DX時代、ペーパーレス化から始める意識改革

経済誌やニュースで、はたまた首相の国会演説でも「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉が飛び交っています。すっかり市民権を得た印象ですが、推進できていると胸を張れる企業はどれだけあるでしょうか。二代目社長にとっては、引き継いだ時にはDXがまだ叫ばれていなかったかもしれません。
「必要らしいけどよく分からない」「手が回らない…」という方もいらっしゃるでしょう。今回は、DXを目指す前提となる、ペーパーレス化の始め方をご紹介します。

費用対効果が見えにくく、中小企業で進まないDX

日本の多くの企業では、DXに十分に取り組めているとは言えません。総務省の委託で実施された調査(※1)によると、企業全体の77.1%、中小企業に限定すれば86.2%がDXについて「実施していない」と答えています。
同じ調査によると、ネックの1つは費用対効果です。取り組みへの課題で最多だったのは「人材不足」(大企業54.3%、中小企業51.9%)でしたが、次は「費用対効果が不明」。その割合は大企業の35.1%、中小企業の30.3%に上ります。

効果の見えやすいペーパーレス化が全ての入口に

DXは効果が分かりやすいものから着手したいところですが、まず押さえておきたい基本は、ペーパーレス化=DXではなく、あくまでDXへの手段であるデジタル化の1つという点です。ペーパーレス化という手段により、顧客やビジネスモデル、組織にどう新しい価値をもたらすかが肝要です。そして、書類などの情報が電子(デジタル)化されて初めてデータを管理・活用できます。大量の紙に追われていてはデジタルツール導入による業務効率化も、テレワークなどの働き方改革も、用を成しません。

紙の書類を扱っていると、捺印、印刷、ホチキス留め、郵送、保管など多くの手間とコストがかかります。紙は身近でよく触れるだけに、削減の効果が見えやすいもの。従業員が変化を実感できれば、意識改革にもつながります。

総務省の別の調査(※2)によると、ICT化に関連する業務慣行の改善のうち、「3年以上前から実施されているもの」は、「社内業務のペーパーレス化」が最多でした。着手しやすい改革こそ、トップが主導し全社的に盛り上げたいものです。

脱はんこ、FAXレス…。行政でも加速するペーパーレス化

膨大な公文書を扱い、手続きや申請は紙を基本としてきた行政でも、DXは加速しています。これまでもe-Taxやマイナンバーカードなどで電子化は進んできましたが、デジタル大臣の河野太郎氏が「はんこ」「FAX」レスを打ち出すなど、行政のDXへの関心が高まる一方です。東京都は、都政のDX推進につなげるために「ペーパー」「はんこ」「FAX」といった「5つのレス」を提唱しています(※3)

実際に、一定の効果をもたらしている自治体もあります。愛媛県西予市では、情報の電子化や議会資料のペーパーレス化など、複数の効率化策を実施したことで、年間で1,600万円相当のコスト削減効果があったとしています(※4)

多岐にわたる紙の書類。ペーパーレス化を始める対象は?

はんこやFAX、配布資料などのペーパーレス化がDXになると考えれば、やや身近に感じられるのではないでしょうか。ただ、業務に使う紙の書類は多岐にわたるので、網羅する必要はありません。着手しやすい分野を検討するための一例をご紹介します。

  • 会議資料をメールやクラウド、Web会議ツールで共有する
  • 営業先で見せる資料をタブレット端末で表示する
  • 受発注のFAXを、PDF化できる「ペーパーレスFAX」で送受信する
  • 契約書のやり取りを電子署名ツールで完結させる
  • 請求書や見積書をPDF化してメールで確認する
  • 稟議書や申請書など社内文書は、ワークフローシステムを使う

紙で保存すべき文書も。法改正でいっそう進むペーパーレス化

一方、ペーパーレス化になじまない文書もあります。緊急時のマニュアル、各種許可証、機器の手引書などは、扱いに注意が必要です。

電子帳簿保存法の改正や、仕入税額控除の適用を受けるための「インボイス制度」の開始といった変化もあり、ペーパーレス化への対応はいっそう求められます。これらの制度変更に対応した「りそな支払いワンストップ」など各種サービスもありますので、まずは一歩を踏み出してみませんか。     

以下の記事もぜひ参考になさってください。
『改正電子帳簿保存法について』
『インボイス制度について』
『「りそな支払ワンストップ」について』

(※1)総務省 「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負報告」(2021年3月発表) P.41、P.119
(※2)総務省 「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」(2020年) P.33
(※3)東京都「都政の構造改革QOSアップグレード戦略」(2021年3月発表)
(※4)総務省ICT地域活性化ポータル 「ICTを活用したペーパーレス化から働き方改革への取組み」

法人決済ツールについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年3月13日時点の内容となります。
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