考えられます。この考え方をSDGsではトレードオンと呼び、事業とSDGs両方の目的達成を目指すものです。たとえば以下のような例が該当します。
- 工場の移転を機にエネルギー使用に伴うコスト削減を検討した結果、工場の再エネ化に舵を切った企業
- コスト削減や老朽化による設備更新の際に、省エネ補助金を活用して省エネ設備に切り替え、脱炭素の取り組みに貢献している企業
両者に共通しているのは、SDGsや環境課題への対応だけを起点とはしていないこと。あくまで事業の改善や効率化のために検討されたことが起点となり、その中でSDGsにも貢献できるようになっています。
このように、「自社の事業の成長や最適化への対応策を考える中で、SDGsへの取り組みも実現する」ことは可能なのです。
既存の省エネ事業を「見える化」した櫻井運輸の事例※
すでに省エネにつながる既存事業がある場合、SDGs基準で見直してみることも検討すべきです。その事業が、何に対して、どのような効果があるかが数値で可視化できます。
見える化した事業:大型冷風扇のレンタル業
- 事業多角化のひとつとしてのレンタル事業だったが、営業成績が伸び悩んでいた
- 産学連携によって冷風扇の実証データを取得、省エネ効果を具体的な数値で可視化
(エアコンの1/10の消費エネルギーで、広範囲の室温を5〜8℃下げられる) - 実証された効果を数値で訴求できるようになり、営業活動に活用
- データに裏打ちされた効果と性能をPRでき、営業成績は徐々に伸長。現在では当初の5倍を数えるほどに成長した。
これは既存事業をSDGsの観点で分析・数値化したことで、省エネ効果がCO2排出量の削減など、SDGsの取り組みに結び付き、売り上げ拡大につなげた具体例です。このように、SDGsの取り組みは、そのために特別なことをするものだけではないことが分かります。
今からでも取り組む意義
このように既存事業の中で見直しをすることで、SDGsの取り組みを実現しやすくなります。「小さく」始めることで、SDGs目標の達成だけでなくランニングコストの削減や仕事自体の効率化、事業の売上拡大に貢献するといった効果が期待でき、企業自身の競争力を伸ばすことにつながります。
環境、社会、そして自社事業への貢献という面で考えると、今からSDGsに準じた取り組みを開始することも遅くはないと言えるでしょう。
今回取り上げた例の他にも、「小さく始める」SDGsは業界・業態によって多様にあります。りそなグループでもご支援しておりますので、お気軽にご相談ください。
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。


