部下が変わる、組織が変わる!  「伝え方」の技術——『世界標準のフィードバック 部下の「本気」を引き出す外資流マネジメントの教科書』より

あなたは部下に、きちんと「伝えられている」と感じていますか? 「注意したいがパワハラと思われないか不安」「Z世代との距離感がつかめない」「反論されると感情的になってしまう」――。今、多くのマネジメント層が、部下とのコミュニケーションに戸惑いを抱えています。そこで本記事では『世界標準のフィードバック 部下の「本気」を引き出す外資流マネジメントの教科書』(安田雅彦著、SBクリエイティブ)より、部下の成長を促す伝え方の基本構造と、タイプ別の実践例をわかりやすく解説します。

世界標準のフィードバック

なぜマネジメントは難しくなったのか

今、日本企業でマネジメントを担当しているビジネスパーソンの方々は、かつて誰も経験してこなかったほど、多様かつ多面的な対応が求められています。「どんなに気を遣って働きかけても、全く予想のつかない反応をするZ世代」や、「何の仕事をしているのか誰も知らない、もうすぐ定年を迎える年上の部下」「現状を相談しても、悪いようにはしないからと、課題に向き合わない上司」「考え方や感情表現の仕方が違い過ぎて戸惑う、多様なメンバー」などの対応に迫られることで、本来であれば誇らしく、自らの成長にもつながる絶好の機会であるはずのマネジメントという役職が「罰ゲーム」とさえ言われるようになりました。

実はこれらの問題は、外資系企業の「フィードバック」の仕方を知り、身に付けることによって解決します。多くの日本企業のマネージャーたちと話をしていると、フィードバックに対する根本的な誤解や不安を抱えていることに気付きます。それは長年培われてきた日本的なマネジメントの習慣や、近年の「ハラスメント」への過度な警戒感が生み出した、歪んだ認識とも言えます。

フィードバックは「評価」ではない

そこで、マネージャーの方々が陥りがちなフィードバックに対する誤認識を紹介しましょう。そもそもフィードバックとは、評価面接のときにだけ、おこなうものではないという前提があります。フィードバックは、日常的に習慣としておこなうべきものです。なぜこの評価になったのかを延々と説明するだけでは、中長期的視点から部下の育成を図ることはできません。強みと伸びしろを織り交ぜながら現状と期待を具体的に明示することが、フィードバックの基本なのです。

そして、マネージャーが抱える大きな不安のひとつが「フィードバックをパワハラだと言われたらどうしよう」ということだと思います。しかし、きちんとしたフィードバックとは、決して部下を委縮させたり不快な気分にさせたりすることを意図するようなものではなく、ましてや上司の溜飲を下げるようなものであってはなりません。

日頃のコミュニケーションの質に気を配ることもなく、仕事の話や注意、叱責ばかりだったりするのであれば、フィードバックを「お説教」だと思われても仕方ないことです。パワハラを理由にするのは、ふだんのコミュニケーション不足が招く自信のなさを昨今の風潮にすり替え、本来上司がやるべきことから逃げているだけではないでしょうか。

加えて、今も残る風潮に、「仕事は習うものではなく、慣れるもの」という考え方があります。徒弟制度によって成り立っていた職人の世界や伝統芸能の分野では確かにそうかもしれません。しかし、このやり方はとうに通用しなくなっており、大変非効率で不確実です。

フィードバックができる場面と機会は、日常の仕事の中に豊富にあります。「言わなくてもわかるだろう」とか、「本人が自分で気付くことが大事」などと思ってはいけません。言わないと通じないのです。だからこそ、こまめなフィードバックが必要です。フィードバックとは成長実感の源であり、無言を通すことは、部下の成長機会を奪っていると認識しなければなりません。

成果を生むフィードバックの三つの視点

フィードバックが単なるお小言や叱責と異なるのは、フィードバックをフィードバックたらしめる構造があるからです。効果的なフィードバックには(1)事実(Example)、(2)及ぼす効果・影響(Effect)、(3)褒める・変更の提案(Congrats・Change)の三要素が必ず含まれています。

たとえば、「職場改善レポート」の件を部下にフィードバックしたいときは、この三要素を入れて伝えます。

ポジティブなフィードバックを伝えるとき
「先日のレポートは、
(1)伝えたい内容がうまくまとまっていて(Example)、
(2)スタッフのみんなも課題がクリアに理解できていた(Effect)ようです。
(3)素晴らしいですね。次回もあのスタイルでお願いします(Congrats)」

