離職率を下げるための有効な方法は?

帝国データバンクの調査(※1)によると、「人手不足倒産」の件数は2015年以降右肩上がりで増えていましたが、新型コロナウィルスの影響もあり、2020、2021年度は2017年度並みに減少。しかし今後の景気回復の状況によっては、再び増える可能性もあります。人手不足倒産を防ぐには、新規採用に力を入れることはもちろんですが、何よりもまずは現在の従業員の早期離職を防ぎ、長く活躍してもらえる環境を整えることが重要です。では、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?

従業員はなぜ離職するのか

そもそも、離職者はどんな理由で会社を辞めているのでしょうか?中小企業庁の中小企業白書「平成28年度(2016年度)の中小企業の動向/前職の従業員規模別前職の離職理由の割合」(※2)を見ると、企業規模によって傾向の違いが見えてきます。
従業員数300人以上の企業では、最も多い理由は「定年・契約期間の満了」で42.5%と突出。100~299人の企業でも最多の理由は同じですが、300人以上の企業と比べると割合は19.4%と大きく差が開いています。また、100〜299人の企業で2番目に多い理由は「労働条件が悪い」となっています。他の従業員規模の企業では、1~29人の企業では「収入が少ない」、30~39人の企業では「労働条件が悪い」が最多となっています。

前職の従業員規模別前職の退職理由の割合

その他、「会社の将来が不安」「会社の都合」「職場の人間関係」といった理由が全体的に上位に並んでいますが、「収入が少ない」「労働条件が悪い」も含め、299人以下の企業では300人以上の企業群よりも、これらの理由の割合が高くなっています。そうした不満や不安が、中小規模の企業における従業員の早期離職につながっていることがよくわかります。

もう少し細かく見ていくと、「収入が少ない」「会社の将来が不安」「会社の都合」では程度の差こそあれ、企業規模が小さいほど割合が高くなっていますが、「労働条件が悪い」については、299人以下の企業群ではあまり違いがありません。「職場の人間関係」も企業規模の小さい方が割合が高いのですが、99人以下の企業群ではほぼ横並びとなっています。職場の人間関係については部署の異動や転勤も影響すると思われますので、99人以下の企業群ではそれらの頻度や規模に大きな違いがないということかもしれません。
また、「仕事の内容が不満」、「能力・個性・資格を生かせない」「結婚・出産・育児・介護・看護」については、企業規模による大きな違いは見られません。

会社への不満や不安を解消するには?

従業員が長く働き続けてくれる会社にするには、早期離職に結びつく上記のような従業員の不満や不安を解消していくことが重要です。

給与については、簡単に上げられるものではないかもしれません。しかし人事評価制度を整備し、人事評価制度と給与を連動させるなど昇給の基準を「見える化」して、「頑張れば収入が上がる」という意識が浸透すれば従業員のモチベーションアップにつながります。また退職金制度の整備など、福利厚生の充実を図ることを検討するのもよいでしょう。

労働条件の改善については、長時間労働の是正、有給休暇取得の推進など、政府が進める「働き方改革」の内容に沿って現状を見直しましょう。人手不足で現状の改善が難しいようであれば、システム導入等による業務の効率化やアウトソーシングなど、従業員の負担を軽減する手立てを広く検討すべきでしょう。

会社の将来への不安を払拭するには、中長期の経営ビジョンを策定し、社長から発信するようにしましょう。経営陣やマネージャー層も内容を十分に理解し、日常業務の中で従業員に都度伝えていくとともに、計画の進捗や新たな課題なども共有してより深い浸透を図ります。そうすることで会社の将来がイメージできるようになり、従業員の不安も軽減していくことが期待できます。

少子高齢化時代を勝ち抜く

従業員は直接、会社に対する不満や不安を口にすることはないかもしれません。しかし、普段の会話や業務でのやりとりから気づくことがあるはずです。できることから少しずつ改善してみませんか?

日本では今後も少子高齢化が進むことで、ますます人材獲得競争が厳しくなっていきます。そうした中にあって、従業員が働きやすく、働きがいの感じられる会社を作ることこそ、離職率を下げ、ひいては会社の成長発展につながる有効な対策となるでしょう。

※1 帝国データバンク「全国企業倒産集計 2021 年度報」
※2 中小企業庁の中小企業白書「平成28年度(2016年度)の中小企業の動向/前職の従業員規模別前職の離職理由の割合」

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年8月19日時点の内容となります。
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