ガバナンス構築の道筋と要点とは

中堅・中小企業であっても、ガバナンス構築をすることの意義は非常に大きいものがあります。しかし、いきなり上場企業並みのガバナンスを目指す必要はありません。どこに焦点を当て、どのような手順で進めていくのが良いのか、りそな総合研究所コンサルティング部 チーフコンサルタント、藤井 綾さんにお話を伺いました。


藤井綾

藤井 綾 りそな総合研究所 コンサルティング部チーフコンサルタント
2009年、りそな総合研究所に入社。株式上場(IPO)支援、内部統制構築、原価計算制度、在庫管理体制の整備等、幅広いテーマで上場企業や中小企業に対するコンサルティング業務に従事。特に、企業のガバナンス体制の強化に向けた支援を行い、取締役会や監査役会の運営改善、リスク管理体制の構築などに取り組む。また、M&A案件にも関与し、フィナンシャルアドバイザリー業務や買収後のPMI(Post Merger Integration)に対応し、企業価値向上を目指した統合プロセスの支援を実施。

ガバナンス構築のロードマップ

ガバナンスの構築と聞くと、「膨大な作業と時間がかかるのではないか」と難しく捉えられがちですが、基本的な道筋(ロードマップ)は段階を踏んで進めることができます。全体像は大きく分けて「現状把握と規程整備(フェーズ1)」と「定着と運用(フェーズ2)」の2つのフェーズに集約されます。

ガバナンス構築の手順例

フェーズ1:現状把握と規程整備(目安:約半年)

最初に行うべきは、自社の現状分析と目指すべきゴールの設定です。上場企業と同等の100%完璧な体制を最初から目指す必要はありません。経営層やマネジメント層へのヒアリングを通じて自社の課題やニーズを把握し、「自社にとってどこまでの仕組みが必要か」を決定します。その上で、職務権限規程や各種の社内ルールの整備を行っていきます。ここで大切なのは、最初から時間をかけすぎて議論をブレさせないことであり、おおむね半年程度を目安にスピーディーに枠組みを整えることが推奨されます。

フェーズ2:運用と定着(目安:半年〜1年程度)

ルールや規程を作った後、社内周知を行い、実際に運用を開始するフェーズです。定着を図るためには、ルールが守られているかをチェックするモニタリングやサンプリング調査(内部監査)が不可欠となります。中堅・中小企業では専任の内部監査部門を置くことが難しいケースが多いため、まずは自己監査(セルフアセスメント)や他部門同士でチェックし合う「クロスチェック」などの工夫を取り入れながら、組織全体にルールを浸透させていきます。

このように、約1年から1年半ほどの期間をかけて「仕組み作り」から「自走できる運用の定着」へと段階的にステップを進めていくのが標準的なロードマップです。

自前で構築する際のコツ

ガバナンス構築は専門的で細かいプロセスが多岐にわたるため、外部のコンサルタントを入れて取り組む企業は少なくありませんが、自前でガバナンスを構築しようとする場合、挫折せずに成功させるためにはいくつかのアプローチ上のコツがあります。

最大のコツは、「最初から多くを求めすぎない(100点を目指さない)」ことです。理想的な完成形を一気に作り上げようとすると、作業の負担から現場が疲弊し、社内から強い反発が生まれてしまいがちです。「今年はここまでルール化する」「来年はこの部門のチェック体制を整える」といったように、年単位で進めていき、スモールステップで中長期的な計画を描くようにすると、現実的で無理のない推進ができるでしょう。

具体的な第一歩としておすすめなのは、「社内ルールの明文化」と「従業員の意識調査」です。まずは現状の社内ルールがどれだけ明文化されているかを整理し、不足している部分を整えます。あわせて従業員への意識調査を実施すると、「実は現場でここが困っている」「この手続きの基準があいまいだ」といった自社の課題が浮き彫りになり、経営陣が具体的に着手すべき優先順位が見えてきます。

さらに、自前で運用する際は「相互チェック(クロスチェック)」の仕組みを取り入れると効果的です。専任の監査担当者を設けなくても、例えば総務部門が営業部門の手続きをチェックし、営業部門が管理部門のフローを確認するといった相互確認を行うことで、自部門だけでは気づけなかった業務の非効率やリスクを発見できるようになります。

外部の専門家を頼るメリットとは

このような形で自前での構築も可能ではあるものの、IPOやM&Aといった明確な期限が迫っている場合や、社内だけでは運用の定着がうまくいかない場合は、コンサルタントや弁護士、公認会計士といった外部の専門家を活用することに大きなメリットがあります。

外部専門家を頼る最大のメリットは、「客観的な第三者としての推進力と説得力」です。社内の人間だけで新しいルールやチェック体制を導入しようとすると、現場からは「面倒な仕事を増やされた」と受け取られ、不満がたまってしまうケースも少なくありません。そうなると、内部の推進者が嫌われ役になってしまい、現場との関係が悪化してプロジェクトが頓挫することもあります。そこに外部の専門家が介入することで、第三者としての公平な視点からガバナンスの必要性を説き、現場の納得感を得ながらスムーズに手続きを進めることが可能になります。

支援内容についても柔軟に選択できます。りそな総合研究所では、最初から最後まで関与するフルサービスのご依頼以外にも、「フェーズ1の現状把握と規程整備の立ち上げ部分だけを手伝ってほしい」、といったスポットでのご依頼も受け付けています。さらに、「自社で取り組んでみたものの、暗礁に乗り上げてしまった」、という企業の支援は我々の得意とするところでもあります。我々が伴走している期間に「成功体験」を積んでいただき、最終的に自社だけでガバナンスを自走して回せる状態を目指していただけるよう、支援体制を整えています。

りそなBiz Actionではこれらの資料もご用意しております。ぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2026年9月25日時点の内容となります。
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