さまざまな暗号資産の中でも、もっとも市場規模が大きいビットコイン。2009年に発行がスタートし、今では知名度の高い投資商品となっています。マネックス証券の暗号資産アナリスト・松嶋真倫(まさみち)さんに、ビットコインの歴史と背景について、お話を伺いました。
松嶋 真倫 (まつしま まさみち)
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ 暗号資産アナリスト
大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。
ビットコインの概要
ビットコインは「サトシ・ナカモト」を名乗る人物が発表した論文に基づいて発行された暗号資産で、一般的な通貨と異なり中央銀行など単一の管理者による発行・管理に基づかないという特徴があります。この「サトシ・ナカモト」は日本人の名前のように見えますが、どんな人物なのか、あるいは一人の人間ではなく集団なのか?――諸説あるものの、実はよくわかっていません。
最初にビットコインについた価格は、およそ0.07円。それからわずか15年ほどの間に約1,500万円までのすさまじい値上がりを見せました(2024年11月現在)。日本では2017年4月、改正資金決済法が施行され、ここで初めてビットコインなど暗号資産は「財産的価値を持つ」ことが定義されました。
すさまじい値上がりを見せていることで注目されるビットコインですが、そのボラティリティ(価格変動)の大きさを警戒する声があるのも事実です。(下図参照)
利用者が増えたり、2013年のキプロス危機のように法定通貨への信頼が揺らいで、投資資産として買われることなどで大きく値上がりします。一方、各国で規制がかけられたり、取引所がハッキングされて暗号資産が流出する事件が起きたりすると、信用が揺らいで価格が下がります。ビットコイン特有の「半減期」(4年ごとに新規発行量が半分になる日)というイベントにも値動きが左右されてきました。
また、株式などと同様、リスクオフ(リスクの高い投資商品から、よりリスクの低い安全資産に資金を移す動きのこと)の局面では売られる傾向があります。
「デジタルゴールド」と言われる理由
ビットコインは約2,100万BTC(ビットコイン単位)が供給の上限と定められています。米ドルであれ日本円であれ、中央政府が発行する通貨は、金融緩和の局面では供給量が増えます。そうすると、通貨の価値が下がり、供給量が限られている資産(たとえばゴールドなど)の価格が相対的に上昇します。供給の上限が定められているビットコインが「デジタルゴールド」と言われるゆえんです。
近年はコロナ禍で世界各国が大幅な金融緩和を行いました。それを受けてインフレが起きたわけですが、ここでインフレヘッジの目的で、ゴールドなどとともに、ビットコインが注目されています。米国ではファミリーオフィスなどの小規模な機関投資家がビットコインへの投資を始めています。
機関投資家も注目するようになった
すでに0.07円から24年11月には1,500万円まで値上がりしたビットコイン。「今後の値動きが気になる」と思う方もいると思います。大手機関投資家や国家が本格的にビットコインを保有するとなれば、これまでとは比べものにならない需要が生まれます。
したがって、今後さらに20万ドル(1ドル150円換算で3,000万円)、30万ドル(同4,500万円)と価格が上昇すると予想する向きもあります。
ただし、先に述べたように、ビットコインは非常にボラティリティが高い金融資産です。過去は、半減期の翌年に大きく値上がりし、さらにその次の年(半減期の2年後)に7〜8割も値下がりするというパターンを形成してきました。そして、4回目の半減期は2024年です。過去の例にのっとれば、2025年は価格上昇が期待できるものの、その翌年は暴落を警戒すべき、ということになります。
また、まだまだ新しい金融資産であるがゆえに、法整備が追いついておらず不完全な部分が残されている、というのもリスクでしょう。もし、ビットコインを起点とする巨大なショックが起きた場合は、株式市場も巻き込んだ暴落になるとも言われています。
世界の金融市場はリーマンショックのような巨大な事件が起きた後、それを教訓に規制が整備され、より安全になる、ということを繰り返してきました。未知のリスクをどこまで気にするかは難しい問題ですが、こうした懸念の声があることは知っておきましょう。
どのような金融資産も同じですが、その資産の特性をしっかり理解したうえで、無理のない投資計画を立てることが大事だと考えています。
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