中小企業でもRPAの導入を進めるべき理由

2023年10月に導入されたインボイス(適格請求書)制度。新たな負担になるなどとして議論を呼びましたが、発行側はデータ保存をする義務があるため、電子化と業務効率化を進める好機だったとも言えます。こうした請求書の発行自動化などを進めるツールとして中小企業でも注目されているのが「RPA」です。今回は、RPAで代行できる定型業務や、導入のメリットを紹介します。

人間が指示した定型業務を得意とするRPA

RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、パソコン上で人間が行っていた定型業務をソフトウェアロボットが代行する自動化ツールのことです。

総務省はRPA導入によって可能になる業務として、帳簿入力や伝票作成、ダイレクトメールの発送業務、経費チェック、顧客データの管理、各種システムへのデータ入力などを挙げています(※1)人間がルール化してパソコン内で完結するような業務を繰り返すことを得意としています。

複雑な分析が求められる高度な業務は不向き

一方で、人間の判断が必要となったりデータ同士を組み合わせるなど、複雑な分析が求められる業務には向いていません。広く使われている一般的なRPAはバックオフィスにおける定型業務を自動化するようなレベルのものです。RPAと似ているものにAIがありますが、自己学習のできるAIをRPAに組み込むことで、意思決定まで自動でできる高度なRPAも開発されています。

RPAの導入は業務効率化やコスト削減、人的ミスの減少につながります。また業務時間外であっても24時間365日稼働するため、生産性は大きく向上します。

中小企業こそ感じられる多くのメリット

ICT市場調査コンサルティングのMM総研による「RPA国内利用動向調査 2022」(2022年9月時点、※2)によると、年商50億円以上のRPA導入率は45%で、約5年前の2016年度末の3%から大きく伸びています。一方で、年商50億円未満の企業は2022年9月時点で12%にとどまっています。

ただ、各社で人手不足感が強まり、業務や事業の変革が叫ばれる中で、中小企業こそRPA導入が求められる場面が増えそうです。MM総研も前述した調査のレポートで「RPAの活用有無が将来的な企業の生産性に大きな差となって現れるであろう」との見通しを示していますが、中小企業にもたらされるメリットは多くあります。

まずは、人材不足への対応です。これは業界や企業の規模を問わない問題ですが、全体の従業員数が少ないほど影響は深刻になります。IT関係の専門人材がいない中小企業も少なくないことから、自動化ツールは強力なサポート役になり得ます。

また、限られた人材で幅広い仕事をこなす中小企業では、長時間労働が常態化したり、業務が非効率なまま属人化したりしているケースもあるでしょう。負荷の大きい勤務環境は離職の引き金になりかねず、労働時間の削減は喫緊の課題と言えます。これまで特定の従業員が担っていた定型業務を自動化することで、新規事業やコア業務などに人材を効果的に充てることができるかもしれません。

自動化ツールは「難しそう」というイメージを持たれがちですが、近年ではRPAの多様化が進み、例えばクラウド型やPCにインストールするデスクトップ型など、費用を比較的抑えられるツールもリリースされています。直感的に操作でき、ITの専門知識がなくても扱いやすいRPAもあります。

「スモールスタート」で業務効率化の一歩を

導入の検討や準備にあたっては、いくつかのコツを意識したいところです。

まずは部署単位などでの業務フローを可視化し、自動化する業務を洗い出します。RPAには得意不得意があるため、何ができるかをしっかり見極める必要があります。その上で、人件費などの削減効果と導入効果をてんびんにかけましょう。
心掛けたいのは、初めから全社的な導入にこだわらないことです。RPAは導入して終わりではなく、実際の運用やメンテナンスも踏まえて検討する必要があります。小規模な業務から適用範囲を広げる「スモールスタート」で最初の一歩を踏み出してみませんか?

(※1)総務省のメールマガジン「M-ICTナウ」
※2)MM総研のプレスリリース「RPA活用有無がビジネスプロセス自動化に格差を生む」 (2022年10月03日)

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年2月9日時点の内容となります。
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