近年、中堅・中小企業が手軽にDX化を進めるツールとして、プログラミングの知識がなくてもアプリやシステムを構築できる「ノーコードツール」の注目度が上がっています。ノーコードの特徴や、メリット・デメリットについて、中小企業診断士・ITコーディネータの大澤真介さんにお話を伺いました。

大澤 真介(おおざわ しんすけ)
合同会社オンザウェイ 代表社員 おおざわ中小企業診断士事務所 代表
中小企業診断士・ITコーディネータ
リユース業界で約20年の実務経験(店舗運営・マネジメント・経営企画室長・経理)を経て、2018年に独立。現在は中小企業診断士・ITコーディネータとして、経営とITの両面から中小企業のDX推進を支援している。
「ノーコードツール」とは何か?
「ノーコードツール」とは、一言で言えばプログラミングのコード(言語)を一切、もしくはほとんど書かずにアプリを作るツールのことです。従来のシステム開発のように複雑なコードを記述する代わりに、視覚的な操作(クリックやドラッグ&ドロップ)、簡単な日本語入力だけで、直感的にアプリを作成できます。
Excelをある程度使いこなせるほどのリテラシーがあれば十分に対応できるでしょう。ここ3~4年でノーコードツールのテレビCMなどの影響もあり、認知度が急上昇しました。
一方、中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れは課題といわれています。下図にあるように、現場業務のデジタル化を進めている企業は多いのですが、デジタル技術を活用することでビジネスモデルの変革を目指すDXに至っている企業はまだまだ少ないのです。
業務効率化のためにもDXは必須なのですが、それを進めるための資金や人材が不足しているのです。特に昨今は人手不足ですから、すぐに収益に結びつかないDXに人材を割り振る余裕がないと悩んでいる会社も多いのではないでしょうか。リソース不足でDXの第一歩を踏み出せずにいる中小企業にとって、ノーコードは非常に強力な武器となります。

ノーコードツールのさまざまなメリット
中小企業がノーコードツールを活用する最大のメリットは、「現場の従業員が自らアプリを作れること」です。外部のベンダーや社内の情報システム部門に依頼すると、現場の細かなニーズとのズレが生じがちですが、実務を最も理解している従業員が自分たちで開発することで、業務改善に直結するアプリが生まれます。
コスト面については、圧倒的な低コストとスピードが強みです。ノーコードツールの多くは月額数千円から数万円程度で利用できますから、システム会社に大金を投じて外注するのと比べてコストは格段に抑えられます。
コストが低いので、失敗も恐れることはありません。DXを進める際、必ずといっていいほど失敗は起きますし、試行錯誤をすることでより良いシステムが構築されていくものです。しかし、いきなり大金を投じて失敗することは、経営者にとって非常に恐ろしいことです。その点、ノーコードであれば試しに作ってみて、ダメなら作り直すという柔軟な対応が可能なのです。
さらに見逃せないのが、現場の意識改革につながる点です。現場が主体となって「ここをこう変えれば自分たちの業務が効率化できる」と考えながらアプリを作っていくわけですから、組織全体に前向きな改善意識が芽生えます。
ただし注意点もある
コストが低い上に操作も簡単と、万能に思えるノーコードツールですが、導入にあたっては注意すべきポイントがあります。
まずはデータの下準備についてです。ノーコードツールを使って開発をスタートする前に、基となるデータが整理されている必要があります。バラバラな紙の資料や、「TEL」や「電話番号」が混在するなど、表記のルールが統一されていないデータしかない状態では、アプリ作りを始めることはできません。
次に知っておくべきなのは機能の限界です。ノーコードツールで構築できるアプリは、特殊な計算や複雑すぎる処理、あるいは膨大なデータをリアルタイムで高性能に処理することには向きません。「現場の小さな困りごと」を解決できるポテンシャルは持っていますが、全社システムの構築といった複雑なことには必ずしも向いていないのです。
各現場で、小さな効率化を進めることは非常に有意義なことです。例えば、ある建設事業者では、現場作業を終えたあと、一度本社に戻って日報を作成する必要がありましたが、タブレットで日報を作成できるアプリを作ったことで、現場で日報を作成して帰宅できるようになり、現場監督の負担が大きく軽減されました。
こうしたメリットは素晴らしいのですが、各現場がバラバラにアプリを作っていくと、いずれは全社最適化をどう目指すかという壁に突き当たると思います。本格的に全社でDXを進めていきたいとなれば、やはり外部業者に依頼し、相応のコストを支払う必要があります。ただ、その場合でも、現場ごとにノーコードアプリで業務改善を進めておけば、何が課題なのかも見えているでしょうし、本格的なDXがスムーズに進むはずです。
このように、ノーコードツールは「何でもできる魔法の杖」ではありません。しかし、小さな業務改善を積み重ねるための道具としては非常に優秀なのです。
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