中小企業退職金共済、活用できていますか?

少子高齢化に伴い人手不足が悪化しているといわれます。中小企業にとって人材確保は大きな課題。同業他社と比べて少しでもアドバンテージを得るために、福利厚生の取捨選択や拡充を考えている企業も多いことでしょう。

福利厚生のひとつである退職金制度は中小企業のうち7割程度の企業が取り入れており、特に中小企業退職金共済(中退共)は360万人以上の加入者数を抱える制度です。

中退共にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、近年において拡大している企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)との違いなどを見ていきましょう。

中小企業退職金共済(中退共)とは

中小企業退職金共済(中退共)は1959年に中小企業退職金共済法に基づいて設けられた、中小企業者の相互共済と国の援助からなる退職金制度です。加入には業種ごとの条件があり、一般業種では従業員数300人以下または資本金・出資金が3億円以下などと設定されています。約38万の企業が加入しており、加入者数は約360万人となっています。(※1)

中退共は新規加入時や増額時に国からの助成があることが大きな特色で、国からの助成に加え、一部地方自治体でも補助を実施しています。
具体的には5つの大きなメリットがあります。

  • 退職金は「基本退職金(法令で定められている金額で制度全体として利回り1%)」と「付加退職金(運用収入や財務状況に応じて定められる)」が支給される
  • 掛金は損金扱い
  • 手続きが簡単
  • 手数料がかからない
  • 通算制度がある
    • 転職した際の持ち運び(ポータビリティ)制度(中退共⇔中退共、特定業種退職金共済、特定退職金共済)
    • 過去勤務期間の通算制度(中退共制度加入前の勤務期間分を納付することができる)

ただし、以下の点には留意が必要です。

  • 掛金納付月数が12か月未満の場合、退職金は支給されず、掛金は会社に戻らない
  • 掛金納付月数が12か月以上23か月以下の場合は支給額が掛金相当額を下回る
  • 「中小企業」の範囲(常用する従業員または資本金・出資金額)を超えると、制度を続けられない
  • 懲戒解雇の場合、厚生労働大臣の認定を受けたうえで、退職金額を減額することは可能だが、減額分は事業主に戻ってこない

企業型DCの特色

中小企業が検討する年金制度の選択肢として、中退共の他に企業型DCがあります。企業型DCの歴史は新しく、2001年に始まった制度です。当時の確定給付型企業年金が抱えていた問題点を解決するため、アメリカの税法401k条項を活かして普及した企業年金制度を参考にして作られました。当時「日本版401k」と呼ばれていたことを記憶している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それまでの問題点を解決するためにできた制度のため、下記のような特長が挙げられます。

  • 従業員自身が年金資産の運用を行える
  • 早期退職の場合でも返還の設定が可能
  • 成果に応じた掛金設計ができる
  • 会社間の持ち運びができる
  • 会社が拠出する掛金に加え、加入者本人が掛金を上乗せして拠出するマッチング拠出が可能

今の時代、退職給付制度において考慮すべきことは?

中退共と比べると企業型DCは新しい制度のため、労働市場や働き方の多様化に合った制度とも言えます。両者を比較してみると、中退共の方は終身雇用や長期雇用といった旧来型の働き方に適しており、企業型DCは人材が企業を行き来する現代に即しているようなイメージです。

たとえば、大手企業からも中途採用者を募集したいという場合は企業型DCがよいでしょう。また、今所属している従業員が企業型DCを導入していない企業に転職をする場合は、個人型DCに持ち運びが可能です。

他に考えられる企業側のメリットとしては、企業型DCは制度設計の仕方によっては加入者が給与の一部分を掛金にするか、給与にするかを選択できるため、企業は社会保険料の負担を軽減できる他、企業規模の拡大などの変化にも対応が可能である点が挙げられます。

企業型DCの導入企業は4万社弱で(※2)中退共の10分の1ほどですが、加入者数でみると2021年3月時点では約750万人と中退共の2倍以上であり、加入者数は右肩上がりで増えています。自分の会社に合った企業年金を設計し、他社と差別化を図る制度として導入することができるのではないでしょうか。

福利厚生の充実は従業員にとって大きなメリットとなり、人材採用のアドバンテージにもなり得ます。しかし、昨今、年金制度としてのトレンドとして旧来の適格退職年金・厚生年金基金から確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(企業型DC)への移行が見られるため、あなたの会社の年金制度も時代に合ったものなのか、見直しをしてみてはいかがでしょうか。

企業型DCの新規導入をご検討の場合には、りそな銀行にご相談ください。

※1 独立行政法人 勤労者退職金共済機構「中小企業退職金共済 事業概況(令和4年5月現在)」
※2 厚生労働省「企業型年金の規約数等の推移(規約数、事業主数、企業型年金加入者数)」

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年9月2日時点の内容となります。
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