ネガティブなフィードバックを伝えるとき
「先日のレポートは、
(1)スライドだけの説明だったために(Example)、
(2)スタッフのみんなが正確に理解できていなくて、少し混乱していた(Effect)ようです。
(3)次回からは、資料を準備してはどうでしょうか(Change)」

文章にしてみれば当たり前のことのように感じますが、実場面だと「スライドだけだったから、みんなわかっていないみたいだぞ」といったように、(3)の変更の提案が抜けていて、問題だけを提示してどう改善したら良いかを伝えない……というように、三要素のうちの一つが抜けてしまうことが多いのです。

「(1)あなたはこういうことをした、(2)それはこういう効果や影響があった、(3)次はあなたがもっと良い成果を出すために、こういうことを試みてはどうだろうか」という構造を意識した伝え方ができて初めて、部下の成長機会に寄与するフィードバックが成立するのです。

タイプ別に見る、部下への伝え方のヒント

フィードバックの実践例として、部下をタイプ別に見たときのフィードバックの方向とヒントを紹介しましょう。

協調性重視の部下の場合
上司「あなたのように、みんなとうまくやれる協調性があるのはすごくいいことです。部のメンバーも、あなたがムードメーカーの役割をしてくれるので、今進行中の難しい案件もスムーズに進めることができています。しかし時折、それぞれの意見を出し合って議論することが必要なことがあります。そのときに自分の意見を出さないでいると、この間のミーティングのように、みんなで悩む時間が増えてしまいますよね。
私も対立することを避けたいタイプなのですが、やはり、多少対立があっても議論は必要です。ですから、おかしいと思ったことは遠慮せずに、『おかしい』と発言してもらいたいです。あなたの働きもあって、みんな信頼関係ができています。あなたの意見でリスクを避けることもできるわけですから、自分の意見をしっかりと表明してみてください」

ネガティブな面に言及する際には「私もそうなんだけど」「私もなかなか実現できていないのですが」など、「あなたを責めているわけではない」「あなただけができないのではない」という言い回しを使うのも、抵抗感を減らすひとつの技術です。

やたら反論してくる部下の場合
上司「今日の中間報告、おつかれさまでした。声もはっきり出ていて、内容もわかりやすかったですよ。よく準備できているのが伝わりました」
部下「よかったです、ありがとうございます」
上司「真ん中あたりで、少し早口になるところがあったので、もう少しゆっくり話すと、より説得力が出たと思います」
部下「でも、それが僕のいいところなんで。あと、時間内に収めようとして早くしゃべったんです。時間の設定が間違っているんじゃないですか。少なくとも僕にはもっと時間が必要でした」
上司「時間配分は全員平等が原則ですよ。時間内に収めるのがルールです」
部下「いや、内容が重要なものは、もっとちゃんとした設定をしてほしいですね。言いたいことの半分も言えなかったのに、時間もなにもないですよ」
上司「熱心に取り組んだことはよくわかります。それを生かす発表の仕方を次回までに検討しましょう」
部下「こっちがルールに合わせろって言うんですか。ルールのほうが間違ってるでしょう」
上司その発言は受け入れられません。組織が設定したルールを否定するのは、この会社を否定するということですよ」

いちいち反論しないと気が済まない部下には厳しめのフィードバックが必要になります。話は全て聞くけれども、受け入れられない部分はNGだと伝えます。また、売り言葉に買い言葉のような、感情的なディスカッションにはあまり付き合わないことも重要です。部下の意見は尊重する一方で自分は上司であるということを忘れず、そのスタンスをはっきりと相手に示してください。

本書の要点

● フィードバックは「評価」ではなく「日常の対話」

フィードバックは人事評価の場だけのものではない。日々の仕事の中でこまめに伝えることが、部下の成長実感につながる。「言わなくてもわかる」ではなく、「伝えてこそ育つ」という姿勢が大切。

● パワハラを恐れて沈黙しない

「注意したら問題になるのでは」とためらう上司は少なくない。しかし、適切な形で伝えればフィードバックは支援になる。伝えないことは、部下の成長機会を奪うことでもある。

● フィードバックには「三つの型」がある

効果的なフィードバックは、(1)事実、(2)影響、(3)次への提案、の三要素で構成される。この型を意識するだけで、感情的な指摘は建設的な対話へと変わる。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2026年5月15日時点の内容となります。
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