3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2023年秋に発行された、首都圏向けの内容となります。
【Market REVIEW】日銀は「異次元」から「普通の」金融緩和へ
- 日銀は10月末の会合で、長短金利操作(YCC)を再修正し長期金利の1%超えを容認する姿勢を示しました。また、展望レポートでは、消費者物価(生鮮食品除く)が22年度から3年連続で物価目標の2%を上回る見通しに上方修正しました。市場では早期正常化観測が強まり、翌日物金利スワップ(OIS)市場では、来年1月会合でのマイナス金利解除を織り込んでいます。ただ、YCCの再修正は、主に米国金利が上昇したことを受けての受動的な対応です。
- 物価見通しについても、植田総裁は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動き(『第一の力』)が想定以上に上振れたことを反映したもので、2%物価目標の達成に必要な賃金・物価上昇の好循環(『第二の力』)については、まだ距離があるとの認識を示されています。この賃金・物価上昇の好循環(『第二の力』)は、今年9月辺りから植田総裁を中心に使われ始めた言葉です。文字通り解釈すると、来春の賃上げ率が高めとなっただけでは不十分で、更にそれが物価上昇、賃金上昇へと回り出す状態となり、かなり高いハードルとなります。そのような言葉をあえて使い始めた背景には、正常化に対する日銀の慎重姿勢があるように思われます。
- 他方、植田体制下で、非伝統的な政策を通常の政策に戻すことがミッションとなっている可能性はあります。既に、YCCは形骸化されており、今後、政策金利も現在の当座預金マイナス0.1%からゼロ%に変更されることはあり得るシナリオです。
ただ、それは、「マイナス金利」という非伝統的な政策からの脱却が目的であり、利上げサイクルの始まりとは異なります。
この先控えている日銀の正常化は、「異次元緩和」から「普通の緩和」への転換、となる可能性が高いと考えられます。
(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)
経済成長率は1%程度、インフレ率は低下の見通し
- ESPフォーキャスト10月調査では、2023年4~6月の実質経済成長率(前期比年率)は+4.8%となり、7~9月は▲0.48%とマイナスになるものの、10~12月期からはプラスに転じ、2024年4~6月以降は1%を上回って推移するとしています。
- 2023年7~9月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同期比は2.95%となり、4か月連続で低下するとしています。以降、23年度は2.79%、24年度は1.93%になる見込みであり、2024年7~9月期まで2%台が続くとしています。金融政策の転換に際し、賃金動向とあわせてインフレ動向にも関心が高まります。
引き続き小売り販売額は堅調に推移
- 経済産業省の商業動態調査によると、2022年3月以降小売販売額は前年同月を上回って推移しています。特に好調な百貨店のほかにもコンビニやドラックストアも堅調に推移しており、直近8月では対前年同月比でコンビニ106.3、ドラックストアが107.6となっています。
- 日本百貨店協会によると、2023年9月の百貨店全体の売上高は対前年同月比+9.2%となっており、19か月連続で前年を上回って推移しています。引き続き、円安効果等を背景として好調なインバウンド消費が全体を底上げしています。
新築・中古マンション価格は高水準を維持
- 不動産経済研究所によると、首都圏の新築分譲マンション価格は、2023年上期(1~6月)では8,873万円と上期としては2年連続の上昇となり、過去最高価格も大幅に上回っています。特に東京23区では前年同期比+60.2%の12,962万円と大きく上昇しており、首都圏全体の初月契約率も72.7%と上期としては3年連続で70%台となりました。また、2023年9月の価格は6,727万円と7か月連続で上昇しています。
- 東京カンテイによると、首都圏全体の2023年9月の70㎡当たり中古マンション平均価格は前月から横ばいの4,777万円となりました。また、東京23区でも前月比+1.0%と横ばい傾向が継続していますが、都心6区に限ると前年同月比+7.5%の10,604万円と上昇傾向が続いています。
出社回帰の動きもあるがオフィス空室率は上昇傾向
- 三幸エステートによると、東京都区部の2023年9月の平均空室率は5.27%(前月比+0.04ポイント)とわずかに上昇しています。大規模ビル(基準階面積200以上)の空室率は2月以降上昇傾向にあり、足元9月では5.34%(前年同月比+0.57ポイント)となっています。平均募集賃料は18,981円/坪(前月比+29円/坪)と2か月連続で上昇しています。
- 東京都のテレワーク実施率調査によると、2023年9月の都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は45.2%と2023年5月以降45%程度を横ばいで推移しています。出社回帰に加えて、人材獲得を目的とした増床などのオフィス需要も考えられます。
【Market TOPICS】2023年都道府県地価調査(東京圏・全国)
- 2023年の都道府県地価調査(7/1時点)によると、東京圏の上昇率は住宅地+2.6%、商業地+4.3%で、前年より上昇幅は拡大しました。
- 全国の住宅地と商業地ともに上昇率の上位には、半導体メーカーが進出している北海道千歳市と熊本県がはいっています。その他にも昨年から引き続き北海道恵庭市と北広島市が、沖縄県恩納村は観光客数の回復や移住需要を受けて高い上昇率となっています。
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