事業承継にDXが有効である理由

引き継ぐべきは“見えざるアセット”

「自ら興した会社を後継者に引き継ぎたい」「先祖代々受け継いできた家業を息子・娘に譲りたい」――。

いつの時代も中小企業の経営者を悩ませるのが、後継者に会社を引き継ぐ「事業承継」の問題です。中小企業庁の調査でも、中規模企業の経営者の6割以上が、「事業を何らかの形で他者に引き継ぎたい」と答えています。一方で、「事業の将来性が見通せない」「後継者が決まらない」といった理由で二の足を踏む企業も少なくありません。

「事業の視界は良好」「後継者も決まっている」という幸運なケースでも、事業承継が成功するとはかぎりません。事業承継と言えば、会社の株式や店舗・工場といった物理的なアセットを渡すことや、相続・贈与税などの税金に関する話と捉えられがちです。

しかし、もっとも重要なのは「後継者の教育」(下図参照)。経営者や古参の幹部が持つ“見えざるアセット”、つまり「知見とノウハウ」を後継者に引き継ぐことなのです。

事業承継の最大の課題は「後継者の教育」

創業者であれば、自分でイチから会社をつくったのだから、隅々まで分かっていて当然です。しかし、若い二代目、三代目ともなれば、最初から同じようにできるわけがない。たたき上げのサラリーマン社長に引き継ぐ場合でもリスクはあります。一定規模以上の会社になれば、「担当してきた分野以外は門外漢」ということもあるからです。そこでお勧めなのは、事業承継の前後でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進して、業務プロセスを明らかにし、データで会社の実態やビジネスの勘所を可視化することです。

確かに知見やノウハウといった情報資産は引き継ぎづらい側面があります。尋ねて教えてくれれば御の字で、聞いても教えてくれないことも。しかし、難しく考える必要はありません。例えば、名刺一つとっても、スキャナーで取り込めば、誰と会っているか分かる。そこにコメントを書けば備忘録になります。誰かに会ったらCRM(顧客管理システム)に記録してもらえば、誰とどういう話をしているかが分かります。案件の進め方やクロージングのタイミングもデータ化しておきます。

もちろん頭の中をすべてさらけ出すのは不可能ですが、外形的な情報から経営者や古参の幹部のやり方が見えるだけでも、事業承継のスピードが大きく違ってきます。引き継ぎによる停滞の期間を短くし、次なる飛躍を目指して、新たな戦略を立てることもできるのです。

後継者をDXプロジェクトのリーダーに指名する

DXは単なる紙の業務のデジタル化やITツールの導入ではありません。暗黙知を形式知に変換する過程で、既存の業務への理解が深まります。集まったデータを分析して、非効率な作業をあぶり出し、業務の効率化やプロセスを見直すことも可能です。データから新たな気づきが得られたことで、新規事業の創出や業態転換など大きな変革につながるケースもあります。

理想的なのは、事業承継を行う前からDXを推進しておくことです。次世代に引き継ぐタイミングで行ってもいいでしょう。DXプロジェクトのリーダーには、後継者を指名するのがお勧めです。その際、現経営者が「俺が責任を持つ」と社内に周知しておくこと。DXを進める過程で後継者が業務のプロセスを変えようとすると、「俺たちのやり方が正しい」と古参の幹部が抵抗勢力になることもあるからです。しかし、現経営者が“お墨付き”を与えておけば、右腕、左腕として仕えてきた幹部たちは素直に従います。

DXを進めるためには、関係部門や従業員の協力が不可欠ですが、さまざまな関係者とのコミュニケーションを通じて、後継者の人的つながりが強くなります。古参の幹部たちとの絆も深まるでしょう。

優れたDXの体制を整備できれば、後継者の大きな功績ということになり、社内の求心力も高まります。従業員が“新しい空気”を感じることで、「先進的な会社に勤めている」「家族や友人に自慢できる会社で働いている」という雰囲気も醸成されます。エンゲージメント(会社への愛着心)の向上にもつながるはずです。

働き手が不足するなか、中小企業にとって「採用」は重要課題の一つですが、採用市場に出てくる若手の多くは、物心ついた頃からインターネット環境に接してきたデジタルネイティブ世代です。DXを推進している会社の印象が悪いはずはありません。

後継者が不在でもDXをやるべき理由

今のところ後継者が不在で事業を承継するかどうか決まっていないという場合でも、DXで会社の業務や経営状況をデータで“見える化”しておく価値は十分にあります。最終的に後継者が見つからず、M&Aで会社を売却することになった場合、買う側にとっての最大の不安要因は“想定外のリスク”です。しかし、業務プロセスやビジネスの進め方、お客さまや従業員の傾向、資金繰りの状態といった、会社の実態や財務内容を可視化しておくことで、買い手のリスクは相対的に小さくなり、買収後の事業推進もスムーズに行えます。そのぶん、エンタープライズバリュー(企業価値)が上がるため、会社を高く売却できるというわけです。

「どこから手をつけていくべきか?」と考え込むより、まずは事業承継を考えている経営者自身が、DXについて学んで理解を深めておくことが大切です。りそなデジタルハブでは、DXを推進したい企業経営者のためのコンサルティングを提供しています。お気軽に相談ください。

事業承継及び法人決済ツールについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年4月21日時点の内容となります。
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