導入したままになっていませんか?企業年金制度の見直しタイミング

企業年金制度といえば、かつては厚生年金基金や退職年金が主流でしたが、現在は確定給付型企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(DC)がメインです。どちらも導入時には詳細な制度設計を作りスタートしますが、導入後に運用が適切に行われているか、きちんと確認できているでしょうか。導入して以降、特に何もしていない企業もあるかもしれません。しかし、今の時代は従業員が働きやすい環境を作り、定着率を上げるためのリテンション施策や福利厚生を充実させることが必要です。

転職者の増加や成果主義への転換など雇用形態の変化に伴い、既存の企業年金制度が従業員の働き方に必ずしもマッチしていない可能性は十分にあります。また、運用する商品構成に不満を持つ従業員も少なからずいるでしょう。

これらの課題を解決するために、年金制度を見直し改善を図っていく必要があります。見直すタイミングやポイントを挙げてみましょう。

従業員の働き方の変化により、財務上の課題が発生

例えば退職一時金制度からDBやDCを導入し、経営者が「会社の年金制度はこれで安泰」と考えるのは早計です。従業員の働き方の変化や中途入社者が増えた場合、企業の財務上の課題に応じて新たな制度を導入したり、複数の制度を組み合わせたりする工夫を実践している企業があります。実例を見てみましょう。

退職一時金の一部をDCに移行(卸売業)

A社は中途入社者が増え、勤続年数に応じた退職一時金制度では、新卒採用から長年勤めた従業員との処遇格差を解消できない問題がありました。そこで退職一時金の一部をDCに移行。中途入社者が転職前に利用していたDCの資産を継続して積み立てられるメリットが生まれ、優秀な人材を確保しやすくなりました。

※本事例の詳細はこちらの資料p.6をご覧ください。

DBからDCへの全面移行(電気機械製造業)

B社はDBを採用していましたが、運用結果が悪いと積み立て不足から追加拠出が必要となり、決算にも悪影響を及ぼしていました。このため企業の財務に影響を与えにくいDCに移行。キャッシュフローが安定しました。また、企業の掛金に加え、従業員が上乗せして拠出するマッチング拠出も導入し、従業員の資産形成を後押しできました。

※本事例の詳細はこちらの資料p.7をご覧ください。

DCの商品構成に不満の声がある

DCは、企業が用意した商品のラインナップから加入者が運用方法を選択するものです。そのため、商品構成はDCを運営する運営管理機関任せとなり、手数料の高い商品や運用成績の芳しくない商品が並ぶことも。また、安全性を最優先した元本保証型が多くなり、似たような商品が重複するケースも見られます。

これまで、加入者に提供した商品を途中で除外するには複雑な手続きが必要でした。しかし2018年に確定拠出年金法が改正され、事業主による運営管理機関の定期的な評価を努力義務化。事業主は他の金融機関などで扱っている商品を検討し、場合によっては運営管理機関の変更も可能となりました。

特に特定の投資分野に偏った商品ばかりを提供する、信託報酬の高いアクティブ型ばかりを並べる金融機関は要注意です。

DCの運用は加入者の自己責任ですが、加入者にDCの特性を理解してもらい、長期的な運用をサポートするのは運営管理機関の役目です。もし加入者がDCを上手に活用できていない、積極的に運用できていない事例が目立つようなら、運営管理機関による提案の少なさや、投資教育に問題があるかもしれません。

運営機関、幹事会社の対応に問題がある

DBの幹事会社からの提案不足や営業担当の訪問頻度が低い、「運用に関する説明が不十分でどうなっているか分からない」「運用がうまくいっているか判断できない」など、運用状況の報告や財政決算説明時の対応に不満を感じる事例が散見されます。

このような場合は社内で検討し、幹事会社や運営管理機関を変更することも視野に入れましょう。DBの事務手数料(運営管理費用、資産管理費用)、従業員が支払うDCの手数料(信託報酬)が高すぎないかも要チェック。幹事会社を変更することで、年間の手数料を半額近くまで下げられたケースもあります。

これまでご紹介したように、企業年金制度は時代とともに移り変わっています。そのため、現行の企業年金制度では従業員は満足していないかもしれません。制度を見直すことで自社の財務上の課題などを解決できる可能性もあり、社会環境や経済環境の変化に応じた対応が欠かせないのです。それでも制度や商品への不満が解消されないようであれば、幹事会社や運営管理機関の変更も検討してはいかがでしょうか。

りそな銀行では、DCの診断書を「モニタリングレポート」にまとめて半年に1回ご案内し、制度をより活用してもらうためのご提案を定期的に実施しています。法改正に伴い、できるようになったこと、対応しなければいけないことなどもチェックシートを用いて分かりやすくご案内しています。年金運用で少しでも気になることがあれば、お早めにご相談ください。

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年9月2日時点の内容となります。
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